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アングル:リチウム生産の「グリーン」技術、巨額投資でも難題

発行済 2022-04-10 08:08
更新済 2022-04-10 08:09
© Reuters.  4月7日、EVなどのバッテリー材料として欠かせないレアメタルのリチウムで、革新的な生産技術「直接リチウム抽出法(DLE)」が注目を集め、企業や米エネルギー省が開発に多額

[7日 ロイター] - 電気自動車(EV)などのバッテリー材料として欠かせないレアメタル(希少金属)のリチウムで革新的な生産技術が注目を集め、鉱業大手のリオ・ティントや米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)、さらには米エネルギー省までもが開発に多額の資金を投じている。

「直接リチウム抽出法(DLE)」と呼ばれるこの新技術が商用化されれば、従来技術よりも環境負荷をはるかに抑えて生産を拡大することが可能になる。まずは商用規模の運用を立証することが先決のようだ。

DLEはフィルターや膜、セラミックビーズなどの装置を使い、かん水からリチウムを抽出する。装置は通常、小さな倉庫に収容することが可能だ。露天掘りや蒸発池などによる今の方式は、何面ものフットボール競技場に匹敵する広いスペースが必要で、地域住民からの支持も得にくい。

しかし、DLEは飲用水と電力を大量に使う場合が多く、これまで商用規模での運用は皆無だ。

世界中の自動車メーカーや鉱山会社、投資家が、EV革命に欠かせないリチウムの大部分が供給可能になるとして、DLE関連企業に何百万ドルもの資金を注ぎ込んでいる。

グランホルム米エネルギー長官は3月に開かれたDLEに関する会合で「大変革をもたらす技術だ」と持ち上げた。

エネルギー省は、著名投資家のウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハザウェイがカリフォルニア州の塩水内陸湖、ソルトン湖でDLE技術の試験を行うのに1500万ドルを助成したほか、他のDLE開発プロジェクトへの資金提供も検討している。

DLE技術は、リチウム生産世界最大手のアルベマールなど既存の鉱山業者や、リチウム・アメリカズなどこれからこの業界に打って出ると見込まれる企業にとって、クリアすべき難題だ。

アルベマールは多様なDLE技術を研究しているが、同社の幹部はDLEが特定のリチウム鉱床向けに設計された場合に最も効果的だと述べており、盛り上がりに水を差しそうだ。

DLE技術の中には水を大量に使用するものがあり、その点が問題視されている。GMがソルトン湖から「かなりの量」のリチウムを生産するために利用している技術では、リチウム1トンを生産するのに10トンの水が使われる。

この技術を開発したライラック・ソリューションズによると、脱塩プラントを使えば、飲用水の利用を回避できるという。ライラックは独BMWと、米マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏が設立した非営利団体「ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ」から支援を受けている。

空売りで知られるヒンデンブルグ・リサーチは今年2月に公表したリポートで、スタンダード・リチウムが米アーカンソー州で進めるDLEプロジェクトについて、化学大手コーク・インダストリーズと同業ランクセスが支援しているにもかかわらず、機能するかどうかさえ疑わしいとの見方を示した。

ヒンデンブルグのネイサン・アンダーソン氏は「DLEはほとんどの人にとって、希望と祈り、神頼みの技術の1つで、ゆえに株を売りたい人々にとっては肥沃な土地だ」と皮肉った。

このリポートを受けてスタンダードは1日で時価総額が3億ドル余りも吹き飛び、DLE開発の動きを巡り不安が広がった。スタンダードはリポートに反論、株価は下げ幅を縮小している。

<懐疑派>

DLEに重点的に取り組んでいる企業は世界中で数十社に上り、独自の技術を持つ企業、かん水が豊富な鉱区を持つ企業、そしてその両方を持つ企業などが混在している。

パナソニックと組んでDLE技術を開発しているシュルンベルジェのオリビエ・ル・プェッシュ最高経営責任者(CEO)は「DLEは今一番注目を集めている話題になった」と語った。

同社は米EV大手テスラが米ネバダ州で運営する「ギガファクトリー」に製品を供給したいと考えているが、飲用水を使わずにリチウムを生産する方法を見つける必要があると認めている。

DLEにはグリーン化を目指す米国と世界の野心的取り組みの成否がかかっている。エネルギー省によると、米国のリチウム鉱床の少なくとも70%はかん水の形で存在している。

また、DLEは露天掘り鉱山が強い反対を受けている地域でも、生産できる可能性がある。

ドイツで自動車メーカー向けにリチウム生産を計画しているバルカン・エナジーのホルスト・クロイターCEOは「EVへの移行が加速する中、われわれは一緒に成長することが可能だ」と述べた。

エナジー・エクスプロレーション・テクノロジーズ(エナジーX)は、膜を使ってリチウムをろ過するDLE技術を開発した。ただ、ティーグ・イーガンCEOによると、同社の膜技術は場合によって他のDLE技術と組み合わせる必要があるかもしれないという。

© Reuters.  4月7日、EVなどのバッテリー材料として欠かせないレアメタルのリチウムで、革新的な生産技術「直接リチウム抽出法(DLE)」が注目を集め、企業や米エネルギー省が開発に多額の資金を投じている。写真は、米投資会社バークシャー・ハザウェイの子会社がDLE技術の試験を行う、カリフォルニア州のソルトン湖に映る夕日。3月15日撮影(2022年 ロイター/David Swanson)

「当社の膜技術は非常に優れているが、DLEの技術を1つに絞ることはできない」と言う。エナジーXは2023年半ばまでの株式公開を目指している。

米ネバダ州でDLE技術の利用を計画しているルナ・リチウムのエミリー・ハーシュCEOは「DLEは魔法のつえではない。だが、使える手法の中では極めて有益だ」と話した。

(Ernest Scheyder記者)

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