[チューリヒ 24日 ロイター] - スイス国立銀行(中央銀行)は24日、政策金利をマイナス0.75%に据え置き、世界的に金融政策が引き締め方向にシフトする中、超緩和政策を維持した。ロシアのウクライナ侵攻で世界的に不確実性が大幅に高まったと指摘し、物価予想を引き上げた。
ロイターが今週まとめたエコノミスト調査でも、金利据え置きが予想されていた。
中銀は、ウクライナ危機の影響で物価が上昇すると予想。2022年のインフレ率予想を従来の2倍の2.1%に引き上げた。23年の予想も0.6%から0.9%に上方修正し、24年は0.9%と予想した。一方、今年の成長率予想は3%程度から2.5%に下方修正した。
通貨フランが「高く評価されている」という2017年9月以降示している見解を維持、フラン高に歯止めを掛けるため必要に応じて市場介入する方針も改めて示した。
ウクライナ侵攻を受けて、フランは対ユーロで7年ぶり高値に上昇。中銀はフラン押し下げ介入とともに異例の口先介入も行った。
その後フランは軟化したが、2月のインフレ率は2.2%と2008年以来の高水準で、中銀の目標レンジ(0─2%)の上限を上回った。
中銀は24日、政策対応に際し、為替の状況全般と、インフレ率の他国との違いを考慮すると表明した。これを受けアナリストからは、中銀が最近のフラン高をさほど懸念していないのではないか、との声が上がった。
物価予想の引き上げが、政策スタンス変化の兆しという指摘も出ている。
キャピタル・エコノミクスのデービッド・オクスリー氏は、物価予想の引き上げについて、世界的な引き締めシフトを背景に、長期にわたる政策維持局面が終わりに近づいているとの見方を示した。
クレディ・スイスのエコノミスト、マキシム・ボッテロン氏も、中銀が久方ぶりにインフレが加速する可能性を認めたと指摘、「若干タカ派トーンへの小さな一歩だ。ひとたび、あるいはもし、ウクライナ情勢に関連した不確実性が後退すれば、ハト派トーンを弱めるだろう。それが、2%を上回る長期インフレ予想やフラン相場の再評価につながる可能性がある。引き続き最初の利上げは23年6月と予想する」と述べた。