■業績動向
1. 2018年5月期の業績概要
E・Jホールディングス (T:2153)の2018年5月期の連結業績は、売上高で前期比12.4%増の25,819百万円、営業利益で同25.1%増の1,594百万円、経常利益で同30.1%増の1,639百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で966百万円(前期は293百万円の損失)となった。
売上高は2期連続で過去最高を更新し、経常利益は4期ぶりの増益、親会社株主に帰属する当期純利益は2期振りに黒字に転換するなど業績の回復が鮮明となった決算となった。
また、期初会社計画比でも親会社株主に帰属する当期純利益を除くすべての項目で上回って着地している。
受注高については海外案件の減少が影響して前期比2.7%減の25,704百万円となったものの、前期からの繰越業務量の増加と期中における国内受注が堅調に推移したことで売上高は同12.4%増と好調に推移した。
また、売上原価率は増収効果に加えてグループ全体で生産性向上に取り組んだ効果により、前期比1.0ポイント低下の70.8%となった。
生産性向上施策としては、グループ内企業の連携による生産協力体制の強化を図ったこと、プロジェクト進捗管理の徹底とサービス品質の維持向上を図りながら短納期化に取り組んだこと、CIM※導入による業務効率の更なる向上に取り組んだこと等が挙げられる。
※CIM(Construction Information Modeling/Management)は、建設プロジェクトにおいて計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図ることを目的としたITシステムのことで、国交省でも公共工事等のコスト低減を目的に、CIM導入ガイドラインを策定している。
一方、販管費率は若手人材の積極的な採用(グループで約60名増)を進めたことで、人件費が約5億円増となったことを主因に、前期の22.7%から23.0%へと上昇したが原価率の改善効果が上回り、営業利益率では前期の5.5%から6.2%に上昇した。
親会社株主に帰属する当期純利益に関しては、前期に特別損失として計上した訴訟損失引当金繰入額1,490百万円※がなくなったことにより大きく改善している。
会社計画を若干下回ったのは、法人税調整額が想定を上回ったことによる。
※(公財)宮崎県環境整備公社から1999~2002年にかけて子会社のエイト日本技術開発が受注した廃棄物処理施設「エコクリーンプラザみやざき」の一部である浸出水調整池の完成後の損傷及び浸出水の塩化物処理能力の不足が判明した件に関して、同公社より2010年にエイト日本技術開発及び工事施工会社3社に対して、1)同施設の完成後の損傷について1,014百万円の損害賠償、2)エイト日本技術開発に対して浸出水の塩化物処理能力の不足について573百万円(2015年に705百万円に変更)の損害賠償を求められていた裁判で、2017年5月にエイト日本技術開発に対して1,490百万円の賠償金を同公社に対して支払う判決が出た。
2017年6月にエイト日本技術開発は判決を不服として福岡高等裁判所に控訴しており(同公社も工事施工会社3社への請求が棄却されたことを不服として同様に控訴している)、現在も審理中となっている。
2. 受注、売上高の動向
(1) 受注高の動向
2018年5月期の受注高は前期比2.7%減の25,704百万円となった。
内訳を発注機関別で見ると、中央省庁が前期比9.0%増、市町村が同7.0%増、民間企業が同24.4%増の3,397百万円と増加した一方で、都道府県が同11.8%減、海外が同77.6%減となった。
都道府県については前期の水準が高かった反動によるもので、2期前の水準と比較すれば増加している。
一方、海外の大幅減についてはJICAの予算縮小が影響したと見られる。
民間向けについては、高速道路運営会社向けを中心に2ケタ成長が続いており、全体に占める構成比率で見ると2015年5月期の6.4%から2018年5月期は13.2%まで上昇しており、好調ぶりが際立っている。
また、地域別の受注状況で見ると、前掲したとおり中国エリアが前期比4.7%増と堅調に推移したほか、四国、近畿エリアもそれぞれ8.3%増、16.7%増と伸長したが、その他の地域については減少しており、なかでも海外が大きく減少したことが全体の受注減の要因となった。
なお、受注残高については前期末比0.8%減の14,149百万円と若干減少したものの、引き続き高水準をキープしている。
同社が重点分野と位置付ける5分野の受注状況について見ると、合計では前期比13.1%減の9,168百万円と2期ぶりに減少に転じ、構成比率についても39.9%から35.7%へと低下した。
都市・地域再生分野が前期比35.8%増と唯一増加したものの、環境・エネルギー、自然災害リスク軽減、インフラマネジメント、情報・通信の4分野についてはそれぞれ減少した。
このうち最も規模の大きい自然災害リスク軽減分野については、東北震災復興関連や熊本震災復興関連の受注ピークアウトにより、前期比で4.7%減となった。
また、技術提案型業務の受注についても前期比7.0%減の8,237百万円と減少している。
受注残を多く抱える状況下において、人的リソースの観点から採択の可能性が高い案件に絞り込んだことが要因となっている。
なお、技術提案型業務の採択件数は前期比9.3%減の243件と減少したが、採択率は前期の20.1%から21.6%と上昇に転じている。
(2) 売上高の動向
売上高を発注者機関別で見ると、都道府県が前期比20.0%増、海外が同17.9%増と2ケタ伸長となったのに加え、中央省庁が同7.0%増、市町村が同8.1%増、民間が同9.8%増とすべての部門で増収となった。
都道府県については前期からの繰越業務の増加が増収要因となっている。
また、地域別では熊本復興関連のピークアウトにより九州が前期比6.3%減となったのを除いて、すべての地域で増収となった。
なかでも、近畿エリアが同23.6%増、中国エリアが同17.2%増、関東エリアが同14.0%増とそれぞれ2ケタ伸張し、海外についても同17.9%増と着実に増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
1. 2018年5月期の業績概要
E・Jホールディングス (T:2153)の2018年5月期の連結業績は、売上高で前期比12.4%増の25,819百万円、営業利益で同25.1%増の1,594百万円、経常利益で同30.1%増の1,639百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で966百万円(前期は293百万円の損失)となった。
売上高は2期連続で過去最高を更新し、経常利益は4期ぶりの増益、親会社株主に帰属する当期純利益は2期振りに黒字に転換するなど業績の回復が鮮明となった決算となった。
また、期初会社計画比でも親会社株主に帰属する当期純利益を除くすべての項目で上回って着地している。
受注高については海外案件の減少が影響して前期比2.7%減の25,704百万円となったものの、前期からの繰越業務量の増加と期中における国内受注が堅調に推移したことで売上高は同12.4%増と好調に推移した。
また、売上原価率は増収効果に加えてグループ全体で生産性向上に取り組んだ効果により、前期比1.0ポイント低下の70.8%となった。
生産性向上施策としては、グループ内企業の連携による生産協力体制の強化を図ったこと、プロジェクト進捗管理の徹底とサービス品質の維持向上を図りながら短納期化に取り組んだこと、CIM※導入による業務効率の更なる向上に取り組んだこと等が挙げられる。
※CIM(Construction Information Modeling/Management)は、建設プロジェクトにおいて計画、調査、設計段階から3次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産システムの効率化・高度化を図ることを目的としたITシステムのことで、国交省でも公共工事等のコスト低減を目的に、CIM導入ガイドラインを策定している。
一方、販管費率は若手人材の積極的な採用(グループで約60名増)を進めたことで、人件費が約5億円増となったことを主因に、前期の22.7%から23.0%へと上昇したが原価率の改善効果が上回り、営業利益率では前期の5.5%から6.2%に上昇した。
親会社株主に帰属する当期純利益に関しては、前期に特別損失として計上した訴訟損失引当金繰入額1,490百万円※がなくなったことにより大きく改善している。
会社計画を若干下回ったのは、法人税調整額が想定を上回ったことによる。
※(公財)宮崎県環境整備公社から1999~2002年にかけて子会社のエイト日本技術開発が受注した廃棄物処理施設「エコクリーンプラザみやざき」の一部である浸出水調整池の完成後の損傷及び浸出水の塩化物処理能力の不足が判明した件に関して、同公社より2010年にエイト日本技術開発及び工事施工会社3社に対して、1)同施設の完成後の損傷について1,014百万円の損害賠償、2)エイト日本技術開発に対して浸出水の塩化物処理能力の不足について573百万円(2015年に705百万円に変更)の損害賠償を求められていた裁判で、2017年5月にエイト日本技術開発に対して1,490百万円の賠償金を同公社に対して支払う判決が出た。
2017年6月にエイト日本技術開発は判決を不服として福岡高等裁判所に控訴しており(同公社も工事施工会社3社への請求が棄却されたことを不服として同様に控訴している)、現在も審理中となっている。
2. 受注、売上高の動向
(1) 受注高の動向
2018年5月期の受注高は前期比2.7%減の25,704百万円となった。
内訳を発注機関別で見ると、中央省庁が前期比9.0%増、市町村が同7.0%増、民間企業が同24.4%増の3,397百万円と増加した一方で、都道府県が同11.8%減、海外が同77.6%減となった。
都道府県については前期の水準が高かった反動によるもので、2期前の水準と比較すれば増加している。
一方、海外の大幅減についてはJICAの予算縮小が影響したと見られる。
民間向けについては、高速道路運営会社向けを中心に2ケタ成長が続いており、全体に占める構成比率で見ると2015年5月期の6.4%から2018年5月期は13.2%まで上昇しており、好調ぶりが際立っている。
また、地域別の受注状況で見ると、前掲したとおり中国エリアが前期比4.7%増と堅調に推移したほか、四国、近畿エリアもそれぞれ8.3%増、16.7%増と伸長したが、その他の地域については減少しており、なかでも海外が大きく減少したことが全体の受注減の要因となった。
なお、受注残高については前期末比0.8%減の14,149百万円と若干減少したものの、引き続き高水準をキープしている。
同社が重点分野と位置付ける5分野の受注状況について見ると、合計では前期比13.1%減の9,168百万円と2期ぶりに減少に転じ、構成比率についても39.9%から35.7%へと低下した。
都市・地域再生分野が前期比35.8%増と唯一増加したものの、環境・エネルギー、自然災害リスク軽減、インフラマネジメント、情報・通信の4分野についてはそれぞれ減少した。
このうち最も規模の大きい自然災害リスク軽減分野については、東北震災復興関連や熊本震災復興関連の受注ピークアウトにより、前期比で4.7%減となった。
また、技術提案型業務の受注についても前期比7.0%減の8,237百万円と減少している。
受注残を多く抱える状況下において、人的リソースの観点から採択の可能性が高い案件に絞り込んだことが要因となっている。
なお、技術提案型業務の採択件数は前期比9.3%減の243件と減少したが、採択率は前期の20.1%から21.6%と上昇に転じている。
(2) 売上高の動向
売上高を発注者機関別で見ると、都道府県が前期比20.0%増、海外が同17.9%増と2ケタ伸長となったのに加え、中央省庁が同7.0%増、市町村が同8.1%増、民間が同9.8%増とすべての部門で増収となった。
都道府県については前期からの繰越業務の増加が増収要因となっている。
また、地域別では熊本復興関連のピークアウトにより九州が前期比6.3%減となったのを除いて、すべての地域で増収となった。
なかでも、近畿エリアが同23.6%増、中国エリアが同17.2%増、関東エリアが同14.0%増とそれぞれ2ケタ伸張し、海外についても同17.9%増と着実に増加した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)