■事業方針と成長戦略
(1)ウォーターヘルスケア事業
ウォーターヘルスケア事業の売上高は着実に増加している。
同事業の売上高利益率は20%前後で推移し、高水準の収益性が維持されている。
○事業の基本姿勢-20年前から電解水素水に関する産学共同研究を実施 日本トリム (T:6788)は、エビデンスを根拠とする科学的アプローチをすることを基本方針としている。
1991年に自社の研究部門を設立するなど、早くから電解水素水の研究に取り組んできた。
研究開発は、自社内だけでなく、約20年前から国内外の大学や研究機関と電解水素水について、基礎分野、医療分野、農業分野の3つの分野で産学官共同研究を進めている。
○成長戦略-市場浸透戦略 電解水素水に関連する事業展開を、成長マトリックスを使って説明する。
国内の既存市場に既存製品を販売する「市場浸透戦略」では、卸・OEMの販売チャネルと「健康経営」を切り口に成長を図る。
日本における現在の整水器の普及率は5~6%に過ぎず、同社は20%を目標とする。
自社による小売ばかりでなく、卸・OEMと他社の販売網を積極的に利用して普及の促進を図る。
2016年3月期における整水器の販売チャネル別売上高(9,834百万円)は、直販のDS(ダイレクトセールス)事業部の4,976百万円(整水器売上高全体の50.6%)、既存顧客からの紹介によるHS(ホームセールス)事業部の2,054百万円(同20.9%)、百貨店やスポーツクラブなどの催事場で販売するSS(ストアセールス)事業部の868百万円(同8.8%)、大手電機メーカーなどに供給する卸・OEMの1,611百万円(同16.4%)、業務部(アフター)の323百万円(同3.3%)により構成されている。
2016年3月期までの3年間の販売チャネル別CAGR(年平均成長率)は、DS事業部が4.7%、HS事業部が15.2%、SS事業部が13.4%、卸・OEMが32.4%、業務部が5.6%、全体で10.7%であった。
卸・OEMの売上高構成比は、この3期間で6.8ポイントの増加となった。
直販は、企業などに出向き、社員向けに説明会を開いて販売する職域販売になる。
販売拠点を順次拡大してきており、現在は全国28拠点のネットワークを構築している。
1人当たりの販売台数や1説明会当たりの販売台数等の販売効率が過去最高水準まで向上している。
今後は、マンパワーや説明会数などを増やし、成長を拡大していく方針である。
全国62局でテレビCMを流すなどの宣伝広告を行っている。
卸・OEMは、2016年3月期下期に健康や美容関連2社の新規大口案件がスタートして、順調に拡大した。
現在、8件の大口取引案件を折衝中である。
2017年3月期は、前期契約先が通期で寄与するうえ、新規獲得が見込まれることから、2期連続して3割近い増収が期待される。
同社が、長年にわたって電解水素水整水器のトップメーカーであり、科学的アプローチにより物性解明の研究やエビデンスの積み上げをしてきたことが、OEM先から選ばれる要因となっている。
○健康経営-同社従業員の医療費が全国平均を大幅に下回る 市場浸透戦略として注力されるのが、「健康経営」になる。
経済産業省と東京証券取引所は、「日本再興戦略」の一環として、2014年度から「健康経営銘柄」を選定し、公表している。
同取組は、長期的な視点から企業価値の向上を重視する投資家に対し、従業員の健康管理を経営的な観点から戦略的に実践している、魅力ある企業を紹介することを目的としている。
「健康経営銘柄2016」では、国内全上場企業3,605社から25社が選定された。
その中で、自由設計による戸建住宅の供給に強みを持つ企業は、健康経営の取り組みの一環として全事業所に同社製整水器を設置している。
また、自動車販売店の100店舗以上にも導入された。
今後も、横展開を図り、大量導入の獲得を目指す。
販売形態は、直接販売で職場に出向いても、最終顧客は個人のBtoCになる。
「健康経営」では、職場に導入されるためBtoBのビジネスになる。
職場で電解水素水を常飲して気に入れば、個々の社員が自宅用に整水器を購入する可能性がある。
電解水素水を常飲する同社従業員は、1人当たり月間平均医療費が加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)の全国平均と比べると6割程度にとどまる。
健康長寿社会の実現と医療費抑制の観点から、「予防」の重要性の認識が高まっている。
同社は、「ウォーターヘルスケアという、新習慣。
」という考え方を推進している。
2017年3月期は、「健康経営」をテーマに、法人向け営業を精力的に実施する。
〇カートリッジ-ストック型ビジネスで安定収益源 浄水カートリッジは、使用状況にもよるが、通常年1回交換されるため、整水器の稼働台数の増加に応じて、安定した伸長が見込める。
2016年3月期のカートリッジの売上高は3,536百万円、それまでの3ヶ年のCAGRが10.1%であった。
前述の整水器売上高に対する比率では、35%前後で推移している。
OEM供給した整水器の交換にも、同社のカートリッジが使用される。
第三者による「互換」カートリッジに対しても対策済みである。
将来は、整水器の普及台数を300万台、カートリッジ交換率70%を前提とし、カートリッジ年商200億円を目指す。
○「市場開拓戦略」-アジア市場の開拓を図る 家庭用電解水素水整水器の国内市場で圧倒的なシェアを持つが、海外ではまず、アジアにおいて新規市場の開拓をする成長戦略を採っている。
現在、中国、インドネシア、台湾、韓国に拠点を持つ。
2016年3月期の売上高は、中国が88百万円、インドネシアが448百万円、ウォーターヘルスケア事業における両子会社の売上構成比は3.7%であった。
2005年に中国に設立した独資の広州多寧健康科技有限公司が電解水素水整水器の輸入販売を行っている。
インドネシアでの事業が急拡大している。
2017年3月期の売上高は907百万円と倍増を計画している。
2006年に、インドネシアに同国財閥のシナルマス・グループと折半の合弁企業PT. SUPER WAHANA TEHNOを設立した。
「Pristine」ブランドにより、電解水のペットボトルとガロンボトルの製造・販売を行っている。
自然豊かな地に湧き出した良質のミネラルウォーターに、同社の電解水生成の技術が利用され、安全で美味しく、健康に良い水を生成している。
販売体制の強化を図っており、インドネシア国内の拡販と同時に、シンガポールにも輸出している。
家庭用だけでなくホテル飲食店にも納入されている。
韓国では、2016年に100%子会社のHankook TRIM Co.,LTDを設立し、それまでの代理店販売から本格参入に移行する。
日本と同様に、家庭用整水器は胃腸症状の改善効果が認められている。
韓国国内では、浄水器の普及率が80%を越えるといわれており、整水器への代替を図る。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
同事業の売上高利益率は20%前後で推移し、高水準の収益性が維持されている。
○事業の基本姿勢-20年前から電解水素水に関する産学共同研究を実施 日本トリム (T:6788)は、エビデンスを根拠とする科学的アプローチをすることを基本方針としている。
1991年に自社の研究部門を設立するなど、早くから電解水素水の研究に取り組んできた。
研究開発は、自社内だけでなく、約20年前から国内外の大学や研究機関と電解水素水について、基礎分野、医療分野、農業分野の3つの分野で産学官共同研究を進めている。
○成長戦略-市場浸透戦略 電解水素水に関連する事業展開を、成長マトリックスを使って説明する。
国内の既存市場に既存製品を販売する「市場浸透戦略」では、卸・OEMの販売チャネルと「健康経営」を切り口に成長を図る。
日本における現在の整水器の普及率は5~6%に過ぎず、同社は20%を目標とする。
自社による小売ばかりでなく、卸・OEMと他社の販売網を積極的に利用して普及の促進を図る。
2016年3月期における整水器の販売チャネル別売上高(9,834百万円)は、直販のDS(ダイレクトセールス)事業部の4,976百万円(整水器売上高全体の50.6%)、既存顧客からの紹介によるHS(ホームセールス)事業部の2,054百万円(同20.9%)、百貨店やスポーツクラブなどの催事場で販売するSS(ストアセールス)事業部の868百万円(同8.8%)、大手電機メーカーなどに供給する卸・OEMの1,611百万円(同16.4%)、業務部(アフター)の323百万円(同3.3%)により構成されている。
2016年3月期までの3年間の販売チャネル別CAGR(年平均成長率)は、DS事業部が4.7%、HS事業部が15.2%、SS事業部が13.4%、卸・OEMが32.4%、業務部が5.6%、全体で10.7%であった。
卸・OEMの売上高構成比は、この3期間で6.8ポイントの増加となった。
直販は、企業などに出向き、社員向けに説明会を開いて販売する職域販売になる。
販売拠点を順次拡大してきており、現在は全国28拠点のネットワークを構築している。
1人当たりの販売台数や1説明会当たりの販売台数等の販売効率が過去最高水準まで向上している。
今後は、マンパワーや説明会数などを増やし、成長を拡大していく方針である。
全国62局でテレビCMを流すなどの宣伝広告を行っている。
卸・OEMは、2016年3月期下期に健康や美容関連2社の新規大口案件がスタートして、順調に拡大した。
現在、8件の大口取引案件を折衝中である。
2017年3月期は、前期契約先が通期で寄与するうえ、新規獲得が見込まれることから、2期連続して3割近い増収が期待される。
同社が、長年にわたって電解水素水整水器のトップメーカーであり、科学的アプローチにより物性解明の研究やエビデンスの積み上げをしてきたことが、OEM先から選ばれる要因となっている。
○健康経営-同社従業員の医療費が全国平均を大幅に下回る 市場浸透戦略として注力されるのが、「健康経営」になる。
経済産業省と東京証券取引所は、「日本再興戦略」の一環として、2014年度から「健康経営銘柄」を選定し、公表している。
同取組は、長期的な視点から企業価値の向上を重視する投資家に対し、従業員の健康管理を経営的な観点から戦略的に実践している、魅力ある企業を紹介することを目的としている。
「健康経営銘柄2016」では、国内全上場企業3,605社から25社が選定された。
その中で、自由設計による戸建住宅の供給に強みを持つ企業は、健康経営の取り組みの一環として全事業所に同社製整水器を設置している。
また、自動車販売店の100店舗以上にも導入された。
今後も、横展開を図り、大量導入の獲得を目指す。
販売形態は、直接販売で職場に出向いても、最終顧客は個人のBtoCになる。
「健康経営」では、職場に導入されるためBtoBのビジネスになる。
職場で電解水素水を常飲して気に入れば、個々の社員が自宅用に整水器を購入する可能性がある。
電解水素水を常飲する同社従業員は、1人当たり月間平均医療費が加入している全国健康保険協会(協会けんぽ)の全国平均と比べると6割程度にとどまる。
健康長寿社会の実現と医療費抑制の観点から、「予防」の重要性の認識が高まっている。
同社は、「ウォーターヘルスケアという、新習慣。
」という考え方を推進している。
2017年3月期は、「健康経営」をテーマに、法人向け営業を精力的に実施する。
〇カートリッジ-ストック型ビジネスで安定収益源 浄水カートリッジは、使用状況にもよるが、通常年1回交換されるため、整水器の稼働台数の増加に応じて、安定した伸長が見込める。
2016年3月期のカートリッジの売上高は3,536百万円、それまでの3ヶ年のCAGRが10.1%であった。
前述の整水器売上高に対する比率では、35%前後で推移している。
OEM供給した整水器の交換にも、同社のカートリッジが使用される。
第三者による「互換」カートリッジに対しても対策済みである。
将来は、整水器の普及台数を300万台、カートリッジ交換率70%を前提とし、カートリッジ年商200億円を目指す。
○「市場開拓戦略」-アジア市場の開拓を図る 家庭用電解水素水整水器の国内市場で圧倒的なシェアを持つが、海外ではまず、アジアにおいて新規市場の開拓をする成長戦略を採っている。
現在、中国、インドネシア、台湾、韓国に拠点を持つ。
2016年3月期の売上高は、中国が88百万円、インドネシアが448百万円、ウォーターヘルスケア事業における両子会社の売上構成比は3.7%であった。
2005年に中国に設立した独資の広州多寧健康科技有限公司が電解水素水整水器の輸入販売を行っている。
インドネシアでの事業が急拡大している。
2017年3月期の売上高は907百万円と倍増を計画している。
2006年に、インドネシアに同国財閥のシナルマス・グループと折半の合弁企業PT. SUPER WAHANA TEHNOを設立した。
「Pristine」ブランドにより、電解水のペットボトルとガロンボトルの製造・販売を行っている。
自然豊かな地に湧き出した良質のミネラルウォーターに、同社の電解水生成の技術が利用され、安全で美味しく、健康に良い水を生成している。
販売体制の強化を図っており、インドネシア国内の拡販と同時に、シンガポールにも輸出している。
家庭用だけでなくホテル飲食店にも納入されている。
韓国では、2016年に100%子会社のHankook TRIM Co.,LTDを設立し、それまでの代理店販売から本格参入に移行する。
日本と同様に、家庭用整水器は胃腸症状の改善効果が認められている。
韓国国内では、浄水器の普及率が80%を越えるといわれており、整水器への代替を図る。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)