[東京 7日 ロイター] - 岸田文雄政権初となる骨太方針(経済財政運営の指針)は、官邸主導だった安倍晋三・菅義偉政権下の「政高党低」が崩れ、防衛予算や財政目標を巡って与党自民党主導の修文が目立った。政権与党の意向が政策に反映されやすい状況が続けば、参院選後も歳出圧力を強めそうだ。
<1兆円増なら、5年で倍増>
焦点だった防衛力に関する表現は、抜本的な強化の時期を「5年以内」と明記することで決着した。北大西洋条約機構(NATO)加盟国が国内総生産(GDP)比2%以上の国防予算を目指しているとの記述は最終案で脚注から本文に格上げし、主要7カ国(G7)のうち、ドイツが新たに国防予算を対GDP比2%とすることを表明したことも追記した。
外交・安全保障の強化を巡っては、党関係者らによると、日米共同首脳声明などを参考に修文案をまとめた。「台湾」と骨太方針に記載されるのは、脚注も含め骨太方針の策定を始めた2001年以降で例がない。
首相が5月23日にバイデン米大統領との会談で防衛予算の増強を表明して以降、防衛費の書きぶりは焦点のひとつだった。
複数の政府関係者によると、同日から始まった各省協議では、防衛力について「抜本的に強化する」との表現にとどめ、目標達成の時期や具体的な予算額には触れていなかった。昨年までの「大幅に強化」からは踏み込んだ表現をたたき台としたものの、「具体的な道筋を示すべきとする与党の声に配慮せざるを得なかった」と、政府関係者の1人は経緯を振り返る。
骨太方針は予算編成の基礎となり、「具体的になるほど次年度以降の予算に反映されやすい」(別の関係者)。当初ベースの防衛予算がGDP比1%弱にとどまる日本の状況を考慮し、「毎年1兆円ずつ増やせば5年で倍増となる」と、与党関係者の1人は話す。
<需要不足21兆円の追い風>
財政健全化を巡る指針では、安倍氏が年限を区切った財政目標の妥当性に疑念を示すなどしたことを踏まえ、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字とする年次目標を明記しなかった。年次明記の見送りは新型コロナウイルスの感染が広がった20年以来2年ぶりとなる。
経済あっての財政を掲げて「現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならない」とする一方、与党に押し切られるかたちで「重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」との表現も加えた。
防衛費以外でも人への投資やデジタル対応、環境など社会課題の解決を名目とする歳出項目も多く散りばめられ、例年以上に歳出を意識した内容となっており、今後も「躊躇なく機動的なマクロ経済運営を行っていく」との構えを崩していない。
欧米に比べて新型コロナからの経済回復の足取りも鈍く、与党内では「GDPギャップを穴埋めする程度の対策は最低限必要」との声もくすぶる。内閣府によると22年1─3月期の需要不足は21兆円に上り、歳出追加を求める声はさらに強まる可能性がある。
(山口貴也、金子かおり 編集:久保信博)