[ソウル 22日 ロイター] - 北朝鮮の朝鮮中央通信(KCNA)は22日、金正恩朝鮮労働党総書記が近く退任する韓国の文在寅大統領と親書を交換し、関係改善に向けた文氏の努力に謝意を表明したと報じた。
韓国大統領府は、両氏が「友好の親書」を交換したことを確認した。
KCNAによると、文氏は20日に送った書簡で、「困難な状況」の中でも、2018年の南北首脳会談で合意した共同宣言に基づき統一の礎を築くため引き続き努力すると約束した。
文氏は「対立の時代」は対話により克服されるべきだと述べ、南北問題は次期韓国政権の新たな課題になると伝えた。大統領府報道官が会見で明らかにした。文氏は、米朝間の非核化協議の早期再開にも期待を示したという。
KCNAによると、金氏は21日の返信で、18年の「歴史的」な会談が人民に「将来への希望」を与えたと述べた。双方が「希望を持ってたゆまぬ努力」をすれば、南北関係は発展するとの見解で両氏は一致したという。
また、文氏が国家の大義のため任期末まで努力したことに金氏は謝意を示した。
KCNAは親書交換について、両氏の「深い信頼」を表すものと伝えた。
5月10日に就任する韓国の尹錫悦次期大統領は、北朝鮮との対話に前向きとしつつも、同国の挑発行為に対抗するためには軍事抑止力の拡大や米国との関係強化が必要との考えを示している。
アナリストらは北朝鮮が真に関係改善を意図しているか疑問視する。元北朝鮮担当の米国家情報当局者で、現在はシンクタンク、アトランティック・カウンシル上級研究員のマーカス・ガーラウスカス氏は「尹氏やバイデン米大統領への歩み寄りというより、北朝鮮のさらなる挑発を尹氏の責任にするための口実作りに見える」と述べた。
北朝鮮大学院大学(ソウル)のヤン・ムジン教授は、南北協力への扉は依然開かれており、北朝鮮が7回目の核実験やその他の行動に踏み切るかどうかは新政権の姿勢次第、というシグナルを尹氏に送った可能性があるとした。
新政権で北朝鮮との対話を担う統一相に就く権寧世(クォン・ヨンセ)氏は記者団に対して、親書交換は「好ましいこと」と評価し、金氏は南北関係について「肯定的」見解を示したと述べた。