Takahiko Wada
[東京 24日 ロイター] - 日銀は24日、「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)の全文を公表し、需要が回復している対面型サービスを中心に「賃上げの原資を得るべく、値上げをする動きが徐々に広がっている」と指摘した。定量分析でも、緩やかながら賃金を物価に反映させる動きが広がっているとうかがえるとした。
2%物価目標達成の前提として、日銀は賃金と物価の好循環の実現を掲げている。展望リポートでは、消費者物価を品目別に変動率に応じて3つのグループに分類。これまで変動が乏しかった「低変動品目」も、足元では緩やかに上昇していると指摘した。また、低変動品目、消費者物価の変動に占める賃金要因の寄与度、サービス価格のトレンドの3つを見ると「いずれも長らくゼロ近傍で推移してきたが、このところ緩やかに上昇している」とした。
日銀は23日に公表した展望リポートの「基本的見解」で、消費者物価の基調的な上昇率について、見通し期間終盤にかけて「物価目標に向けて徐々に高まっていく」と記した。その上で、先行きの不確実性はなお高いものの、こうした見通しが実現する確度は「引き続き、少しずつ高まっている」としたことで、市場では近い将来のマイナス金利解除が意識されている。
前回23年10月の展望リポートでは、賃金から物価への波及について「統計的に有意な変化は観察されない」と指摘していたが、今回は賃金と物価について前向きな分析が示された。
<需給ギャップ、プラス転換の時期記述なし>
10月の展望リポートでは、需給ギャップが「今年度半ばごろにはプラスに転じる」との記述が見られたが、今回はプラス転換の時期の記述は盛り込まれなかった。
需給ギャップがプラスに転じれば、基調的な物価上昇率の押し上げ要因になるが、日銀が9日に発表した23年7―9月期の需給ギャップの試算値はマイナス0.37%となり、4―6月期からマイナス幅が拡大した。
日銀版の需給ギャップは資本投入ギャップと労働投入ギャップで構成されているが、一部自動車メーカーの生産停止が響き、資本投入ギャップの改善が遅れるとみられている。
(和田崇彦 編集:田中志保)