[ニューヨーク 27日 ロイター] - 2010年代は米エネルギー株にとって失われた10年だった。供給増加に伴う商品価格の乱高下や軟調な企業業績、一部の投資家による業界への嫌気を背景に、エネルギー部門は「お気に入り」から「見捨てられた」投資先へと変異を遂げた。
米原油価格 (CLc1)は10年代に20%を超えて値を下げた。代替エネルギーの台頭も圧迫要因だった。一部の投資家は化石燃料への投資を無責任とみなし、投資を敬遠した。
IHSマークイットのダニエル・ヤーギン副会長は「皮肉なことに、米国が世界最大の原油生産国に登りつめ、主要な輸出国になった途端に投資家は業界に対して疑心暗鬼となり、『カネ儲け』を要求するようになった」と指摘。「業界は、1四半期だけでなく数四半期にわたり利益を生み出せることを証明しなければならない。今は試練の時だ」と付け加えた。
リフィニティブのデータによると、S&Pエネルギー株指数 (SPNY)は10年代に6%しか値上がりしなかった。一方、S&P総合500種 (SPX)は180%超上昇。配当を含めてもエネルギー株の上げは約39%にとどまったのに対し、S&P総合500種は250%を超える値上がりを見せた。
19年の予想を含めた過去10年間におけるエネルギー企業の利益は14.8%減少。半面、ほかの主要部門の利益は少なくとも28%増加した。エネルギー企業の軟調な業績によって株式市場における重要度も低下し、S&P総合500種に占めるエネルギー株のウエートは5%を下回る。米原油価格が1バレル=140ドルを超えた08年半ばには15%を上回っていた。
10年前の米原油生産は日量500万バレルに過ぎなかった。今は同1300万バレルまで急増し、豊富な供給が価格を押し下げた。天然ガスの生産も過去最高水準に高止まりしている。シモンズ・エナジーのマネジングディレクター、ピアース・ハモンド氏は「エネルギー企業はキャッシュフローを使い果たし、確かな利益を生み出さなかった」と述べる。
ただ20年を控え、一部の投資家はエネルギー部門にとって困難を振り切る時期が来たとみている。ホッジス・キャピタル・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ゲーリー・ブラッドショー氏は「原油は1バレル60ドルまで上昇したが、株価は1バレル40ドルを前提に取引されている」と語った。
投資顧問企業アラン・B・ランズ&アソシエイツは、石油大手のエクソンモービル (N:XOM)やシェブロン (N:CVX)、製油大手のマラソン・ペトロリアム (N:MPC)の株を買い、エネルギー部門の投資判断を「オーバーウエート」にするなど強気だ。
アラン・ランズ社長は、これまではマクロ経済面での「最悪の事態」によって商品価格が圧迫されたと指摘。例としてドル高や新興国経済の鈍化のほか、最近では先行きの米規制強化への懸念から掘削事業が加速した点を挙げた。ただ今後1年間でマクロ面や政治面での圧迫要因は和らぐとの見通しを示した。