[日本インタビュ新聞社] - マーチャント・バンカーズ<3121>(東証スタンダード)はマーチャント・バンキング事業として不動産・企業投資関連などを展開している。不動産投資関連で安定的収益源となる資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、新規分野としてブロックチェーン・NFTプラットフォーム関連、娯楽TVメディア・コンテンツ関連、ホームセキュリティ関連、EV充電器関連、プラスチック循環再生関連などにも積極展開している。24年10月期(23年10月期は決算期変更で7ヶ月決算)は大幅黒字転換・増配予想としている。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。株価は急伸した23年12月の昨年来高値圏から急反落の形となったが、売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。
■マーチャント・バンキング事業が主力
マーチャント・バンキング事業(不動産投資事業、企業投資事業、ブロックチェーン・テック事業)、およびオペレーション事業(ボウリング場・服飾雑貨店の運営)を展開している。23年10月期(決算期変更で7ヶ月決算)のセグメント別営業利益(全社費用等調整前)は、マーチャント・バンキング事業が1億82百万円、オペレーション事業が0百万円だった。なお給食業務受託は23年3月末に終了、インターネットカフェ運営は23年5月に終了している。成長に向けた基本戦略としては、不動産投資関連で安定的収益源となる資産性の高い収益不動産の取得を推進するとともに、新規分野への展開を積極推進している。
なお、23年3月末時点において流通株式比率がスタンダード市場上場維持基準に適合しない状況となったため、23年6月30日付で上場維持基準への適合に向けた計画書を作成・開示した。計画期間を24年3月末までとして、一部大株主が保有する同社株式の売却による保有比率引き下げについて協議するとともに、業績の向上や積極的な情報開示などを推進する方針としている。
■不動産・企業投資関連
マーチャント・バンキング事業では不動産投資関連および企業投資関連を展開している。
不動産投資関連は保有物件売却による売上利益の積み上げと、物件購入による安定的収益力の強化を推進している。主にネット利回り5%以上を期待できる大都市圏の賃貸用マンションなどの優良物件を保有し、安定収益基盤となる年間家賃収入10億円を目標に掲げて優良不動産取得を強化している。
事業用賃貸マンションの直近の取得としては23年6月に3物件(埼玉県北本市、埼玉県上尾市、大阪府八尾市)、23年9月に1物件(大阪府富田林市)、23年9月に1物件(神戸市垂水区)、23年10月に1物件(川崎市麻生区)、23年11月に4物件(大阪市平野区、名古屋市熱田区、川崎市麻生区、埼玉県川口市)、23年12月に2物件(名古屋市天白区、名古屋市港区)を取得した。保有物件数は29物件、取得価額合計は158億円程度、年間家賃収入は約11億円体制となり、目標に掲げていた年間家賃収入10億円体制を達成した。
また新築マンション開発事業に取り組む方針で、第1号案件として大阪府堺市にマンション開発用地を取得し、22年5月には田中土建工業と業務提携した。23年7月には建設業への取組強化に向けて、業務提携先であるアビスジャパン(持分法適用関連会社で病院・介護施設などの内装工事等各種工事を展開、太陽光発電関連でも提携)より1級施工管理技士の資格を持つ萩原茂氏を建築事業部の責任者として招聘した。
企業投資関連は、投資先とともに企業価値を創造するハンズオン型の投資を行い、バリューアップによるエグジットを目指す。投資実績としては、ブロックチェーンプラットフォーム開発のアーリーワークス、デジタルマーケティング支援のポイントスリー、ブライダル・ホテル運営のホロニック、見守り型介護ロボット開発のIVホールディングスなどがある。
22年2月には中小型の上場株式を対象とする投資の強化を発表した。第1号案件としてZOA<3375>の株式10万株(議決権総数に対する割合6.88%)を取得した。23年3月には、政府・軍事・航空宇宙・金融など高度な情報セキュリティニーズを持つ顧客をターゲットにセキュリティチップを開発・製造する台湾Enova Technology社に資本参加した。
23年6月には、香港のコングロマリットである新世界発展でグループの投資部門の責任者として活躍してきたチャン・チン氏を取締役として招聘し、香港子会社MBK ASIA LIMITEDを拠点にした投資関連事業を強化した。23年8月には香港の子会社MBK ASIA LIMITEDが、香港で主に法人向けに税務会計サービスを提供するCAC社と業務提携した。香港における投資事業を強化する。
■新規事業分野を強化
新規分野として、ブロックチェーン・NFTプラットフォーム関連、娯楽TVメディア・コンテンツ関連、ホームセキュリティ関連、EV充電器関連、プラスチック循環再生関連などにも積極展開している。
ブロックチェーン関連では、STO(Security Token Offering)を活用したサービスとして、20年2月にサービス開始したエストニア暗号資産交換所ANGOO FinTech関連、海外投資家向けを中心とする日本不動産プラットフォームなどの不動産テック関連、医療エコシステムのメディテックプラットフォーム関連、NFT(Non―Fungible Token=非代替性トークン)プラットフォーム関連、娯楽TVメディア・コンテンツ関連などを展開している。
海外(欧州)では20年10月に子会社BFHへANGOO FinTech運営を移管してエストニアでの事業統括会社と位置付けた。23年7月にはエストニアの子会社EJTCについて、バルト3国で運営する証券取引所Nasdaq Baltic上場(21年3月上場)のメリットを活かし、エストニアを拠点とするEUでの事業展開により、企業価値向上に向けた取組を強化する方針とリリースした。
子会社のMBKバイオテック(MBKブロックチェーンが22年4月に商号変更)は、21年3月にブロックチェーン不動産取引プラットフォーム「MBK Realty」を発表、21年4月にお宝グッズNFT化・売買プラットフォーム「NFTバンカーズ」を発表、21年11月に「NFTバンカーズ」をリニューアルした。子会社ケンテンが運営するショッピングサイト「KENTEN×lafan」内のNFTコーナーも「NFT LaFan」としてリニューアルした。
22年8月には、娯楽TVが設立した円谷メディア・コンテンツの株式を譲り受けて子会社化し、商号を娯楽TVメディア・コンテンツに変更(22年9月に娯楽TVメディア・コンテンツの株式をエストニアの子会社EJTC社に譲渡し、娯楽TVメディア・コンテンツを孫会社化)し、キャラクターおよびコンテンツビジネスへの展開を開始した。22年10月には娯楽TVメディア・コンテンツが公式キャラクター「マーチャントマン」のテーマソングを完成した。23年2月には「マーチャントマン 誰でもわかる開運・道徳本」が幻冬舎より発売された。
23年1月には子会社MBKバイオテックが、おそうじ本舗川崎三田店の事業を承継してMBKハウスマネジメントに商号変更し、おそうじ本舗のFCとしてハウスクリーニング事業を核に不動産関連の受託型サービスを開始した。23年4月には、MBKバイオテックが業務提携しているアビスジャパンなどの工事業者を窓口に、ホームセキュリティ事業への取組を開始すると発表し、防犯カメラ・防犯セキュリティ機器の開発・製造・販売を行う塚本無線と業務提携した。
23年8月には、法人のITサポートを展開し、セコムの防犯カメラ設置実績も豊富なDコーポレーションと、防犯カメラ設置ならびにIT関連事業の分野で業務提携した。ホームセキュリティ事業において防犯カメラ設置工事をDコーポレーションに委託する。
23年7月には、EV充電器設置事業への取組を開始すると発表した。第1弾として、自社保有するマンションの駐車場や投資先であるホロニックが運営するホテルの駐車場への設置から着手し、新たな設置場所を確保しながら事業拡大を目指す。また23年7月には、太陽光パネル設置事業への取組を開始すると発表した。自社保有マンションの屋上などへ太陽光パネル設置し、蓄電や売電によって収益確保を目指す。さらにアビスジャパンとの連携によって介護施設・病院などへの設置拡大も目指すとしている。
23年12月には、プラスチック循環再生事業を手掛ける循環資源ホールディングスと資本業務提携(第三者割当増資により5.77%出資)した。関東圏での再生油生成プラント設置は24年4月スタートを目標としている。また23年12月には、オリエントコーポレーションと加盟店契約を締結した。ホームセキュリティ事業、建設業、EV充電器設置事業、太陽光パネル設置事業、プラスチック循環再生事業などの分野において、オリエントコーポレーションの多彩な金融サービスを活用する。
■オペレーション事業は収益改善を推進
オペレーション事業は、岐阜県土岐市の土岐ボウリング運営、子会社ケンテンの服飾雑貨店運営・ネット通販を展開している。子会社ケンテンは20年4月にラファンと協業してネット販売を強化し、メタバース空間にバーチャルショッピングサイト「KENTEN×LaFan」を出店している。
■24年10月期大幅黒字転換予想
24年10月期(12ヶ月決算、23年10月期は決算期変更で7ヶ月決算)の連結業績予想は、売上高が30億円、営業利益が6億円、経常利益が4億円、親会社株主帰属当期純利益が2億60百万円としている。配当予想は23年10月期比1円増配の2円(期末一括)としている。
マーチャント・バンキング事業の計画は売上高が16億50百万円、セグメント利益(全社費用等調整前営業利益)が4億10百万円としている。年間家賃収入10億円体制を達成したことに加え、保有する賃貸用不動産の売却については最低3物件の売却を見込んでいる。オペレーション事業の計画は売上高が1億20百万円、利益が15百万円としている。子会社ケンテンのアパレル・雑貨等販売プロモーション事業の回復を見込んでいる。積極的な事業展開で収益拡大基調だろう。
■株価は売り一巡
株価は急伸した23年12月の昨年来高値圏から急反落の形となったが、売り一巡感を強めている。出直りを期待したい。1月25日の終値は292円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS8円88銭で算出)は約33倍、今期予想配当利回り(会社予想の2円で算出)は約0.7%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS137円64銭で算出)は約2.1倍、そして時価総額は約86億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)