11月18日、パプアニューギニアで開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)は異例の宣言なしで幕を閉じた。
参加した21の国と地域のなかで、中国だけが宣言に同意しなかった。
中国は文言の中に中国批判があると捉えて、不満を抱いていたという。
米CNNやAP通信は19日、事情を知る米トランプ政権高官の話として、宣言のなかの「すべての不公平な貿易慣行を含めた保護主義と闘うことに合意する」との一句に争議があったと報じた。
同高官は、中国が「不公平な貿易慣行」の文言について、米国と同盟国による中国の貿易手法に対する攻撃的な意見と受け取ったとみているという。
カナダのトルドー首相も18日、メディアの取材に対して、貿易問題をめぐる意見の相違で宣言採択に至らなかったと述べた。
*海外メディアには見せられない? 中国主席と他国首脳との会談
パプアニューギニアは中国共産党政府による投資を受けれている国で、11月は中国融資の6車線道路が首都ポートモレスビーに開通したばかり。
APEC開催前、習近平主席は先立ってパプアニューギニア入りし、大統領と首脳会談を行い「新興国と結束する」と更なる支援を表明した。
パプアニューギニアは石油やガスなど天然資源が豊富で、海洋戦略上重要な港湾がある。
ロイター通信によると、このたびのAPECでは太平洋諸国の首脳と会談し、一帯一路の正式な拡大を意味すると報じた。
習近平主席と首脳会談したトンガは、5年間の融資計画と一帯一路プロジェクトの参加を改めて表明した。
6車線道路の開通にあたり習主席は「繁栄と開放、友好の道をさらに築く」と述べたという。
しかし、APECでの習主席と各国首脳との会談は、つねに中国政府関係者が「番人」となり海外メディアの取材を室内に入れなかった。
現地紙ザ・ナショナルの上級記者はこうした閉鎖性を「パプアニューギニアで開かれた大きな国際会議を多く報じて欲しいのに、非常に残念な行為だ」「報道の自由は侵害された」と批判した。
英ガーディアンはAPEC開催期間直前、首都圏の道路両側の支柱に多くの五星紅旗を掲げられ、紅旗を振り習主席来訪を歓迎する高校生たちの姿を報じた。
中国資本で建てられた学校の生徒だという。
太平洋地域専門のシンクタンク・ローニー研究所のジョナサン・パイク氏は、この模様について「ショー」のようだとSNSで書いている。
激化する米中対立で、2国間を挟む太平洋では火花が目立ちはじめた。
米議会の諮問機関である米中経済安全保障調査委員会の年次レポートによると、中国共産党政府の対米防衛ラインである小笠原諸島、グアム・サイパン、パプアニューギニアをつなぐ「第二列島線」は、すでに影響拡大に着手していると分析した。
警戒心を示すペンス副大統領は18日、米国とオーストラリアは、パプアニューギニアのマヌス島にある海軍基地の増強に協力すると発表した。
またオーストラリアは同日、南太平洋の島国バツアツとの安全保障協定の範囲を拡大すると発表した。
APEC開催期間、米国と日本、オーストラリア、ニュージーランドは共同で、2030年までにパプアニューギニアの電力を70%の国民が利用できるよう設備投資することを発表した。
米メディアが報じた、事情を知る米国政府関係者の話よると、11月にシンガポールで開かれた東アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で、中国李克強首相はペンス副大統領に「中国はまだ発展途上国だ」と個人的な会話の中で述べたという。
米国の態度軟化をさそう言葉とみられる。
しかし、国際会議や公の場で対中強硬姿勢を鮮明に打ち出しているペンス副大統領は、APECの演説でも中国を強く批判した。
「中国は態度を改める必要がある」「米国はパートナー国を借金で溺れさせたりしない。
強迫的なことや独立性を侵害することもしない。
一方通行な道(BeltoraOne-WayRoad、一帯一路BeltandRoadを揶揄)の建設を要求したりしない」と述べた。
(編集・佐渡道世)
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