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生化学工業は売られ過ぎ感、23年3月期も収益拡大基調

発行済 2022-04-13 08:39
更新済 2022-04-13 09:05
© Reuters.  生化学工業は売られ過ぎ感、23年3月期も収益拡大基調

 生化学工業<4548>(東証プライム)は関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野を主力とする医薬品メーカーである。成長戦略として新たな収益の柱となる新薬開発の加速、製品の市場拡大による収益基盤強化、生産性向上のための改革を推進している。22年3月期はコロナ禍からの市場回復、医薬品受託製造の増加、受取ロイヤリティーの大幅増加などで大幅増収増益予想としている。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。なお5月13日に22年3月期決算発表を予定している。

■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー

 糖質科学分野が主力の医薬品メーカーで、国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け単回投与関節機能改善剤Gel-One、米国向け3回投与関節機能改善剤VISCO-3、米国向け5回投与関節機能改善剤SUPARTZ-FX、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。

 21年3月期のセグメント別の構成比は、売上高が医薬品事業75%(国内医薬品43%、海外医薬品25%、医薬品原体・医薬品受託製造7%)、LAL事業25%、営業利益が医薬品事業24%、LAL事業76%だった。

 20年3月には海外製造拠点としてカナダのダルトン社を子会社化した。なおダルトン社を買収する際に中間持株会社として設立したSEC社、および買収目的会社として設立したSAC社が特定子会社に該当することになったため、ダルトン社とSAC社が現地法に基づく新設合併を行い、新設された新ダルトン社が旧ダルトン社から商号および事業を引き継いだ。

 20年8月には、ダルトン社がサスカチュワン大学の研究機関であるVIDO-InterVacと、VIDO-InterVacがカナダ政府およびサスカチュワン州から支援を受けて開発を進めているCOVID-19ワクチンの製造に関して、業務提携に合意した。ダルトン社は本提携により、COVID-19ワクチンの初期段階の臨床試験で投与される治験薬の調合、充填、製剤化を担う。

 21年4月にはLAL事業の海外子会社である米ACC社が、遺伝子組み換えエンドトキシン測定用試薬「パイロスマート ネクストジェン」の販売を開始した。21年8月には単回投与の関節機能改善剤ハイリンクについて、台湾のTCM社を通じて台湾における販売を開始した。

 21年11月には海外子会社のACC社が、遺伝子組み換えエンドトキシン測定用試薬「パイロスマート ネクストジェン」について、Pharma Manufacturing 2021 Innovation Awardを受賞した。

 21年1月にはダルトン社の100%出資子会社として、カナダに現地法人SEIKAGAKU NORTH AMERICA CORPORATIONを設立した。北米に開発拠点を有することで、現地の医療環境に即したプランの立案、FDA(米国食品医薬品局)や治験施設との円滑なコミュニケーション実現など、医薬品・医療機器開発および承認取得の加速を目指す。

■新薬開発は糖質科学分野に焦点

 研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞っている。開発パイプラインには、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603、変形性膝関節症改善剤SI-613、腱・靱帯付着部症を適応症とするSI-613-ETP、ドライアイ治療剤SI-614、間質性膀胱炎を適応症とするSI-722、癒着防止材SI-449がある。

 SI-6603は日本では18年3月製造販売承認を取得し、科研製薬<4521>が18年8月販売開始(腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコア)した。またスイスのフェリング社と日本を除く全世界におけるライセンス契約を締結している。マイルストーン型ロイヤリティーの総額は最大95百万米ドル(うち契約一時金5百万米ドル)である。米国では第3相臨床の追加試験が22年11月経過観察終了予定だが、新型コロナウイルスの影響で進捗が遅れているため、被験者増加や治験施設増加など各種施策を実行して組み入れを促進している。

 SI-613は、小野薬品工業<4528>と日本における共同開発・販売提携に関する契約を締結し、21年3月に変形性関節症治療剤ONO-5704/SI-613(ジョイクル関節注30mg)について、変形性関節症(膝関節、股関節)の効能または効果で国内製造販売承認を取得(21年5月に小野薬品工業が販売開始)した。マイルストーン型ロイヤリティーの総額は最大120億円(うち契約一時金20億円)である。米国では第2相臨床試験結果の解析が終了し、第3相臨床試験の検討と並行して提携先の選定を進めている。SI-613-ETP(小野薬品工業とのSI-613の契約に含む)は後期第2相臨床試験の解析が終了し、次のアクションを検討中である。

 なおSI-613について、20年9月にエーザイ<4523>と韓国における販売提携に関する契約を締結した。エーザイの韓国子会社が韓国におけるSI-613の独占的販売権を取得し、製造販売申請を行う。承認取得後は製品をエーザイに供給する。契約一時金と販売マイルストーンを受け取る。エーザイとは20年4月に中国における共同開発および販売提携に関する契約を締結しており、2ヶ国目の提携となる。

 SI-614は米国で第2・3相試験が終了し、販売提携先を選定中である。SI-722は、19年11月米国における第1・2相臨床試験を開始、20年3月被験者投与を開始した。コロナ禍の影響で計画遅れの状況だが、治験施設の稼働を再開している。SI-449は18年5月開始した日本でのパイロット試験で良好な結果が確認され、20年5月に国内ピボタル試験を開始した。コロナ禍の影響で遅延が生じているが、リモート下での治験対応策を実施している。

■新薬開発や収益基盤強化を推進

 中期経営計画の目標には、22年3月期(想定為替レート1米ドル=105円)の売上高283億円、経常利益45億円、SKK EBITDA(営業利益に減価償却費、受取ロイヤリティーを加えた利益指標)50億円、海外売上高比率50.0%を掲げている。研究開発費は売上比25~30%である。利益配分は配当性向50%を目指す。

 重点施策としては、新たな収益の柱となる新薬開発の加速、製品の市場拡大による収益基盤強化、生産性向上のための改革を推進している。

 なお21年10月には、海外子会社のACC社がカブトガニ保全活動において、この種の取り組みでは初めてとなるアメリカ産カブトガニ累計100万匹放流を達成した。また21年12月には会社HPにサステナビリティページを開設し、各種取組を紹介している。

■22年3月期大幅営業・経常増益予想、23年3月期も収益拡大基調

 22年3月期の連結業績予想(収益認識会計基準適用のため21年3月期を新基準に遡及適用して前期比増減率算出、利益への影響はなし)は、売上高が21年3月期比16.1%増の322億円、営業利益が2.0倍の45億50百万円、経常利益が53.7%増の46億50百万円、親会社株主帰属当期純利益が14.4%減の36億50百万円としている。なお受取ロイヤリティーを営業外収益から売上高に表示区分変更するとともに、販売手数料等を販管費計上から売上高控除に変更する。配当予想は6円増配の30円(第2四半期末15円、期末15円)(普通配当20円+ジョイクル発売特別配当10円)としている。

 売上面は国内薬価引き下げが減収要因となるが、受取ロイヤリティーの増加、新製品の変形性関節症治療剤ジョイクル関節注30mg(開発コードONO-5704/SI-613)の発売、医薬品原体・医薬品受託製造の伸長などで2桁増収見込みとしている。

 セグメント別売上高計画は、医薬品事業が21.0%増の251億50百万円(内訳は国内医薬品が1.3%増の116億円、海外医薬品が1.8%増の69億円、医薬品原体・医薬品受託製造が27.3%増の23億50百万円、受取ロイヤリティーが6.0倍の43億円)、LAL事業が1.6%増の70億50百万円としている。

 利益面は、研究開発費が増加(9.6%増の79億円)し、減価償却費や営業関連費も増加するが、増収効果で吸収して大幅営業・経常増益予想としている。親会社株主帰属当期純利益は前期の法人税等調整額のマイナス計上の反動で減益予想としている。

 第3四半期累計は、売上高が前年同期比37.0%増の281億45百万円、営業利益が3.8倍の62億34百万円、経常利益が3.3倍の69億05百万円、親会社株主帰属四半期純利益が2.9倍の53億64百万円だった。

 コロナ禍影響からの市場回復、海外医薬品の販売好調と前倒し出荷、医薬品受託製造の増加、受取ロイヤリティーの大幅増加などで大幅増収増益だった。米国で実施中の腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI―6603追加臨床試験進展などで研究開発費が増加(8.8%増の58億55百万円)したが、増収効果や売上構成変化による原価率低下などで吸収した。

 医薬品事業は売上高が37.4%増の214億20百万円、営業利益が4.9倍の43億81百万円だった。売上高の内訳は、国内医薬品が0.2%減の91億73百万円、海外医薬品が44.6%増の67億43百万円、医薬品原体・医薬品受託製造が27.2%増の19億52百万円、受取ロイヤリティーが35億50百万円(前年同期は1億96百万円)だった。

 国内は主力の関節機能改善剤アルツが好調に推移し、薬価引き下げの影響を数量増でカバーした。なお関節機能改善剤ジョイクル(21年5月発売)は、ブルーレター発出に伴って出荷期限を迎える製品の売上マイナス計上を第3四半期に実施した。海外は、米国において新型コロナ影響から市場がほぼ回復し、販売提携先による競合品からの切り替え施策も寄与して好調だった。流通リスク回避に向けた前倒し出荷も寄与して大幅増収だった。中国向けも現地販売本数が増加し、第3四半期までに出荷が集中したことも寄与した。医薬品原体・医薬品受託製造は医薬品原体が減少したが、ダルトン社の医薬品受託製造が増加した。

 LAL事業は売上高が35.6%増の67億25百万円で、営業利益が2.5倍の18億52百万円だった。海外子会社においてエンドトキシン測定用試薬、グルカン測定体外診断用医薬品、受託試験サービスが好調だった。

 四半期別に見ると、第1四半期は売上高117億84百万円で営業利益44億46百万円、第2四半期は売上高87億46百万円で営業利益15億92百万円、第3四半期は売上高76億15百万円で営業利益1億96百万円だった。第1四半期に受取ロイヤリティー35億50百万円を計上した。第3四半期は研究開発費が増加した。

 通期予想は据え置いている。第4四半期には、米国で実施中の腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI―6603追加臨床試験における追加費用の発生で研究開発費の増加を見込み、ブルーレター発出によるジョイクルの販売への影響も考慮している。ただし第3四半期累計の各利益は通期予想を超過達成しており、通期上振れの可能性がありそうだ。さらに23年3月期も積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新したが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。4月12日の終値は853円で、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS64円83銭で算出)は約13倍、前期推定配当利回り(会社予想30円で算出)は約3.5%、前々期実績連結PBR(前々期実績の連結BPS1127円14銭で算出)は約0.8倍、そして時価総額は約485億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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