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TACは調整一巡、25年3月期黒字予想、既存事業の強化と個人教育事業の回復が鍵

発行済 2024-10-24 09:49
更新済 2024-10-24 10:05
© Reuters.  TACは調整一巡、25年3月期黒字予想、既存事業の強化と個人教育事業の回復が鍵

[日本インタビュ新聞社] -  TAC<4319>(東証スタンダード)は「資格の学校」運営を主力として、出版事業や人材事業も展開している。中期成長に向けて、主力の教育事業では事業環境変化に対応した新サービスの提供、出版事業では新規領域への展開、人材事業では医療事務関連の子会社を統合してサービス向上と業務効率性向上を推進している。25年3月期は黒字予想としている。重点施策として、既存事業の強化、個人教育事業の早期回復、株価純資産倍率(PBR)の改善などに取り組むとしている。積極的な事業展開で収益回復基調を期待したい。株価は8月の年初来安値に接近してやや軟調だが、1倍割れの低PBRもなど評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。なお11月6日に25年3月期第2四半期(中間期)決算発表を予定している。

■「資格の学校」を運営

 財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)、その他分野(情報・国際、医療・福祉など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営する個人教育事業、法人研修事業を主力として、出版事業や人材事業(会計系、医療系)も展開している。さらに成長戦略として新事業領域への展開も推進している。

 24年3月期セグメント別業績は、個人教育事業の売上高(現金ベース)が97億65百万円で営業利益が10億29百万円の損失、法人研修事業の売上高(現金ベース)が44億45百万円で営業利益が10億11百万円、出版事業(TAC出版、W出版)の売上高が42億46百万円で営業利益が8億47百万円、人材事業の売上高が5億10百万円で営業利益が63百万円だった。

■教育事業は事業環境変化に対応して新サービス提供を推進

 24年3月期の教育事業受講者数は個人受講者が23年3月期比1.4%減の11万1093人、法人受講者が5.7%増の8万8847人、合計が1.6%増の19万9940人だった。分野別売上高は財務・会計分野が14.0%減収、経営・税務分野が1.2%増収、金融・不動産分野が0.9%増収、法律分野が1.9%増収、公務員・労務分野が9.7%減収、情報・国際分野が1.1%増収、医療・福祉分野が横ばい、その他が15.6%増収だった。

 コロナ禍による事業環境変化に対応し、オンライン学習環境の強化(WEB SCHOOLの機能拡充など)や、法人向け研修における多様な受講方法の整備、新たなサービスの提供、オンライン受講の増加に伴う直営校の床面積の適正化などに取り組んでいる。24年3月期の個人教育事業におけるWEB通信講座の比率(現金ベース売上高比率)は23年3月期比2.3ポイント上昇して48.7%となった。法人研修分野においてもWEB会議システムを利用した研修が多くの企業で定着している。

 新たな取り組みとして22年11月より、プロeスポーツチーム「忍ism Gaming」とスポンサー契約を締結し、プロeスポーツ選手が資格取得にチャレンジする「シカチャレ」を開始した。引退者のセカンドキャリアについて、資格という側面から貢献することを目指す。また22年11月には人生100年時代に役立つ「実用講座」を開講した。

 23年1月には「TAC CBT(Computer Based Testing=コンピュータ試験)およびIBT(Internet Based Testing=インターネット試験)システム」によるテスト配信サービスを開始した。21年3月より日本全国の主要都市に直営校舎を持つ強みを生かした「TACテストセンター」サービスを行っているが、さらにCBTおよびIBTシステムを用いた試験問題の配信や採点等を行う「TAC CBTおよびIBT配信」サービスを加えることで、これまで培ってきた試験の申込受付や運営管理等のノウハウをパッケージ化した総合的なサービスを提供する。

 24年2月には会計士や税理士をはじめとする士業の方のサポートを中心とする結婚相談所サービス「TACマリッジコンシェルジュ」運営の開始を発表した。これまでに培ってきた人材ネットワークを生かし、士業の方のサポートを中心とする結婚相談所を開設し、士業同士の婚活をサポートする。なお「TACマリッジコンシェルジュ」はIBJ<6071>が運営する日本最大級の結婚相談所ネットワークの正規加盟店である。

■出版事業は事業領域拡大

 出版事業はTAC出版と早稲田経営出版(W出版)が展開している。両社の合算売上高の5億73百万円(TAC出版が4億94百万円、W出版が79百万円)は出版業界12位規模(出典:2023年度丸善ジュンク堂書店出版社売上ベスト300)で、資格書籍を主力とする出版社としては有数の規模となっている。

 事業領域拡大に向けて、高等学校商業科で使用する文部科学省検定済教科書(高校1年生で履修する簿記およびビジネス基礎)分野に参入した。22年4月には高等学校商業科教科書「簿記」および「ビジネス基礎」を刊行、23年4月には高等学校商業科教科書「原価計算」および「財務会計Ⅰ」を刊行した。24年3月には、国内旅行ガイド書「おとな旅プレミアム 第4版」全32点を24~25年版に改定して発売すると発表した。

■人材事業は会計系・医療系人材紹介などを展開

 人材事業は、子会社のTACプロフェッションバンクが会計系の人材紹介・派遣事業、医療事務スタッフ関西が関西エリアで医療事務に関する労働者派遣事業、診療報酬請求業務請負、診療報酬請求明細書(レセプト)点検業務を展開している。

 なお23年4月に、医療事務スタッフ関西が、診療報酬請求明細書点検業務を展開するクボ医療を吸収合併した。業務の関連性が高いため、人的資源やノウハウを共有することにより、サービス向上と業務の効率性を高める方針だ。

■四半期業績に季節変動要因

 四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係などで季節変動の特徴がある。第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の公認会計士・税理士講座は、翌年受験のための受講申込が集中する時期となるため、現金ベース売上高が突出して多くなるとともに、翌四半期に向かって前受け金として繰り越されることから、発生ベース売上高の増加が少なくなる傾向がある。

 また第4四半期(1~3月)から第1四半期(4~6月)にかけては、夏・秋の本試験時期に向けて全コースが出揃う時期にあたり、稼働率の上昇から前受金戻入額が増加することを通じて発生ベース売上高が増加する傾向にある。こうした売上の傾向に対して、売上原価や営業費用は毎月一定額計上されるため、四半期ごとの営業利益が変動しやすい。利益は期前半に集中し、下期は赤字となる収益特性がある。

■25年3月期黒字予想

 25年3月期連結業績予想(前受金調整後の発生ベース)は売上高が24年3月期比1.1%増の192億20百万円、営業利益が2億70百万円(24年3月期は3億07百万円の損失)、経常利益が2億20百万円(同3億29百万円の損失)、親会社株主帰属当期純利益が1億50百万円(同2億19百万円の損失)としている。配当予想は24年年3月期比2円減配の4円(第2四半期末2円、期末2円)としている。予想配当性向は48.4%となる。

 第1四半期(同)は売上高が前年同期比3.5%減の50億23百万円、営業利益が2.6倍の3億18百万円、経常利益が2.8倍の2億98百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2.4倍の1億96百万円だった。売上面は受講者数減少などで小幅減収だったが、営業費用抑制などの効果で各利益は大幅増益だった。

 個人教育事業は、売上高が1.7%減の28億56百万円、営業利益が2億84百万円(前年同期は19百万円)だった。法人研修事業は、売上高が1.5%減の12億10百万円、営業利益が1.4%増の3億25百万円だった。

 受講者数は個人受講者が1.6%減の4万928人、法人受講者が2.3%減の3万723人、合計が1.9%減の7万1651人だった。講座別(合計ベース)は税理講座が2.5%増、中小企業診断士講座が8.2%増、FP講座が6.6%増、情報処理講座が6.9%増、CompTIA講座が12.2%増となった一方で、公認会計士講座が7.6%減、宅地建物取引士講座が6.9%減、公務員の国家総合職・外務専門職講座が25.5%減、公務員の国家一般職・地方上級講座が8.4%減等となった。

 出版事業(TAC出版、W出版)は、売上高が13.4%減の7億99百万円、営業利益が22百万円の損失(前年同期は71百万円の利益)だった。コロナ禍明けの旅行需要に対応して刊行したテーマ別旅行ガイドがあった前期と比べて減収減益となった。人材事業は売上高が3.3%増の1億59百万円、営業利益が18.8%増の54百万円だった。TACプロフェッショナルバンクの会計系人材事業が好調に推移し、医療事務スタッフ関西の医療系人材事業も堅調だった。

 通期の連結業績予想は据え置いている。グループの持続的な事業活動と中長期的な成長を推進するための重点施策として、売上面ではオンラインでの学習環境強化と講座開発、営業人材育成による営業強化、需要の大きいDX関連研修の拡販、TAC出版書籍販売サイトのリニューアル、会計人材紹介事業の成約率向上、直営校の校舎規模の適正化、講座運営体制の抜本的見直し、全社的な作業効率の追求などを推進する方針だ。また株価純資産倍率(PBR)の改善にも取り組むとしている。積極的な事業展開で収益回復基調を期待したい。

■株価は調整一巡

 株価は8月の年初来安値に接近してやや軟調だが、1倍割れの低PBRもなど評価材料であり、調整一巡して出直りを期待したい。10月23日の終値は161円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円27銭で算出)は約19倍、今期予想配当利回り(会社予想の4円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS323円28銭で算出)は約0.5倍、そして時価総額は約30億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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