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コスモスイニシア Research Memo(6):リノベーションマンション販売と収益不動産等販売をドライバーに再成長へ

発行済 2022-07-15 15:16
更新済 2022-07-15 15:30
© Reuters.
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■コスモスイニシア (TYO:8844)の中期経営計画2026

3. 主要な取り組み
(1) 成長と安定を両立する事業ポートフォリオの構築
前中期経営計画で未達となった業績の回復と向上に向けてセグメント戦略を展開する計画だが、中期経営計画2026を着実に進行して目標に必達するため、まず成長と安定の両面で事業ポートフォリオを再構築する。
安定的な経営を支える現在の事業ラインアップを継続強化するとともに、戦略的に拡大を進めてきたリノベーションマンション販売と収益不動産等販売をドライバーに事業成長に弾みをつける。
宿泊事業については、仕掛中の施設の開業や稼働率向上に向けた運営及び着実な施設販売を進めるとともに、インバウンドの回復・再拡大に応じて、中期経営計画2026に織り込んでいない新規案件への投資再開も検討する。
宿泊事業の復活も強い成長ドライバーになると思われる。
さらに、不動産に対するニーズの多様化を念頭においた高付加価値戦略と、その実現に向けたバリューチェーンの強化やデジタル化の促進により収益性の向上も目指していく。


(2) セグメント別戦略(レジデンシャル事業)
レジデンシャル事業全体としては、「INITIA」へのブランド統合を機にブランド価値のさらなる向上を追求し、リノベーションマンション販売をドライバーとした事業の成長と、デベロッパーノウハウと製販一貫体制を生かした付加価値の高い商品企画の提供を目指す。
また、新築マンション全住戸へのZEH※採用や地域コミュニティの形成、中古ストック再生などによりESG経営を実践する。
新築マンション・一戸建販売では、立地特性と顧客ニーズの多様化にマッチする商品企画に加えデジタルマーケティングを強化する。
また、総合ギャラリー「イニシアラウンジ三田」を活用して、首都圏での新築マンションの仕入・販売を強化するなどエリア戦略を推進する。
資源再生の観点からも人気のリノベーションマンション販売では、自社の既存分譲マンションなどの営業資産や中古ストックを活かした、付加価値の高い商品展開で多様化するニーズに応えていく。
なお、新築マンション・一戸建は少子高齢化の中で中期的に需要減の傾向となっているが、リノベーションマンションの需要拡大を見込んでいる。
海外事業では、オーストラリアでの分譲住宅開発事業の深耕を想定している。
これらによってレジデンシャル事業の拡大と収益性の向上をともに目指す考えである。


※ZEH(net Zero Energy House):家庭で使用するエネルギーと太陽光などで発電するエネルギーをバランスして、年間の消費エネルギーの量を実質的ゼロ以下にする家。



(3) セグメント別戦略(ソリューション事業)
ソリューション事業全体としては、新築・中古を問わない多様なアセットタイプの収益不動産と、独自の不動産運営コンテンツとのシナジー効果により、事業拡大と収益性向上を目指す。
ESG経営の実践としては、中古ストック再生や、コミュニティ形成につながる運営コンテンツの開発・展開などを目指す。
収益不動産等販売では、新築と中古ストック再生の双方を強化、取り扱うアセットのタイプを拡充して事業拡大を目指す一方、「MID POINT」など独自の運営コンテンツや共同出資型不動産「セレサージュ」など販売チャネルの多様化により収益性向上も推進する。
また、「MID POINT」や「nears」に続く不動産運営コンテンツの開発と展開を強化し、収益不動産等販売における高付加価値オプションとして受託の拡大を図る。
不動産賃貸管理・運営では、住宅サブリースの収益性向上を進めるとともに、オフィスビルなどの賃貸管理・運営の事業拡大を目指す。
収益不動産等販売がけん引する恰好で、ソリューション事業の収益拡大を目指す。


(4) セグメント別戦略(宿泊事業)
宿泊事業全体としては、家族・グループでの中長期滞在ニーズに応える都市型アパートメントホテルとして「MIMARU」ブランドの強化を図るとともに、仕掛中の施設の開業や稼働率の向上、着実な施設販売を進める方針である。
また、公的不動産をアウトドアリゾートとして有効活用した「ETOWA」の展開や積極的な外国人採用などESG経営を実践する。
ホテル施設販売では、2022年3月期末時点の棚卸資産の販売を見込んでいるが、うち約半数については保守的に最終年度の販売とし、販売損益が概ね均衡するという想定になっている。
ホテル施設運営では、2023年3月には稼働がコロナ禍前の水準に回復するということを前提に、当面は国内需要の獲得に注力する。
ホテル施設販売もホテル施設運営もインバウンドの回復・再拡大次第となるが、施設販売の前倒しや、施設運営での仕掛中施設の開業や稼働向上をできる限り早めて収益向上を目指す。
一方で、インバウンド市場の回復・再拡大に応じて、中期経営計画2026で織り込んでいない新規案件への投資再開も検討していく方針としている。


(5) セグメント別戦略(工事事業)
国内外のデザインアワードなどで多くの受賞実績がある空間設計・デザイン力をさらに強化するとともに、コンサルティング・マネジメントの総合力も身につける方針である。
また、オフィス移転・内装工事などファシリティ領域、建築・リノベーション工事・マンションギャラリー設営工事など建築領域において、事業拡大と収益性向上を目指す。
特にオフィスの内装工事は、ニューノーマル下の働き方改革のなかで需要拡大が見込まれている。
ESG経営の実践に関しては、環境配慮型の商品を活用するなど環境負荷の低い事業展開への取り組みを進める。
なお、受注環境の悪化はコロナ禍による一時的なものと考えられるため、同社では早期に回復すると想定している。


(6) その他の事業拡大・収益向上への取り組み
新たな事業創造として、海外事業の強化、新たな運営コンテンツの開発、アセットマネジメント事業への展開を進めていく方針である。
海外事業は国内で培ったノウハウを活用できる事業に絞って展開しており、現在、シドニーエリアで分譲住宅開発事業を行っている。
現地パートナーとのジョイントベンチャーで4プロジェクトを推進中で、今後の事業拡大を目指している。
また、市場成長性の高い地域への進出・展開も進めており、米国テキサス州ダラスでは底堅い賃貸住宅需要が見込まれる中古賃貸アパートメントのValue-Add(再生販売)事業、人口増加と経済成長が見込まれるベトナム・ホーチミンでは分譲住宅開発事業をスタディ中である。
運営コンテンツとして、これまでアパートメントホテル「MIMARU」、レンタルオフィス「MID POINT」、シェアレジデンス「nears」、アウトドアリゾート「ETOWA」などを開発してきた。
同社はさらに、これらに続く新たな運営コンテンツを開発し、収益不動産の価値最大化と運営受託による収益基盤の拡充を目指す。
また、ソリューション事業で培った収益不動産の価値向上ノウハウをアセットマネジメント事業に活かしていく考えである。
収益不動産等販売における仕入機会や販売チャネルの拡充が期待されると同時に、不動産賃貸管理・運営を受託する機会も増えそうだ。


(7) DXの強化とESG経営の実践
これまでもビジネス領域とコーポレート領域でデジタル化を推進してきたが、さらにDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みを加速する計画である。
ビジネス領域では、デジタル化により提供価値や業務効率の向上を進めてきたが、これにDXの取り組みを加速することで、カスタマーエクスペリエンスの向上や新たなサービスの開発など事業の革新につなげていく方針である。
コーポレート領域では、デジタル基盤の構築によってDXの推進と多様な働き方を促進し、革新的経営の実現を目指す。


同社は、各事業で社会的価値の高い運営を通じてESG経営を実践することで、企業価値の向上を目指している。
具体的には、Environmentでは、新築マンション全住戸ZEHの実現、リノベーションマンション販売や収益不動産等販売における中古ストック再生の取り組み、環境負荷の低い商品・サービスの開発などにより、環境にやさしい建物・都市生活づくりを目指す。
Socialでは、コミュニティ形成や子育てを支援する商品・サービスの開発や、同社独自の働き方改革を通じて、人と人の温かなつながりがある豊かな都市生活づくり目指す。
Governanceでは、リスク管理機能とコーポレートガバナンスを継続的に強化することで、多様な事業ラインアップに対応した持続的な成長の基盤づくりを目指す。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)


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