■成長戦略
RS Technologies {{|0:}}は5つの中・長期経営方針を着実に実行することでシリコンウェーハ再生加工事業を核として成長を図る考えだ。
それぞれについて以下に解説する。
(1)台湾子会社新設・三本木工場増設による生産能力拡大 同社が現在最重点課題として取り組んでいるのがこの生産能力拡大で、特に台湾子会社の台南工場の安定稼働が最大の課題だ。
台南工場の新設に当たっては設備を三本木工場から移設することで、設備投資額の抑制と操業面でのスムーズな立ち上げを狙った。
資金面での政府の補助金を受けるプロセスで手間取り、移設作業が当初計画から3ヶ月ほど遅れたが、設備自体は2015年12月までに完成し、量産に移行できる体制は整っている。
台南工場の問題は、顧客による工場認定が遅れていることだ。
これがないと設備だけ完成しても商業生産を開始できない。
三本木工場はラサ工業から承継としたということもあって認定取得がスムーズに進んだ経緯がある。
一方、台南工場については、新設であることやターゲット顧客である台湾のファウンドリメーカーが実地検査に入ったこともあって想定以上に時間がかかっていることが遅れの理由だ。
現状は、認定作業はほぼ終了し最終的な認定を待つ段階へと入ってきているもようだ。
三本木工場は従来、12インチラインの能力が月産16万枚だったが、2015年中に一部手直しや効率化という追加の設備投資を伴わない形で、18万枚へと生産能力を引き上げることに成功した。
これによって2015年12月期と2016年12月期において台南工場の遅れの一部をカバーするとともに、2017年12月期以降における収益を上積みする計画が可能になった。
(2)再生市場におけるシェア拡大 前述のように、台南工場の完成で12インチ市場における同社のシェア(生産能力ベース)は世界トップの約30%に達した。
さらに同社は、世界シェアを中期的に40%に高めることを目標として掲げている。
半導体市場自体が成長を続けているため、シェアを10%引き上げるということは、生産能力を15万枚/月ほど増強することを意味すると考えられる。
同社はこれを、三本木工場や台南工場での能力増強投資で行うのではなく、他社との業務提携やM&Aを通じて獲得する計画だ。
弊社はこの計画について、説得力があると評価している。
前述したように、ウェーハ再生加工ビジネスは、再生加工賃の下落によって誰もが儲かるという状況にはない。
今後想定されるウェーハの世代交代(技術のロードマップでは主力のサイズが現在の12インチから18インチへと拡大する予定となっている)に際しては、再生加工メーカーも大規模な設備投資を余儀なくされることになる。
こうした状況のなか、同社は高収益を実現できており、この強いコスト競争力を生かして同社に有利な業務提携・M&Aを実現することは十分に可能性があると弊社では考えている。
(3)伸長する需要の取り込み 半導体市場は一時的な落ち込みはあって長期的には成長が続いていることは前述した。
再生加工事業への新規参入もほぼ止まっていることも前述のとおりで、結果的に、同社を始めとする再生加工メーカー各社は、将来の半導体市場の成長の恩恵を継続して受け得る状況にある。
同社が(3)のポイントを中・長期経営方針にあえて掲げることの意味は、世界トップの地位を維持し、かつ、シェアを拡大させていくことであるというのが弊社の理解だ。
その意味では(2)のポイントと同じ内容である言える。
しかし(3)にはウェーハの世代交代への対応という要素が入っている点が(2)とは異なる。
半導体製造の歴史はウェーハサイズの大型化の歴史でもある。
現在はウェーハ全体において枚数ベースで約50%、面積ベースで約70%が12インチウェーハとなっている。
近い将来、18インチウェーハによる量産が開始されようとしており、その際には再生加工メーカーも18インチへの対応が求められることになる。
この点同社は、三本木工場内に18インチ用の設備を導入済みである。
生産能力自体はごくわずかであるとみられるが、これは需要の立ち上がりに応じて増設していくことになるだろう。
弊社が注目するのは、同社が18インチウェーハのポリッシング技術を確立し、顧客からの評価も獲得済みで、いつでも量産へと移行できる体制が整っているという点だ。
再生加工専業メーカーの中で18インチへの対応が済んでいる企業は数少ないと弊社では考えており、この点で同社は大きなアドバンテージを有していると評価している。
ウェーハの価格は世代交代当初は極めて高価でその後徐々に低下する。
18インチウェーハもプライムウェーハの価格は1枚数十万円で、再生加工賃も1枚5万円とも6万円とも言われている。
ポリッシング技術を確立した同社への収益インパクトは極めて大きいと期待される。
(4)潜在的な再生市場の開拓 この意味するところは、前述した金属除去技術による再生市場の拡大ということだ。
同社独自の金属除去技術が認定されれば、現在は廃棄されているモニターウェーハが再生加工へと回されるようになると期待される。
その潜在需要の規模は、現状でも月間25万枚程度と推測されており、収益インパクトは大きいと言える。
(5)中国半導体マーケットへの参入 中国の半導体産業は、一部企業がファウンドリ分野である程度の実績を上げているものの、中国ブランドの世界半導体シェアは数%にとどまっている。
中国において半導体産業はまだこれからの産業と言える。
同社は、方永義社長が中国出身であることを生かし、ウェーハ再生加工に限らず対中ビジネスを幅広く展開していく方針だ。
具体的には、既に事業を行っている半導体製造に関するコンサルティングに加え、生産設備の買取・販売、生産用部材の供給などが行われるとみられる。
中国は自動車や液晶パネル分野での素早い産業立ち上げに成功した実績を有しており、それが半導体産業においても再現される可能性は十分ある。
その場合に、同社の対中ビジネスも想像以上に早く、かつ、大規模に発展を遂げる可能性も決してゼロではない。
業績予想に織り込むにはまだ早いが、期待を持って見守りたい分野だと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
それぞれについて以下に解説する。
(1)台湾子会社新設・三本木工場増設による生産能力拡大 同社が現在最重点課題として取り組んでいるのがこの生産能力拡大で、特に台湾子会社の台南工場の安定稼働が最大の課題だ。
台南工場の新設に当たっては設備を三本木工場から移設することで、設備投資額の抑制と操業面でのスムーズな立ち上げを狙った。
資金面での政府の補助金を受けるプロセスで手間取り、移設作業が当初計画から3ヶ月ほど遅れたが、設備自体は2015年12月までに完成し、量産に移行できる体制は整っている。
台南工場の問題は、顧客による工場認定が遅れていることだ。
これがないと設備だけ完成しても商業生産を開始できない。
三本木工場はラサ工業から承継としたということもあって認定取得がスムーズに進んだ経緯がある。
一方、台南工場については、新設であることやターゲット顧客である台湾のファウンドリメーカーが実地検査に入ったこともあって想定以上に時間がかかっていることが遅れの理由だ。
現状は、認定作業はほぼ終了し最終的な認定を待つ段階へと入ってきているもようだ。
三本木工場は従来、12インチラインの能力が月産16万枚だったが、2015年中に一部手直しや効率化という追加の設備投資を伴わない形で、18万枚へと生産能力を引き上げることに成功した。
これによって2015年12月期と2016年12月期において台南工場の遅れの一部をカバーするとともに、2017年12月期以降における収益を上積みする計画が可能になった。
(2)再生市場におけるシェア拡大 前述のように、台南工場の完成で12インチ市場における同社のシェア(生産能力ベース)は世界トップの約30%に達した。
さらに同社は、世界シェアを中期的に40%に高めることを目標として掲げている。
半導体市場自体が成長を続けているため、シェアを10%引き上げるということは、生産能力を15万枚/月ほど増強することを意味すると考えられる。
同社はこれを、三本木工場や台南工場での能力増強投資で行うのではなく、他社との業務提携やM&Aを通じて獲得する計画だ。
弊社はこの計画について、説得力があると評価している。
前述したように、ウェーハ再生加工ビジネスは、再生加工賃の下落によって誰もが儲かるという状況にはない。
今後想定されるウェーハの世代交代(技術のロードマップでは主力のサイズが現在の12インチから18インチへと拡大する予定となっている)に際しては、再生加工メーカーも大規模な設備投資を余儀なくされることになる。
こうした状況のなか、同社は高収益を実現できており、この強いコスト競争力を生かして同社に有利な業務提携・M&Aを実現することは十分に可能性があると弊社では考えている。
(3)伸長する需要の取り込み 半導体市場は一時的な落ち込みはあって長期的には成長が続いていることは前述した。
再生加工事業への新規参入もほぼ止まっていることも前述のとおりで、結果的に、同社を始めとする再生加工メーカー各社は、将来の半導体市場の成長の恩恵を継続して受け得る状況にある。
同社が(3)のポイントを中・長期経営方針にあえて掲げることの意味は、世界トップの地位を維持し、かつ、シェアを拡大させていくことであるというのが弊社の理解だ。
その意味では(2)のポイントと同じ内容である言える。
しかし(3)にはウェーハの世代交代への対応という要素が入っている点が(2)とは異なる。
半導体製造の歴史はウェーハサイズの大型化の歴史でもある。
現在はウェーハ全体において枚数ベースで約50%、面積ベースで約70%が12インチウェーハとなっている。
近い将来、18インチウェーハによる量産が開始されようとしており、その際には再生加工メーカーも18インチへの対応が求められることになる。
この点同社は、三本木工場内に18インチ用の設備を導入済みである。
生産能力自体はごくわずかであるとみられるが、これは需要の立ち上がりに応じて増設していくことになるだろう。
弊社が注目するのは、同社が18インチウェーハのポリッシング技術を確立し、顧客からの評価も獲得済みで、いつでも量産へと移行できる体制が整っているという点だ。
再生加工専業メーカーの中で18インチへの対応が済んでいる企業は数少ないと弊社では考えており、この点で同社は大きなアドバンテージを有していると評価している。
ウェーハの価格は世代交代当初は極めて高価でその後徐々に低下する。
18インチウェーハもプライムウェーハの価格は1枚数十万円で、再生加工賃も1枚5万円とも6万円とも言われている。
ポリッシング技術を確立した同社への収益インパクトは極めて大きいと期待される。
(4)潜在的な再生市場の開拓 この意味するところは、前述した金属除去技術による再生市場の拡大ということだ。
同社独自の金属除去技術が認定されれば、現在は廃棄されているモニターウェーハが再生加工へと回されるようになると期待される。
その潜在需要の規模は、現状でも月間25万枚程度と推測されており、収益インパクトは大きいと言える。
(5)中国半導体マーケットへの参入 中国の半導体産業は、一部企業がファウンドリ分野である程度の実績を上げているものの、中国ブランドの世界半導体シェアは数%にとどまっている。
中国において半導体産業はまだこれからの産業と言える。
同社は、方永義社長が中国出身であることを生かし、ウェーハ再生加工に限らず対中ビジネスを幅広く展開していく方針だ。
具体的には、既に事業を行っている半導体製造に関するコンサルティングに加え、生産設備の買取・販売、生産用部材の供給などが行われるとみられる。
中国は自動車や液晶パネル分野での素早い産業立ち上げに成功した実績を有しており、それが半導体産業においても再現される可能性は十分ある。
その場合に、同社の対中ビジネスも想像以上に早く、かつ、大規模に発展を遂げる可能性も決してゼロではない。
業績予想に織り込むにはまだ早いが、期待を持って見守りたい分野だと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)