ミロク情報サービス<9928>(東証プライム)は財務・会計ソフトを主力として、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した統合型DXプラットフォームの構築を目指している。なお4月5日~7日に東京ビッグサイトで開催される「第32回Japan IT Week春」内の「クラウド業務改革EXPO」に出展する。23年3月期は主力のERP製品が好調に推移して大幅営業・経常増益予想(当期利益は前期特別利益の反動で減益予想)としている。第3四半期累計の進捗率が高水準であることを勘案すれば、通期会社予想は再上振れが濃厚だろう。さらに24年3月期以降も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は上げ一服の形となったが、モミ合いから上放れて昨年来高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。
■財務・会計ソフトの開発・販売およびサービス
会計事務所(税理士・公認会計士事務所)と、その顧問先企業である中堅・中小企業向けに、財務・会計ソフトなどの業務用アプリケーションソフト開発・販売、汎用サーバ・パソコン・サプライ用品販売、運用支援・保守サービス、経営情報・コンサルティングサービスなどを展開している。
会計事務所が抱えている課題を解決することで中堅・中小企業の支援にも繋がるトータルソリューションを強みとして、全国約8400の会計事務所ユーザー、および約10万社の中堅・中小企業ユーザーを有している。中堅・中小企業向けERP「MJSLINKシリーズ」は、矢野経済研究所「2022ERP市場の実態と展望」における年商50億円未満の企業向け財務会計管理ソリューションのライセンス売上高シェアで09年から13年連続売上高シェアNo.1、およびデロイト トーマツ ミック経済研究所「基幹業務パッケージソフトの市場展望2021年度版」の中規模企業向けERPシステム部門で売上高シェアNo.1となり、ダブルでNo.1を獲得している。
21年3月に中堅・中小企業向けクラウド型ERPシステム「MJSLINK DX」を提供開始、21年9月にクラウド型ワークフローサービス「MJS DX Workflow」を提供開始、22年4月に中堅企業向け新ERPシステム「Galileopt DX」を提供開始、22年6月にクラウド型電子契約サービス「MJS e-ドキュメントCloudサイン」を提供開始、22年9月に新政務システム「MJS税務DX」を提供開始、23年1月に「MJSLINK DX」においてクラウド型の新機能「MJS DX伝票入力」を提供開始した。
22年3月期売上高構成比は、フロー型のシステム導入契約売上高が55%(システム導入契約時のハードウェアが9%、ソフトウェアが34%、システム導入支援サービスなどのユースウェアが13%)、ストック型のサービス収入が36%(会計事務所向け総合保守サービスTVSが7%、ソフト使用料が8%、企業向けソフトウェア運用支援サービスが15%、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が4%、サプライ・オフィス用品が2%)、その他が9%だった。
収益はソフト保守サービス契約率上昇などでサービス収入が拡大するストック型収益構造である。なおシステム導入契約売上高の販売先別売上高構成比は、企業向けが52%、会計事務所向けが30%、その他が18%だった。
■M&A・アライアンスも積極活用
20年4月に組織・人事分野の独立系コンサルティングファームであるトランストラクチャを子会社化、20年5月にフィンテックサービスの企画・開発を行う子会社のMFTがセントラル警備保障(CSP)の子会社で店舗内現金管理・流通効率化を行うスパイスを子会社化、20年11月にリーガルテック企業であるリセと資本業務提携、20年12月にデジタルマーケティング支援のトライベックを子会社化した。
21年1月に信金中央金庫の「しんきん事業承継コンソーシアム」に参画、ゼロ知識証明を利用したブロックチェーン・プラットフォーム開発のToposWareと資本提携した。21年4月には子会社のトライベックとビズオーシャンを合併した。トライベックのデジタルマーケティング事業とビズオーシャンのメディア・広告代理事業を融合し、総合型DXコンサルティング企業として幅広いサービスを提供する。21年6月に税務・会計を中心としたコンテンツ提供や士業事務所の経営支援サービスを提供するKACHIEL(カチエル)と資本業務提携、21年9月にアナリティクス・コンサルティングサービスやAI開発・運用を行うセカンドサイト社と資本業務提携した。
22年2月には子会社DX Tokyoを設立した。全国の中小企業を対象にIT専門家シェアリング/サブスク事業を展開する。22年9月には顧客管理・営業支援システム開発・販売のBizMagicを子会社化した。22年12月にはオリックスと中小企業向けオンライン融資サービスで業務提携した。
■クラウドサービス・サブスクモデルへの変革と新規事業の確立を推進
中期経営計画Vision2025(21年度~25年度)では、経営目標値として26年3月期売上高550億円、経常利益125億円、経常利益率22.7%、ROE20%超を掲げている。内訳は、単体ベース(ERP事業)が売上高360億円で経常利益75億円、グループ会社が売上高150億円で経常利益25億円、グループ新規事業(DX事業)が売上高50億円で経常利益25億円としている。
基本戦略として会計事務所ネットワークno.1戦略、中堅・中小企業向け総合ソリューション・ビジネス戦略、統合型DXプラットフォーム戦略(新規事業領域)、クラウド・サブスク型ビジネスモデルへの転換、グループ連携強化によるグループ会社の独自成長促進、戦略実現を加速する人材力・経営基盤強化を推進する。
単体ベース(ERP事業)では、クラウドサービスの拡充とサブスクリプション型収益モデルの比率を高めて、安定的な収益基盤の更なる強化を目指すとともに、価値創造を最大化する総合的なソリューションを展開する。グループ会社では、コンサルティング&技術力の発揮と、グループ再編による生産性の向上を目指す。
グループ新規事業(DX事業)では、ERPソリューションとデジタルマーケティングを融合した新たな統合型DXプラットフォームを構築し、新たなコミュニケーション&クラウドサービスを展開する。グループとして提供する4つのDXプラットフォーム(マーケティングDX、ビジネスDX、オペレーティングDX、ファイナンスDX)をプラットフォーム上で同時に実現することで、デジタル化時代の中小企業・小規模事業者が抱える4つの経営課題(新規顧客開拓および顧客満足度・ロイヤルティ向上、フロントオフィス系のBtoB取引の効率化、バックオフィス系の管理業務の効率化、資金管理・資金調達)を解決するソリューションを目指す戦略だ。
22年5月には、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けて、サステナビリティ基本方針の策定、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)の特定、サステナビリティ委員会の設置を発表した。サステナビリティ基本方針は、DX推進による地球環境への貢献、会計事務所と中小企業の経営革新や成長・発展を支援、多様なプロフェッショナル人材が活躍する働きがいのある職場づくり、健全成長のためのガバナンスの強化としている。
22年12月には、人的投資強化の一環として一般職正社員の基本給のベースアップ、通常賞与(夏季・冬季)の増額等を行った結果、23年3月期の一般職正社員の平均年収は9.6%増額となったとリリースしている。また一般職正社員への冬季賞与支給に合わせて、管理職正社員ならびに非正規従業員への臨時手当の支給も実施した。
23年2月にはJリーグ「東京ヴェルディ」およびWEリーグ「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」と、2023年シーズンもCSRパートナー(スポンサー)契約を締結した。CSR活動の一環として2008年シーズンから「東京ヴェルディ」のスポンサー契約を継続して今年で16年目となる。2011年からは「日テレ・東京ヴェルディベレーザ」ともスポンサー契約を締結している。
■社会全体のDXを推進
なお社会全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)を目指すことを目的として、SAPジャパン、オービックビジネスコンサルタント、ピー・シー・エー、ミロク情報サービス、弥生の5社で社会的システム・デジタル化研究会を発足し、20年6月には社会的システムのデジタル化による再構築に向けた提言を発表している。また下部組織として電子インボイス推進協議会(EIPA=エイパ)を20年7月に立ち上げている。
20年12月には電子インボイス推進協議会が、23年10月の適格請求書等保存方式(インボイス制度)開始に向けて、日本の電子インボイス標準仕様を、電子文書をネットワーク上で授受するための国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠して策定することを決定したと発表している。
22年9月には国際規格「Peppol(ペポル)」に準拠した電子インボイスの送受信ならびにインボイスの電子化に対応するクラウドサービス「MJS e―Invoice」を提供開始した。
■23年3月期大幅営業・経常増益予想、さらに再上振れ濃厚
23年3月期連結業績予想(22年10月31日付で上方修正)は売上高が22年3月期比11.5%増の408億円、営業利益が21.1%増の58億円、経常利益が17.4%増の56億円としている。親会社株主帰属当期純利益は前期計上の特別利益が剥落して20.3%減の36億円としている。配当予想は2月3日付で期末5円上方修正して22年3月期と同額の45円(期末一括)としている。なお22年3月期の45円には特別配当5円含んでいるため、23年3月期は普通配当ベースでは5円増配の形となる。
第3四半期累計は、売上高が前年同期比13.7%増の310億16百万円、営業利益が41.8%増の53億83百万円、経常利益が34.2%増の51億14百万円だった。親会社株主帰属四半期純利益は前期計上の特別利益の剥落で6.1%減の36億75百万円だった。
22年4月に販売開始した中堅企業向けERPシステム「Galileopt DX」を中心に、主力ERP製品の販売が好調に推移した。さらに、クラウドサービス利用社数の増加や、オンプレミス製品のサブスクリプション型への移行によるストック型ソフトウェア使用料収入の伸長も寄与した。売上総利益は16.3%増加し、売上総利益率は1.4ポイント上昇して63.2%となった。販管費は8.9%増加したが、販管費比率は2.1ポイント低下して45.8%となった。営業外費用では持分法投資損失が増加(前期は44百万円計上、今期は3億38百万円計上)した。特別利益では前期計上の関係会社株式売却益20億87百万円が剥落した。
品目別の売上高は、システム導入契約売上高が前年同期比17.3%増の178億42百万円(ハードウェア売上高が25.5%増の30億04百万円、ソフトウェア売上高が10.7%増の103億97百万円、ユースウェア売上高が29.9%増の44億39百万円)で、サービス収入が10.5%増の106億47百万円(会計事務所向け総合保守サービスTVSが0.6%増の18億99百万円、ソフトウェア使用料収入が46.1%増の29億08百万円、企業向けソフトウェア運用支援サービス収入が2.5%増の42億65百万円、ハードウェア・ネットワーク保守サービス収入が0.4%増の11億35百万円、サプライ・オフィス用品が4.9%減の4億39百万円)だった。
なお四半期別に見ると、第1四半期は売上高が97億16百万円で営業利益が15億03百万円、第2四半期は売上高が101億65百万円で営業利益が15億99百万円、第3四半期は売上高が111億35百万円で営業利益が22億81百万円だった。
通期の連結業績予想は据え置いている。賃金引き上げ等を考慮した従業員への還元策の拡充、先行投資となる広告宣伝費の増額、関係会社の業績下振れリスクなどを想定するが、主力ERP製品やサービス収入の好調などで吸収して大幅営業・経常増益予想としている。
第3四半期累計の進捗率は売上高が76.0%、営業利益が92.8%、経常利益が91.3%、親会社株主帰属当期純利益が102.1%と高水準である。通期会社予想を据え置いているが、第3四半期累計の進捗率が高水準であることを勘案すれば再上振れが濃厚だろう。さらに24年3月期以降も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は上値試す
なお22年8月には「JPX日経中小型株指数」の22年度構成銘柄として、21年度に続いて継続選定された。
株価は上げ一服の形となったが、モミ合いから上放れて昨年来高値圏だ。自律調整を交えながら上値を試す展開を期待したい。3月8日の終値は1799円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS120円57銭で算出)は約15倍、今期予想配当利回り(会社予想の45円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS743円26銭で算出)は約2.4倍、そして時価総額は約626億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)