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霞ヶ関キャピタル Research Memo(7):ポストコロナを見据え、物流施設開発事業を大幅に拡大(3)

発行済 2022-05-11 15:07
更新済 2022-05-11 15:15
© Reuters.
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■事業別の取り組み

3. その他事業
(1) レジデンスファンド事業
霞ヶ関キャピタル (TYO:3498)は、新規事業としてレジデンスファンド事業に参入した。
1号案件として、2022年1月に、三井物産デジタル・アセットマネジメントと都心賃貸マンション16件を組み込む私募ファンドを組成し、運用を開始した。
レジデンスファンド事業参入の背景には、賃貸住宅市場の需要が回復傾向であること、低金利環境が継続するなかで国内外投資家の物件取得意欲は旺盛で、取引価格水準が高値圏で推移していることがある。
物流施設、ホテル、再生可能エネルギー施設に続く新規アセットとして賃貸住宅に注目しており、レジデンスファンド組成を積極的に進めることで、AUM拡大を目指す。
なお、レジデンスファンド事業は同社のビジネスモデルである成果報酬志向型ファンドマネージャーとしての収益貢献を想定していることから、将来にわたって同社の業績及び企業価値の向上に寄与すると考えられる。
さらに、同社ではレジデンスファンドに入っている物件をシードアセットに、デジタル証券として小口化投資商品の開発運用の分野への参入を目指しており、ファンドの規模拡大と魅力的な投資商品の提供を目指す考えだ。


(2) ヘルスケア関連施設開発事業
同社は、2021年12月にヘルスケア事業推進部を新設し、ヘルスケア関連施設開発事業に参入した。
1号案件として札幌市でヘルスケア関連施設(ホスピス住宅)の開発用地を取得・着工済み、2号案件も着手済みで、ヘルスケア関連施設のAUM拡大にも注力する方針だ。
事業展開の背景には、ヘルスケア関連施設の建替えニーズ増加と拡大傾向にあるヘルスケアマーケットがある。
ヘルスケア関連施設は老朽化等により建替え時期が近づいており、計画的なヘルスケア関連施設の開発ニーズが高まっている。
また、高齢化の進行と在宅での看取りが推進されたことにより、ヘルスケアマーケットは拡大傾向にある。
国土交通省が2021年3月に策定した「住生活基本計画」では、高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合を2030年までに4%まで引き上げる成果指標方針が示されたが、このためには約60万戸分の高齢者住宅整備が必要となる。
したがって、同社のヘルスケア関連施設開発事業は、社会的課題の解決と景気動向に収益が左右されにくいアセットへの投資機会を提供するもので、高い社会性を持つと言えよう。
加えて、優良なオペレーターとの固定・長期の賃貸借契約により、安定した不動産キャッシュ・フローが期待できる。
同社は従来の不動産ファンドやJ-REITが主に取り組んできた「介護」という切り口だけではなく、「医療」という切り口でも展開する方針で、ホスピス施設やショートステイ型療養施設を全国で開発する計画である。
なお、2022年8月期は同事業の業績寄与は見込んでいないものの、2023年8月期以降の寄与を目指している。


(3) 再生可能エネルギー開発事業
国内再生可能エネルギー市場は、固定価格買取制度※の下での買取実績及び設備認定容量が引き続き増加基調にある。
しかし、事業化される見込みの薄い多数の太陽光発電施設等の設備認定案件により送電網が押さえられ、一部地域においては新規の有望案件の事業推進が困難になる状況が生じていた。
この状況を踏まえ、経済産業省が「再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会」を設置するなど、再生可能エネルギーの大量導入に伴い顕在化しはじめた系統制約や調整力確保、国民負担の軽減等の新たな課題の解決に向けた議論も本格化している。


※太陽光発電等で発電した電気をすべて、固定価格で電力会社が買い取る制度。



資源エネルギー庁「エネルギー基本計画の見直しに向けて」及び「エネルギー基本計画(案)の概要」によれば、国内総発電量に占める再生可能エネルギー発電の構成比を、2018年度の17%から2030年度には36~38%に拡大する目標を掲げている。
また、再生可能エネルギー発電のうち太陽光発電の構成比を、2018年度の6.7%から2030年度には14.0~16.0%程度に拡大する計画となっているものの、成熟市場であることから採算が取れにくくなっている。
これに対して風力発電の構成比については、2018年度の0.7%から2030年度には5.0%程度へと、比率は低いものの成長率は最も高くなる計画である。
再生可能エネルギー導入に対する政府の支援姿勢は継続されていることから、国内の再生可能エネルギー市場はより一層拡大していく見通しであるが、これに加えて地球温暖化に対応する世界の潮流もあり、安心・安全な再生可能エネルギーへのシフトが政府の計画以上のペースで進むことも予想される。


同社では、北海道から鹿児島県まで全国25件の太陽光発電施設を開発し売却済である。
2021年4月に北海道松前郡松前町で稼働済みの小型陸上風力発電施設8基及び開発用地を取得したことで、同社本社オフィスの使用電力量をカバーする年間電力量となった。
また、これまでのノウハウを生かし、大型風力発電施設開発への参画も予定しており、今後はオフィスだけでなく、保有物件や開発物件にも対象範囲を拡大する予定だ。
なお、新たに取得した土地については、協働パートナー及び関係機関とともに風力発電施設開発に向けて準備を進めている。
このように同社では、既に成熟傾向にある太陽光発電ではなく、成長性が高く利益幅も大きい風力発電に注力する方針だ。


(4) 海外事業
海外事業としては、ASEANで最もインフラが整っているタイと、人口が現在の2億6,000万人から3億人に増加すると予想されるインドネシアに現地法人を設立している。
タイは、日本とアジア、そして世界をつなぐ「ハブ」となる立地であり、高速鉄道・路線複線化計画により国内交通インフラの整備が進められている。
同社は2018年8月に、世界中に複数の上場会社を傘下に持つ、世界有数のコングロマリットCharoen Pokphand Groupの関連子会社であるAlpha Capital Enterprises Limitedの株式を取得し、そのネットワークを今後の事業展開に活用する考えだ。
また、インドネシアは多くの島々で成り立っており、太陽光をはじめとする分散型電源が求められていることから、同社の持つノウハウを活用する計画だ。
なお、インドネシアの不動産デベロッパーであるPT Baruna Realty(GREENWOODS)とジョイントオペレーションスキームを用いた投資契約を締結し、戸建て住宅開発プロジェクト「Citaville Pilar Cikarang」を推進している。
2022年8月期第2四半期には、中所得者向けに約300戸(戸建て)の事前販売活動を開始した。
インドネシアは消費市場をけん引する中間所得層の拡大が進み、住宅をはじめとする不動産市場の需要拡大が期待されることから、同国でのさらなる事業拡大を目指す。


同社の海外事業での役割は、事業を企画し、適切なファイナンスで資金を調達して販売するスキームを作り上げ、日本の投資家、デベロッパー、事業会社に、海外への水先案内人として投資機会や事業機会を提供することである。
当面はコロナ禍に伴い人々の往来にも制約があるため海外事業での大きな進展は難しいが、長期的には有望な事業分野と言えよう。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)


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