■業績動向
1. 2022年6月期第2四半期の業績
サイジニア (T:6031)の2022年6月期第2四半期の業績は、売上高1,095百万円(前年同期比75.0%増)、営業利益77百万円(前年同期は86百万円の損失)、経常利益73百万円(同84百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失1,094百万円(同84百万円の損失)となった。
これまで営業損失が続いてきたが、営業損益が黒字転換を果たし、期初に策定した利益計画を24%も上回るなど業績が好調で、いよいよ利益成長に弾みがついたと見られる。
なお、純損失幅が拡大しているが、ZETAとの経営統合への期待感が大きかったことに伴う特別損失の発生が要因である。
コロナ禍が2021年12月に終息に向かうと期待されていたが、2022年1月後半にオミクロン株の登場によって感染者数が急拡大、3月に解除されたものの全国各地にまん延防止等重点措置が適用されるなど、国内経済は引き続き不透明な状況にある。
デジタルマーケティングソリューション市場は、社会全般のデジタル化の加速やリモートワーク普及による巣ごもり需要の拡大などが追い風となり、2021年10月~11月のネット広告費が前年同月比で20%以上増加(出典:経済産業省「4大既存メディア広告とインターネット広告の推移」2022年1月10日更新版)するなど、前年に引き続いて高成長を持続した。
このような環境下、収益改善傾向にあったものの、コロナ禍に伴う主要顧客の小売業や不動産業の景況悪化により黒字化が遅れていた同社の業績が急改善した。
2022年6月期第2四半期については、市場環境の好調に加え、2021年10月の緊急事態宣言解除によって人流が回復したことから、顧客企業の業況回復も顕著となった。
このため、コロナ関連商材や首都圏不動産の需要が高まり、広告配信案件が拡大した。
事業会社別では、同社とデクワスの利益体質改善が進んだところにZETAの業績が加わったことで、グループ全体の収益を大きく押し上げた。
事業別では、ネット広告サービスが、コロナ禍に対する消費財や落ち込んでいた首都圏不動産の広告需要が高まったことで、売上高は708百万円(前年同期比48.4%増)となった。
CX改善サービスは、ZETA業績が第2四半期から連結された※効果が大きく、売上高が307百万円(同387.9%増)と大きく改善した。
来店誘導型サービスのOMO推進サービスについては、期間中にコロナ禍の影響で実店舗の多くが休止や営業時間短縮となったことから、売上高は62百万円(同14.9%減)となった。
ただし、CX改善サービスとOMO推進サービスは相互補完性が高いため、OMO推進サービスで減少した案件がCX改善サービスへと移行したケースも散見された。
※ZETAの株式交換契約の効力発生日は2022年7月1日だが、決算月のズレを考慮して企業結合日を8月31日とし、損益計算書には第2四半期から取り込んでいる。
のれんの増額は株式市場の期待の現れ
2. ZETA経営統合に伴うのれんの発生について
2022年6月期第2四半期におけるZETAとの経営統合に伴い、1,169百万円という比較的大きな特別損失が発生した。
これは、非上場会社との経営統合に伴って発生したのれんが当初想定額を超えたことが要因である。
つまり、ZETA株1株に付き同社株125株を交換比率に株式交換契約が成立した2021年3月31日の同社株価(終値)は1,074円だったが、その後株価が上昇し、企業結合日の8月31日(終値)には2,240円となった。
このため、株式交換契約時に想定したのれん739百万円が、企業結合日には1,972百万円へと大きく膨らんだ。
この増額分のうち2022年6月期に償却する金額以外の1,169百万円を特別損失に計上することとなった。
のれんとは買収額が被買収企業の純資産を上回る「魅力」のことで、株式交換契約(の設定株価)が株価の上昇を引き起こしたとすれば「魅力」が増したということになり、同社とZETAの経営統合に対する株式市場の期待の大きさを表していると言うことができる。
だが、期待と同時に、中期的に損益計算書上で償却負担が増すことも事実である。
まず負担だが、のれんの一時減損として特別損失1,169百万円を計上、残りが10年の定期償却となるため、2022年6月期60百万円、2023年6月期~2031年6月期は各期81百万円、2032年6月期20百万円という償却負担になる。
一方期待だが、中期的に、償却費はノンキャッシュであるため投資余力・配当余力が増すこと、償却負担を上回る利益創出が予想されることなどと思われる。
経営統合で株価が上昇したということは、同社としても着実に利益を積み増していく必要がある。
中期経営計画において、中期のKPIこそ示されていないものの、黒字転換~成長期入りという収益ステージの転換点で具体的な数値を示すことが難しかった可能性があり、同社は将来業績への自信を持っていると弊社では見ている。
大幅増益予想だった通期業績予想をさらに上方修正
3. 2022年6月期業績見通し
同社は2022年6月期業績見通しに関して、売上高2,500百万円(前期比79.4%増)、営業利益350百万円(前期は44百万円の損失)、経常利益340百万円(同43百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失1,050百万円(同55百万円の損失)と、第2四半期に引き続いて大幅な増収増益を見込んでいる。
なお、この業績見通しは、第2四半期決算発表後に、同社が足元の事業環境や各サービスの動向などを踏まえて、売上高、営業利益、経常利益の予想を上方修正したものである。
親会社株主に帰属する当期純利益については、特別損失などの不確定要素に照らし、据え置いた。
先述したとおり第2四半期の営業利益が計画を24%上回り、15百万円程度の過達となった。
このため、今般の上方修正により、第3四半期以降(今下期)だけで第2四半期の過達幅を上回る65百万円の上方修正となっている。
かなりハードルの高い予想に見えるが、外部環境の良化や内部環境の充実を背景に成長に弾みがついていること、同社とデクワスの売上高が第3四半期、ZETAは第4四半期に偏重する傾向にあることなどを考慮すると十分ターゲット内と言えるうえ、足元の勢いを考えると、第3四半期以降でさらに上振れる可能性もありそうだと弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
1. 2022年6月期第2四半期の業績
サイジニア (T:6031)の2022年6月期第2四半期の業績は、売上高1,095百万円(前年同期比75.0%増)、営業利益77百万円(前年同期は86百万円の損失)、経常利益73百万円(同84百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失1,094百万円(同84百万円の損失)となった。
これまで営業損失が続いてきたが、営業損益が黒字転換を果たし、期初に策定した利益計画を24%も上回るなど業績が好調で、いよいよ利益成長に弾みがついたと見られる。
なお、純損失幅が拡大しているが、ZETAとの経営統合への期待感が大きかったことに伴う特別損失の発生が要因である。
コロナ禍が2021年12月に終息に向かうと期待されていたが、2022年1月後半にオミクロン株の登場によって感染者数が急拡大、3月に解除されたものの全国各地にまん延防止等重点措置が適用されるなど、国内経済は引き続き不透明な状況にある。
デジタルマーケティングソリューション市場は、社会全般のデジタル化の加速やリモートワーク普及による巣ごもり需要の拡大などが追い風となり、2021年10月~11月のネット広告費が前年同月比で20%以上増加(出典:経済産業省「4大既存メディア広告とインターネット広告の推移」2022年1月10日更新版)するなど、前年に引き続いて高成長を持続した。
このような環境下、収益改善傾向にあったものの、コロナ禍に伴う主要顧客の小売業や不動産業の景況悪化により黒字化が遅れていた同社の業績が急改善した。
2022年6月期第2四半期については、市場環境の好調に加え、2021年10月の緊急事態宣言解除によって人流が回復したことから、顧客企業の業況回復も顕著となった。
このため、コロナ関連商材や首都圏不動産の需要が高まり、広告配信案件が拡大した。
事業会社別では、同社とデクワスの利益体質改善が進んだところにZETAの業績が加わったことで、グループ全体の収益を大きく押し上げた。
事業別では、ネット広告サービスが、コロナ禍に対する消費財や落ち込んでいた首都圏不動産の広告需要が高まったことで、売上高は708百万円(前年同期比48.4%増)となった。
CX改善サービスは、ZETA業績が第2四半期から連結された※効果が大きく、売上高が307百万円(同387.9%増)と大きく改善した。
来店誘導型サービスのOMO推進サービスについては、期間中にコロナ禍の影響で実店舗の多くが休止や営業時間短縮となったことから、売上高は62百万円(同14.9%減)となった。
ただし、CX改善サービスとOMO推進サービスは相互補完性が高いため、OMO推進サービスで減少した案件がCX改善サービスへと移行したケースも散見された。
※ZETAの株式交換契約の効力発生日は2022年7月1日だが、決算月のズレを考慮して企業結合日を8月31日とし、損益計算書には第2四半期から取り込んでいる。
のれんの増額は株式市場の期待の現れ
2. ZETA経営統合に伴うのれんの発生について
2022年6月期第2四半期におけるZETAとの経営統合に伴い、1,169百万円という比較的大きな特別損失が発生した。
これは、非上場会社との経営統合に伴って発生したのれんが当初想定額を超えたことが要因である。
つまり、ZETA株1株に付き同社株125株を交換比率に株式交換契約が成立した2021年3月31日の同社株価(終値)は1,074円だったが、その後株価が上昇し、企業結合日の8月31日(終値)には2,240円となった。
このため、株式交換契約時に想定したのれん739百万円が、企業結合日には1,972百万円へと大きく膨らんだ。
この増額分のうち2022年6月期に償却する金額以外の1,169百万円を特別損失に計上することとなった。
のれんとは買収額が被買収企業の純資産を上回る「魅力」のことで、株式交換契約(の設定株価)が株価の上昇を引き起こしたとすれば「魅力」が増したということになり、同社とZETAの経営統合に対する株式市場の期待の大きさを表していると言うことができる。
だが、期待と同時に、中期的に損益計算書上で償却負担が増すことも事実である。
まず負担だが、のれんの一時減損として特別損失1,169百万円を計上、残りが10年の定期償却となるため、2022年6月期60百万円、2023年6月期~2031年6月期は各期81百万円、2032年6月期20百万円という償却負担になる。
一方期待だが、中期的に、償却費はノンキャッシュであるため投資余力・配当余力が増すこと、償却負担を上回る利益創出が予想されることなどと思われる。
経営統合で株価が上昇したということは、同社としても着実に利益を積み増していく必要がある。
中期経営計画において、中期のKPIこそ示されていないものの、黒字転換~成長期入りという収益ステージの転換点で具体的な数値を示すことが難しかった可能性があり、同社は将来業績への自信を持っていると弊社では見ている。
大幅増益予想だった通期業績予想をさらに上方修正
3. 2022年6月期業績見通し
同社は2022年6月期業績見通しに関して、売上高2,500百万円(前期比79.4%増)、営業利益350百万円(前期は44百万円の損失)、経常利益340百万円(同43百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失1,050百万円(同55百万円の損失)と、第2四半期に引き続いて大幅な増収増益を見込んでいる。
なお、この業績見通しは、第2四半期決算発表後に、同社が足元の事業環境や各サービスの動向などを踏まえて、売上高、営業利益、経常利益の予想を上方修正したものである。
親会社株主に帰属する当期純利益については、特別損失などの不確定要素に照らし、据え置いた。
先述したとおり第2四半期の営業利益が計画を24%上回り、15百万円程度の過達となった。
このため、今般の上方修正により、第3四半期以降(今下期)だけで第2四半期の過達幅を上回る65百万円の上方修正となっている。
かなりハードルの高い予想に見えるが、外部環境の良化や内部環境の充実を背景に成長に弾みがついていること、同社とデクワスの売上高が第3四半期、ZETAは第4四半期に偏重する傾向にあることなどを考慮すると十分ターゲット内と言えるうえ、足元の勢いを考えると、第3四半期以降でさらに上振れる可能性もありそうだと弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)