[東京 2日 ロイター] - 日本製鉄の宮本勝弘副社長は、水素還元法による製鉄など脱炭素技術の開発を加速させる考えを示した。このため、研究開発費もこれまでより増やし、環境対策に積極投入していく。同社は、3月中に具体策を公表する予定にしている。
宮本副社長は「水素還元を含めて、相当エネルギーをかけて、脱炭素に研究開発の資源を入れていく」と述べた。政府が設けた2兆円の基金も活用し、環境対策に振り向ける比率を高めるだけでなく絶対額も増やしていく考え。
鉄鋼業は日本の二酸化炭素(CO2)排出量の14%を占めており、政府が掲げる2050年のカーボンゼロに向けて、対策が求められている。水素還元法は、還元の工程で石炭の代わりに水素を利用して鉄をつくる方法。
CO2排出対策としては、水素還元法や二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)のように高炉を使いながら発生するCO2を抑制するほか、電炉も活用する。宮本副社長は、例えば電炉に置き換えた方が経済合理性がある場合、高炉の改修時に電炉に置き換えることもあるかもしれないと指摘した。
その上で「(原子力や再生可能エネルギーに基づく)ゼロエミッション電源が経済的な価格で提供されることが重要。国家戦略としてそれを作り込まなければならない」と指摘し、原子力発電の必要性にも言及した。
環境省や経済産業省でカーボンプライシング導入などに関して議論が進んでいるが「研究開発費も相当かけ設備投資もかけようとしている中で、その原資を最初から税金で奪ってしまうと、肝心の省CO2ができなくなる。それはちょっと違う、ということは分かってもらえると思う」と述べ、改めて反対の意向を示した。
<来期は3期ぶりの最終黒字へ>
宮本副社長は来年度について「足元は世界中で鋼材の需給がそれなりに締まっていて、価格もかなり上昇している状況。世界中で経済対策を打っており、この状態が続くのかなとみている」と見通しを示した。
同社の今下期の事業利益は1365億円で、一時的な利益を除くと1250億円程度になる。来年度は、グループ会社を含めた量の回復や出遅れている国内マージンの改善、新型コロナ対策費の減少などが見込めるため「今下期の事業利益の2倍の2500億円に対して増益を目指す」と述べた。この事業利益水準から考え、最終利益も「十二分に黒字になる」と、3期ぶりの黒字に自信を示した。
コロナ前の2019年度に9843万トンあった全国粗鋼生産は、今期、コロナの影響で8260万トン程度に落ち込む。来期は8500―9000万トン程度に回復するとみているが、将来的には、人口減の国内の消費5000万トン、自国産化が進むために輸出3000万トンの計8000万トン程度に減少していく方向だと指摘した。
インタビューは26日に実施した。
(清水律子 大林優香 編集:田中志保)