■ネットイヤーグループ (T:3622)の業績動向2. 新規サービスについて2021年3月期に入ってからの主な取り組みとして、以下のサービスの提供を開始している。
(1)パフォーマンスオプティマイゼーションサービス主なデジタルマーケティング施策であるSEO対策やWeb広告、自社サイト改善の3領域をワンストップで支援する「パフォーマンスオプティマイゼーションサービス」の提供を2020年5月より開始した。
従来、これら3つの領域はそれぞれ異なる広告代理店やWeb制作会社などがクライアント企業に対してサービスを提供していたが、それぞれの施策が分断されてしまい、必ずしも全体を通して最適化されたデジタルマーケティング施策になっていないことが課題となっていた。
また、クライアント企業は各領域の事業パートナーと個別に時間をかけて、予算配分や改善施策などを協議して決めるなど非効率的でもあった。
こうした課題を解決するため、これら3領域を横断して支援し、デジタルマーケティングの費用対効果の最大化を実現するサービスが「パフォーマンスオプティマイゼーションサービス」となる。
具体的なサービス内容は、KGI(Key Goal Indicator:経営目標達成指標)達成のため、3領域における施策や優先順位、予算の最適化を図り、企画から施策の実行までをワンストップで支援していく。
(2)カスタマーサクセス業務支援サービスカスタマーサクセスを目的としたCRM業務やマーケティングオートメーション(以下、MA)運用業務を支援する「カスタマーサクセス業務支援サービス」の提供を2020年7月より開始した。
ニューノーマルな時代において、生活者の意識・行動が大きく変化しつつあり、顧客との関係の重要性が改めてクローズアップされており、顧客との強い関係性を構築することでビジネスの継続・成長につなげていくことが可能となる。
こうした顧客との関係性を強化する「顧客起点」のカスタマーサクセスを実現するサービスとなる。
具体的には、顧客ごとの「カスタマーサクセス」をカスタマージャーニー※から見出し、それぞれのKPI・KGIを設定、シナリオ設計から実行・改善までを支援し、短期間でのPDCA運営を推進していく。
また、顧客企業が「カスタマーサクセス」を継続的に実行できる体制を計画し、各種施策に必要なMA/CRMツールの導入・運用やコンテンツの作成など施策の実行や分析までトータルでサポートする。
※商品・サービスを購入または利用する人物像(ペルソナ)を設定し、その行動、思考、感情を分析し、認知から検討、購入・利用へ至るシナリオを時系列で捉える考え方。
なお、顧客に提案していくなかで、マーケティング部門の運用体制に関する人的リソースが不足しているケースも多く、こうした課題を解消するためのサービスとしても期待できる。
(3)Digital&Physicalサービス新たなプロダクトサービスとして、リテール業界・店舗ビジネスに特化した非接触型サービスを実現する次世代の買い物体験アプリ支援サービス「Digital&Physical」の提供を2020年11月より開始した。
同サービスはanect(株)が提供するスピーディなアプリ開発を実現するプラットフォーム「Appabrik」を基盤とし、同社が蓄積してきたCXのノウハウにより、デジタルとフィジカル(見て触れる事ができるもの)領域を見据えながら、ユーザーの買い物体験をデザインすることで、ニューノーマル時代に対応したアプリの開発を可能とするサービスである。
特徴としては、「次世代の買い物体験」に必要な機能※を標準実装しているほか、オリジナル機能(二次元コード決済、ライブコマース機能、店舗の混雑状況確認機能等)も柔軟に追加することができ、また、「Appabrik」を基盤としているため、スクラッチ型開発に比べて、圧倒的に低コストでスピーディな開発を実現できることにある(最短5ヶ月でリリース可能)。
既に買い物アプリを開発・運用している企業も多いが、運用コストや機能追加などのバージョンアップに関わるコスト等も含めて考えると、リプレースするメリットはあると考えられ、今後の動向が注目される。
※基本機能として、EC機能、電子チラシ、電子クーポン発行機能、チェックイン機能、動画配信機能、プッシュ通知、お知らせ配信機能、お気に入り店舗登録、フリーコンテンツ等が実装されている。
自己資本比率は70%台で無借金経営、財務の健全性は維持3. 財務状況と経営指標2021年3月期第2四半期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比667百万円減少の2,045百万円となった。
主な増減要因を見ると、流動資産で受取手形及び売掛金が615百万円減少したほか、現金及び預金が99百万円減少した。
受取手形及び売上債権の減少は季節要因(3月に売上が集中する)によるもので、前年同期末比では94百万円の増加となっている。
固定資産では有形固定資産が3百万円、無形固定資産が5百万円増加した。
負債合計は前期末比343百万円減少の513百万円となった。
買掛金が279百万円減少したほか、未払消費税等が50百万円減少したことが主な要因となっている。
純資産合計は前期末比324百万円減少の1,532百万円となった。
親会社株主に帰属する四半期純損失289百万円の計上や配当金の支出22百万円等による。
経営指標を見ると、自己資本比率が前期末の67.7%から74.5%に上昇しており、高水準で安定して推移している。
有利子負債はなく、財務内容については健全な状態にあると判断される。
現預金の水準が10億円弱とやや脆弱だが、今後はNTTデータグループ内のCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)の導入を含めた資金手当について検討する予定となっており、財務面での懸念はないものと考えられる。
このため喫緊の課題は、トライバルメディアハウスを含めて収益性を回復していくことにあると言えよう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)