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アドバネクス Research Memo(7):グローバル供給体制を評価する自動車、医療向けを伸ばす

発行済 2018-07-25 15:47
更新済 2018-07-25 16:00
アドバネクス Research Memo(7):グローバル供給体制を評価する自動車、医療向けを伸ばす
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■中長期の成長戦略

1. 中期経営計画
アドバネクス (T:5998)の現在の中期経営計画は、2021年3月期の目標値を売上高26,500百万円、営業利益1,200百万円、売上高営業利益率4.5%に置き、さらに最終年度の2023年3月期に売上高31,500百万円~35,000百万円、営業利益2,500百万円~3,000百万円、売上高営業利益率7.9%~8.6%を目指す。
2018年3月期の業績をベースとした3ヶ年の予想CAGRは、売上高で9.3%増、営業利益で66.7%増と利益面での大幅な伸びを見込む。


精密ばね事業の売上高営業利益率は、2000年3月期以降に4.5%以上となったことが5回あるため、2021年3月期の目標値は射程圏内にあると思われる。
2023年3月期の目標値の水準を過去に上回ったのは、2011年3月期の9.4%の1回のみであり、ハードルは高い。
中期経営計画発表後の2015年3月期から2019年3月期までに世界の工場総面積を約8万平米から1.7倍に拡大することから、2021年3月期の売上高目標はめどが立つが、2023年3月期の目標達成には追加もしくは新たな設備投資が必要となるだろう。


2. 中期経営計画の戦略
リードタイムが長く、高品質な製品を大量に、納期を厳守して、継続的に複数のグローバル拠点に納入するビジネスモデルは、同社にとってもだが、規模の小さい精密ばねメーカーにとってより参入障壁が高い。
グローバル展開をする自動車市場のメガサプライヤーからは、同社に対する評価が上がっている。
グローバル体制を生かして、Tier1トップ4の優先サプライヤー認定を目指す。


(1) エリア戦略
チェコ、インド、ベトナム新工場の新設計画を完了し、海外17工場とする。
チェコ工場は7,700平米、ベトナム新工場は8,000平米程度とそれぞれが大型工場となる。
2019年3月期までの5年間で、グローバルな生産面積は1.7倍となる。
設備投資額は、2018年3月期の1,568百万円から、2019年3月期は3,364百万円に跳ね上がる見込みだ。
減価償却費は、前期の939百万円から当期は1,034百万円へ増加することが予想されている。


(2) 市場戦略
市場戦略としては、自動車、医療、インフラ・住設を重点分野とし、さらに二次電池、航空機などに注力する。
2023年3月期の市場別売上高構成比の計画は、自動車が50%(2018年3月期比:3.4ポイント増)、OA機器10%(同7.9ポイント減)、医療10%(同2.4ポイント増)、インフラ・住設が10%(同5.4ポイント増)、その他が20%(同3.4ポイント減)とした。
これまで自動車市場の構成比が予想以上に高まっており、計画値の50%の公算が大きい。


自動車向けは、量産効果が大きい上、メガサプライヤーからのグローバルな注文が来る。
この3年間で、新規顧客が数百社増えた。
顧客からの評価は高く、同社のグローバルTier2というビジネスコンセプトの有用性が確認された。


グローバル生産は、同一部品の受注が、例えば日本から始まり、タイ、中国、インドと展開される。
自動車部品は、引き合い、見積り、設計・試作の繰り返しなどの工程を経てから量産開始となる。
海外における追加的な受注では、設計・試作の工程が省かれる。
生産量が増加することで習熟度が高まり、顧客からのコストダウン要求にも対応できるようになる。
中期経営計画において利益率が大きく改善する要因として、増収率ほど販管費などの経費が増えないことが挙げられている。


収益性の高い医療市場では、2019年3月期にアメリカ工場での量産開始とチェコ工場の操業入りが計画されている。
2021年3月期になると、自己注射器用ばね及び深絞り加工品の量産開始が見込まれている。
グローバル生産は、コストメリットが大きい。
パソコン、携帯電話、カメラ向け部品の場合は、生産量が年10万個から1,000万個単位であることから、1ヵ所で集中生産することが適している。
一方、生産単位が1,000万個から1億個となるディスポーザブル医療キットは、関税、国内生産優遇、輸送費などを勘案すると分散生産による地産地消の方にコストメリットがある。


従来、欧州など高齢化が進む先進国を主要市場としてきたが、人口の多い新興国でもライフスタイルの変化により生活習慣病患者数が爆発的に増加している。
医療関連の顧客も世界展開を行っていることから、同社のグローバル供給体制が強みとなる。


(3) 製品戦略
タングレス・インサート、インサートカラー、ロックワンなど規格品のラインナップを拡充し、グローバルに販路を広げる。
海外で需要が旺盛なインサートモールド・深絞り加工品は、海外工場への技術移転を進めて、需要を取り込む。


イギリスの子会社は、航空機の製造にかかわる品質マネジメントシステム規格「AS9100」を取得し、タングレス・インサートの受注を強化している。
航空機は軽量化のため軟質材を多用しており、ボルト穴の補強に使用されるタングレス・インサートが1機当たり30万個前後も使用される。
タングレス・インサートは、従来製品に比べ、挿入後にタング部分を折って、拾う必要がないため作業スピードが速い。
飛行機や鉄道車両など大量に使用する分野では、顧客の製造現場での作業効率化を高めるため、リールと連結した挿入工具の利用を提案している。
また、パソコンの筐体に使用される場合は、自動挿入ロボットの利用も選択肢になる。
2018年3月期の売上高は10億円であるが、今後5年間で倍増を計画している。


(4) M&A戦略
とがった技術を持つ企業もしくは販路拡大に寄与する企業を引き続きM&Aの対象とする。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)

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