[富山市 19日 ロイター] - 日銀の安達誠司審議委員は19日、富山県金融経済懇談会後の記者会見で、足元の円安について「スピード感が非常に強い」と述べ、企業の設備投資などに不透明感をもたらす可能性があると警戒感を示した。新発10年債の取引が成立しない日が目立つなど国債市場の機能低下が指摘されていることについては、注視が必要とする一方で、すでに対策を講じており「早急に対処しなければまずい状況とは今のところ考えていない」と述べた。
6月、金利に強い上昇圧力が掛かった局面で日銀が大量に国債を買い入れた結果、債券市場では流動性が急速に低下。日銀は流動性対策として、国債補完供給の要件を緩和したが、流動性が低い状況は続いている。安達委員は新発10年債の取引不成立について「ここ2週間で起きていること」と話し、恒常的なものか十分に注意して見ていきたいと述べた。
10月に広範な品目が値上げされたことで、10月の消費者物価指数はかなりの伸び率になるとの見通しを示した。食料(酒類を除く)とエネルギーを除く「欧米型コアCPI」でも2%を超えてくる可能性があるとし、「来年年明け後しばらくは物価高は続くだろう」と述べた。
物価高は安達委員が想定していた以上に早く進んでいるものの、食料やエネルギーなど商品市況の影響が反映されやすい品目については、先行き海外経済の下方リスクが高まれば下落する可能性も出てくると指摘。2%目標達成の観点からは、サービス価格を中心に、価格改定の頻度が低く景気悪化に左右されにくい品目の上昇率をもう少し上げておく必要があると述べた。
(和田崇彦 編集:田中志保)