[ブリュッセル 19日 ロイター] - 欧州連合(EU)の欧州委員会は19日、新たなデジタル戦略を発表した。EU域内の産業データを共有する単一市場を構築し、「GAFA」など米IT大手や国家の支援を受ける中国企業に対抗できる企業の育成を目指す。
新戦略では個人データ市場で覇権を握るアルファベット (O:GOOGL)傘下のグーグル、フェイスブック (O:FB)やアマゾン (O:AMZN)などの米巨大IT企業に歯止めをかけるための規則導入を含め、デジタル政策を見直す。
とりわけソーシャルメディアやオンライン・ショッピング、スマートフォンなど消費者市場で、デジタル革命の最初の波に乗り遅れたEUとしては、産業分野で失地を回復し、欧州企業が米国やアジアのデータに依存する事態は避けたい考えだ。
独シーメンスや仏アルストム (PA:ALSO)など欧州主要企業の工場の機械設備やシステムに蓄積された大量の産業データをプールし、企業が共有・活用できるようにする。産業データに軸足を置き、技術革新の次の波では先頭に立つことを期待する。
ブルトン欧州委員(域内市場担当)は記者会見で「産業データを巡る戦いが、今始まる。欧州が主戦場だ。欧州には巨大な産業基盤がある。今日の勝ち組が明日の勝ち組とはならない」と強調した。
ブルトン委員は、新戦略の鍵は産業データを蓄積・共有する「EUクラウド・プラットフォーム」の構築だと説明。EUはこのために最大20億ユーロ(22億ドル)を投じたい意向だとしたが、プラットフォームの詳細には言及しなかった。
単一のデータ市場に加えて、欧州委は主要産業の分野ごとにデータを蓄積するマーケットも構築する計画で、関係者からのフィードバックを得うえで年末までに計画の最終案をまとめたい意向だ。
データセンターの省エネ目標も掲げ、2030年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロにすることを目指す。
プラットフォーマーと呼ばれる巨大IT企業が個人データ市場を支配している状況への批判を踏まえ、欧州委はこうした企業がデータへのアクセス条件を一方的に押し付け、そうすることで過度な利益を得ることを阻止する規則の導入を検討している。
また、人工知能(AI)については、利用方法に関するルールを構築し、悪用されれば影響が大きい医療や運輸、治安などの分野に適用することを目指す。
ベステア委員(競争政策担当)は会見で、公共の場での顔認証について議論していきたい意向を明らかにした。欧州委は当初、公共の場での顔認証を禁止することを検討していたが、技術の進展を阻害するとの理由から見送った。