[チューリヒ 19日 ロイター] - スイス国立銀行(中銀)は19日、スイスフラン高を阻止するため、為替介入を強化すると発表した。
中銀は、新型コロナウイルスの感染拡大でフランの「価値がさらに高まっている」と指摘した。
政策金利はマイナス0.75%に据え置いた。中銀預金金利もマイナス0.75%に据え置いた。ロイター調査の予想通りだった。
スイス中銀の政策金利はすでに世界で最低水準。ジョルダン総裁は、利下げはスイスで現在見られている状況に対する解決策にはならないとの見解を示した。
中銀は、新型コロナの感染拡大に伴う景気減速に備えるため、スイス政府と緊密に連携して国内経済を下支えしていくと表明した。
中銀は「異例の状況の下、国内の適切な金融環境を確保するためには、これまでになく拡張的な金融政策の必要性が高まっている」と指摘。「外国為替市場により強力に介入し、状況の安定化に貢献する」とした。
また、金融システムの流動性を確保するため、さらに追加策を講じる姿勢も示した。現在は法定準備預金額の25倍までに設定しているマイナス金利の免除対象を、30倍までに引き上げる方針も示した。ジョルダン総裁はこれにより、銀行は年間で約6億フランを節減できるとの見方を示した。
中銀は2020年の成長率見通しを引き下げ、マイナス成長になると予想。従来は1.5─2%の成長を見込んでいた。
ジョルダン総裁は記者団に対し「スイス経済の大部分は活動を停止している」とし、「小売店は営業を停止し、人々は自宅で過ごしている。これらは新型ウイルスの感染拡大阻止に必要な措置だが、経済活動の低迷につながっている」と述べた。
ただ、スイス中銀はフラン高阻止に向けた市場介入の強化などを行うが、側面からの支援的な役割しか果たせない。総裁は「主要な対策は中央銀行が行うものではない。医療面、および財政面から行われる必要がある」とし、「経済の中で信用の流れが滞らないことを確実にし、企業がこの困難な時期を生き抜けるよう、中銀は金融システムに潤沢な流動性を供給する必要がある」と述べた。
報道によると、新型ウイルスの感染拡大に対応するためスイスでは政府、中銀、市場監督当局が総額400億─1000億フラン(1033億3000万ドル)の支援策を策定している。
ジョルダン総裁は具体的な内容については言及しなかったが、政府が国民に直接現金を支給するいわゆる「ヘリコプターマネー」政策が実施される公算は小さいことを示唆した。
ING銀行のエコノミストは、マイナス成長予想とともに政府との協力姿勢を表明することで、中銀は緊急の対策が必要とのメッセージを送っている、との見方を示した。「中銀は財政当局に圧力をかけ、景気下支え策を引き出そうとしているのではないか。SNBは明らかに大型財政出動を求めており、必要があれば金融政策で協調行動をとる考えだとみている」と指摘した。
*内容を追加しました。