■今後の見通し
(3)あらた (T:2733)の中期成長戦略
2015年3月期からスタートした中期3ヶ年経営計画では、「次世代型卸商社」として更なる成長を目指していく基本方針を打ち出し、経営目標値として2017年3月期に売上高679,000百万円、経常利益6,700百万円、ROE6.0%、D/Eレシオ1倍を掲げてきた。
このうち、売上高、経常利益、ROEに関しては上回る公算が大きく、D/Eレシオについてもほぼ計画水準となる見通しだ。
中期経営計画で取り組んできた成長戦略、並びに収益性の向上や財務体質改善に向けた施策が順調に進み、成果となって表れているものと考えられる。
2018年3月期からスタートする新中期経営計画はこれから策定していくことになるが、引き続き従来の戦略を踏襲していくほか、更なる成長を目指して同業他社、異業種とのアライアンスなど事業統合にも取り組んでいくものと予想される。
それぞれの施策については以下のとおりとなる。
a)売上高拡大施策
売上高の拡大施策としては、販売チャネル・地域の範囲拡大、既存顧客での取引シェア拡大、商材ジャンルの拡大が挙げられる。
販売チャネル・地域の範囲拡大では、インターネット流通市場への販路拡大とアジア市場の開拓を進めてきた。
このうち、インターネット流通市場の開拓については順調に進んでいる。
国内EC市場の拡大に伴い、無店舗型のEC事業者向け売上高が増加傾向にあるほか、2015年以降は中国を中心とした越境EC市場の拡大を背景に、国内外の越境EC事業者からの引き合いも増加している。
訪日インバウンド需要の一部が国内リアル店舗での購入から越境ECにシフトしつつあり、同市場をいかに取り込んでいくことができるかが今後の売上成長のポイントとなる。
当第2四半期累計のEC事業者向け売上高は前年同期比5割増の53億円となっており、今後の成長が期待される。
一方、アジア市場への展開については、今回の中期経営計画の中で想定どおり進まなかった数少ない取り組みの1つで今後の課題となっている。
中国市場においては取扱商品をペット用品などに絞り、取引先も大手チェーンを中心にするなど事業規模を縮小し、効率性を重視した経営を行う方針に切り替えている。
このため、当面はジャペル香港子会社との連携を強化していく方向となる。
また、タイについては現地での日系小売企業の販売支援を継続しているが、足元では伸び悩んでおり、日系企業以外の顧客開拓を進めていくことが今後の課題となる。
既存顧客内のシェア拡大施策については、卸会社としての本来のサービス機能である高い精度での物流サービスや付加価値情報の提供などを、顧客店舗と取引先メーカーの間に立って最適化し、相互の信頼関係をより強固なものとすることで実現していく。
また、顧客店舗に対しては「売れる店舗づくり」に向けた取り組みを、子会社のインストアマーケティングや関連会社である電通リテールマーケティングなどと連携して推進している。
一方、仕入先メーカーに対しては、同社の商品販売情報を収集・分析して、価値ある情報として提供するサービスを前下期より開始しており、顧客との信頼関係をより強固なものにしている。
商材ジャンルの拡大施策としては、今後需要の拡大が見込まれるシニアマーケットを対象とした商品の取扱いを強化していくほか、PB商品である「アドグッド」ブランドの商品開発を強化し、売上拡大につなげていく。
「アドグッド」ブランドでは、市場トレンドを先読みし、顧客ニーズに合致した「本当に求められている商品」の開発を行っていくことを基本方針としている。
当第2四半期累計の売上高は前年同期比2割増の15億円と開発アイテムの増加とともに着実に拡大しており、通期では35億円程度を見込んでいる。
自社開発品となるため収益性も高く、売上規模が拡大していけば利益率向上にも寄与することになる。
b)収益性向上施策
収益性の向上施策としては顧客ごとの収益管理を行っていくことでの総利益率の改善や、物流コスト及び間接コストの低減に取り組んでいる。
物流コストの低減では、拠点の再編による効率化を引き続き進めているほか、前述したように首都圏や九州エリアでの増設、並びに関西圏でも老朽化した施設の建替えを予定している。
一方、間接コストの効率化に関しては、各支店で行っている経理業務や受発注、仕入業務などの集約化を進めていく。
事務処理センターに関しては7拠点から5拠点に集約したが、2018年3月期以降は拠点ごとに行っている受発注や仕入、売掛金処理など各種業務を、業務ごとに1拠点で集中して行う組織体制に切り替えていく。
分散して行っていた機能を1拠点に集約することで、生産性をさらに向上し、余剰となる拠点を集約していくことになる。
このため、人員に関しては引き続き採用を抑制していく方針となっており、自然減もあって売上高に占める人件費率は低減傾向が続くものと予想される。
c) 事業拡大戦略
同社は2002年にダイカ(株)、伊藤伊(株)、(株)サンビックの3社が経営統合して設立され、以降M&Aを進めながら事業規模を拡大してきたが、2012年に(株)リビングあらた(旧(株)市野)を子会社化して以降はM&Aを実施していない。
収益性並びに財務基盤の強化を進めるため、合併によって肥大化した組織のスリム化に注力してきたためだ。
こうした取り組みの成果によって、業績が過去最高業績を更新するまで収益性が向上し、財務体質の改善も進んできたことから、2018年3月期以降は再び成長を加速していくため、成長事業への事業提携を含めたアライアンス政策などを積極的に進めていくものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
(3)あらた (T:2733)の中期成長戦略
2015年3月期からスタートした中期3ヶ年経営計画では、「次世代型卸商社」として更なる成長を目指していく基本方針を打ち出し、経営目標値として2017年3月期に売上高679,000百万円、経常利益6,700百万円、ROE6.0%、D/Eレシオ1倍を掲げてきた。
このうち、売上高、経常利益、ROEに関しては上回る公算が大きく、D/Eレシオについてもほぼ計画水準となる見通しだ。
中期経営計画で取り組んできた成長戦略、並びに収益性の向上や財務体質改善に向けた施策が順調に進み、成果となって表れているものと考えられる。
2018年3月期からスタートする新中期経営計画はこれから策定していくことになるが、引き続き従来の戦略を踏襲していくほか、更なる成長を目指して同業他社、異業種とのアライアンスなど事業統合にも取り組んでいくものと予想される。
それぞれの施策については以下のとおりとなる。
a)売上高拡大施策
売上高の拡大施策としては、販売チャネル・地域の範囲拡大、既存顧客での取引シェア拡大、商材ジャンルの拡大が挙げられる。
販売チャネル・地域の範囲拡大では、インターネット流通市場への販路拡大とアジア市場の開拓を進めてきた。
このうち、インターネット流通市場の開拓については順調に進んでいる。
国内EC市場の拡大に伴い、無店舗型のEC事業者向け売上高が増加傾向にあるほか、2015年以降は中国を中心とした越境EC市場の拡大を背景に、国内外の越境EC事業者からの引き合いも増加している。
訪日インバウンド需要の一部が国内リアル店舗での購入から越境ECにシフトしつつあり、同市場をいかに取り込んでいくことができるかが今後の売上成長のポイントとなる。
当第2四半期累計のEC事業者向け売上高は前年同期比5割増の53億円となっており、今後の成長が期待される。
一方、アジア市場への展開については、今回の中期経営計画の中で想定どおり進まなかった数少ない取り組みの1つで今後の課題となっている。
中国市場においては取扱商品をペット用品などに絞り、取引先も大手チェーンを中心にするなど事業規模を縮小し、効率性を重視した経営を行う方針に切り替えている。
このため、当面はジャペル香港子会社との連携を強化していく方向となる。
また、タイについては現地での日系小売企業の販売支援を継続しているが、足元では伸び悩んでおり、日系企業以外の顧客開拓を進めていくことが今後の課題となる。
既存顧客内のシェア拡大施策については、卸会社としての本来のサービス機能である高い精度での物流サービスや付加価値情報の提供などを、顧客店舗と取引先メーカーの間に立って最適化し、相互の信頼関係をより強固なものとすることで実現していく。
また、顧客店舗に対しては「売れる店舗づくり」に向けた取り組みを、子会社のインストアマーケティングや関連会社である電通リテールマーケティングなどと連携して推進している。
一方、仕入先メーカーに対しては、同社の商品販売情報を収集・分析して、価値ある情報として提供するサービスを前下期より開始しており、顧客との信頼関係をより強固なものにしている。
商材ジャンルの拡大施策としては、今後需要の拡大が見込まれるシニアマーケットを対象とした商品の取扱いを強化していくほか、PB商品である「アドグッド」ブランドの商品開発を強化し、売上拡大につなげていく。
「アドグッド」ブランドでは、市場トレンドを先読みし、顧客ニーズに合致した「本当に求められている商品」の開発を行っていくことを基本方針としている。
当第2四半期累計の売上高は前年同期比2割増の15億円と開発アイテムの増加とともに着実に拡大しており、通期では35億円程度を見込んでいる。
自社開発品となるため収益性も高く、売上規模が拡大していけば利益率向上にも寄与することになる。
b)収益性向上施策
収益性の向上施策としては顧客ごとの収益管理を行っていくことでの総利益率の改善や、物流コスト及び間接コストの低減に取り組んでいる。
物流コストの低減では、拠点の再編による効率化を引き続き進めているほか、前述したように首都圏や九州エリアでの増設、並びに関西圏でも老朽化した施設の建替えを予定している。
一方、間接コストの効率化に関しては、各支店で行っている経理業務や受発注、仕入業務などの集約化を進めていく。
事務処理センターに関しては7拠点から5拠点に集約したが、2018年3月期以降は拠点ごとに行っている受発注や仕入、売掛金処理など各種業務を、業務ごとに1拠点で集中して行う組織体制に切り替えていく。
分散して行っていた機能を1拠点に集約することで、生産性をさらに向上し、余剰となる拠点を集約していくことになる。
このため、人員に関しては引き続き採用を抑制していく方針となっており、自然減もあって売上高に占める人件費率は低減傾向が続くものと予想される。
c) 事業拡大戦略
同社は2002年にダイカ(株)、伊藤伊(株)、(株)サンビックの3社が経営統合して設立され、以降M&Aを進めながら事業規模を拡大してきたが、2012年に(株)リビングあらた(旧(株)市野)を子会社化して以降はM&Aを実施していない。
収益性並びに財務基盤の強化を進めるため、合併によって肥大化した組織のスリム化に注力してきたためだ。
こうした取り組みの成果によって、業績が過去最高業績を更新するまで収益性が向上し、財務体質の改善も進んできたことから、2018年3月期以降は再び成長を加速していくため、成長事業への事業提携を含めたアライアンス政策などを積極的に進めていくものと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)