■事業概要2. ネットワークと収益構造J-オイルミルズ (T:2613)の国内拠点は、7工場、13営業拠点、1事業所(倉庫)、2研究所に加え本社等に研究機能を有している。
海外から輸入された原材料を国内の工場で製品化、営業拠点を通じて主に食品メーカー、外食企業や中食企業などへ業務用として販売される。
このほか、卸や小売を通じて家庭用も販売されている。
油脂メーカーの収益はよく「振れる」と言われる。
理由は原材料にあり、原材料の大豆や菜種には日々変動する国際相場があり、また調達の大半が海外からの輸入になるため為替相場にも左右されるからである。
このため同社は、相場に対してヘッジをかけるのは当然だが、3社統合後は工場での生産体制をすべて見直し、固定費の引き下げなど効率化によるコストダウンを進めてきた。
さらに「振れ」をなくすには、コストを増やさずに収益性を高める必要がある。
研究所では、あぶらから種子、容器に至るまでの研究を通じて、商品の高付加価値化を図っている。
顧客のニーズを知ることは、商品開発や研究を効率化するうえで重要である。
顧客のニーズは、プロの料理人並みの料理の再現から調理場や売場での単純な悩みの解消まで様々である。
顧客の向こう側にいる消費者も、種々の課題を感じていると思われる。
従って、こうした課題を解決することは、同社の収益改善と成長促進につながると考えられる。
ビジネスチャンスと言える。
このビジネスチャンスをしっかり掴むため、同社は2018年、権限委譲による意思決定の迅速化を図るとともに責任の所在を明確にすることを目的に、これまでの油脂を中心とする機能別6本部制から、油脂、油脂加工品、食品・ファインの3事業本部制へと組織を変更、事業本部に横串を刺す共通機能を設けた。
これにより、コンサルティング型営業と技術的サポートの連携を容易にし、高付加価値品の開発や課題解決型の営業を容易にした。
同時に、開示セグメントも「油脂事業、その他」という単一表示から、「油脂事業、油脂加工品事業、食品・ファイン事業、その他」というセグメント別表示に変更したが、組織変更とその意思を社内外に強く示すためと推測できる。
多様なニーズをもつ中食や外食に対応3. 市場環境と課題人口減少や少子高齢化、単身世帯の増加、女性の社会進出などの社会動態、食に対する価値観や意識の変化、調理方法・技術の進化などにより食生活が変わるなか、健康志向・グルメ志向といったライフスタイル化が進行している。
一方で、惣菜など中食やレストランなど外食の増加により、食の外部化率は上昇を続け約5割に達したと言われている。
油脂市場もこうした食の外部化の影響を受けており、業務用は数量ベースでは伸びているものの、競争激化などにより金額ベースでは伸び悩んでいる。
家庭用はベーシックオイルを中心に数量ベースでは伸び悩んでいるものの、オリーブオイルなど小ロットの高付加価値品が好調である。
今後も社会動態の動きなどに伴い、食の外部化率は上昇を続けていくことが予測されている。
中食・外食産業では、アルバイト時給の上昇や物流業者の値上げ、コンビニエンスストアの24時間営業の是非が問題になるなど、人手不足が急速に深刻化している。
このほかにも、コストダウンやロス軽減、消費者ニーズ多様化への対応など課題は多く、中食では経時劣化やできたて感の維持、外食では味を維持するプロの料理人の不足といったそれぞれ分野における課題もある。
こうした外部環境の課題に対して同社は、同社の強みを相乗的に発揮して対応しようとしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)