[ロンドン 5日 ロイター] - イングランド銀行(英中央銀行、BOE)は5日、政策金利を0.25%ポイント引き上げ1%とすると発表した。利上げは昨年12月から4会合連続。利上げ幅は25年ぶりの大きさで、金利水準は2009年以来の高さになった。
金融政策委員9人のうち6人の賛成多数で1%への利上げを決定。マン委員、ハスケル委員、ソーンダーズ委員の3人が1.25%への引き上げを提唱した。
ロイターがまとめたエコノミスト予想は、政策委員1人が利上げ自体に反対し、8対1で1%への利上げが決定されるというもの。実際の結果よりもハト派的な動きが予想されていた。
中銀は保有資産の圧縮に向けた方針も表明。保有国債の売却計画の策定に着手し、8月の会合で示した上で、その後の会合で売却を開始するか決定するとした。
中銀は、中国の新型コロナウイルス感染拡大抑制に向けたロックダウン(都市封鎖)の影響で供給網が一段の制約を受け、インフレ圧力が高まることを懸念していると表明。ベイリー総裁は、中銀は綱渡りを迫られているとの見方を示した。
中銀によると、大部分の政策担当者が「ある程度の追加引き締めが、向こう数カ月でなお適切になる可能性がある」との考えを共有。声明から、今後の利上げの規模を表す「控えめな(modest)」という言葉が削除された。
このガイダンスについても見解は分かれ、政策委員2人が経済成長に対するリスクを踏まえると文言は強すぎるとの見解を示した。
<インフレ見通し引き上げ、成長予測下方修正>
英国の3月の消費者物価指数(CPI)は前年比7.0%上昇し、1992年3月以来30年ぶりの高い伸びとなった。
目標の2%をすでに大幅に超えているが、中銀は物価見通しを上方修正し、今年第4・四半期に10%を超えると予想。これまでは4月に約8%に上昇し、ピークを付けるとの見通しを示していた。
中銀は、英国は家庭用エネルギー料金に上限を設けているため、インフレがピークを付けるのは他の先進国より遅くなると予想。燃料関連コストは4月に54%上昇したが、中銀は10月にさらに40%上昇するとしている。
長期的には、インフレ率は向こう3年で1.3%に低下するとの見通しを示した。
成長率見通しについては、22年は3.75%と、従来に見通しを維持。ただ、23年は0.25%のマイナス成長に陥るとし、従来のプラス1.25%成長から下方修正。24年はプラス0.25%とし、プラス1.0%から下方修正した。
今年第1・四半期は予想より堅調だったとしながらも、第2・四半期は停滞すると予想。第4・四半期の成長率は、エネルギー価格の上昇で約1%押し下げられるとの見方を示した。
ベイリー総裁は「きわめて弱い予測で、極めて急速な減速だ」「リセッション(景気後退)の定義には当てはまらないが、極めて急速な減速となる」と指摘。物価上昇で弱者が最も大きな影響を受けるため、「大きく懸念」していると述べた。
<「非常に慎重な」利上げ必要>
金融政策委員会後、ベイリー総裁は英BBCで、インフレ高進と成長鈍化の双方を考慮すると、金融政策に非常に慎重なアプローチを取り入れる必要があると指摘。インフレ高進と生活費へのデフレ効果とのバランスを取らなければならないとした。
「われわれが歩んでいる道は非常に狭いため、政策金利をさらに引き上げる必要がある場合もあるが、それは率直に言って経済がどのように展開していくかによる」とし、「われわれは金融政策の道筋に非常に慎重になっている」と語った。
短期金融市場が織り込む、英中銀が6月に1.25%に利上げする確率は86%。また、英中銀は政策金利を年末までに2.0─2.25%に引き上げると見込まれている。