29日のNY外為市場序盤は、市場予想を大きく下回った1-3月期米実質国内総生産(GDP)速報値の内容を受けドル売り優勢の展開となった。EUR/USDは3月3日以来となる1.1188レベルまで急上昇する展開に。一方、USD/JPYは118.60レベルまで下落する局面が見られた。
NYタイム後半は、米連邦公開市場委員会(FOMC)声明で1-3月期における景気減速は一時的との見方が示され、且つ6月利上げの可能性を排除する表現もなかったことからドルを買い戻す動きが散見された。米金利の上昇もドル相場のサポート要因となり、EUR/USDは1.11前半へと反落。一方、USD/JPYは119円前後でこう着したまま本日の東京時間を迎えている。
1-3月期の米GDP速報値は年率換算で0.2%増と、2014年10-12月期の2.2%増から急減速。主因は3つ。①GDPの約7割を占める個人消費支出が前期比年率1.9%増となり、4.4%増と強い伸びを示した昨年10-12月期から急速に鈍化したこと、②ドル高を背景に輸出が7.2%減と4期ぶりのマイナスとなったこと、③民間設備投資が3.4%減となったことだった。一方、29日に公表されたFOMC声明では1-3月期の景気低迷は一時的な特殊要因(=悪天候と湾岸ストライキ)でもたらされた現象と指摘。また、6月利上げの可能性自体を排除する表現も盛り込まれなかったことで、早期の金融正常化を望むイエレンFRB とそれを許さない米指標データ、という構図が鮮明となってきた。
肝心の外為市場はドル安で反応している点を鑑みるに後者を重視。イエレンFRBが「Data Dependency-指標データ次第」スタンスを表明している以上、この反応は至極当然言えよう。
よって、今後ドル高トレンドへ回帰するためには、イエレンFRBが指摘するように1-3月期の低迷が特殊要因によってもたらされた現象であることを4月以降の米指標データが証明する必要がある。それによりGDP低下要因となった①と③のリスクがが払しょくされよう(③は原油相場の動向も影響しており50ドル近辺で底固めとなるか注目)。
ただ、これらリスク要因の払しょくに時間がかかっても、それは、ドル高調整スパンが長引くことで要因②のリスクが後退していくことを意味し、結果的には米国経済の押し上げ要因となろう。よって、4月の指標データが引き続き冴えない内容となりドル高回帰が遅れても、ドル安を背景に中長期スパンでは景気回復が期待できることを鑑みるに「短期スパン=ドル安警戒 / 中長期スパン=ドル高トレンド継続」、という予測に変更はない。
【テクニカル分析コメント】 -EUR/USD、攻防分岐は89日MA
レジスタンス
1.1250:オファー
1.1200:レジスタンスポイント
1.1182:89日MA (赤ライン)
サポート
1.1000:サポートポイント
1.0980:ビッド
1.0960:4/29安値
昨日は日足の一目/雲の上限を一時的にせよ上方ブレイクした。RSIも65.00前後まで上昇している点を鑑みるに、3月3日以来となる1.12台への再上昇が焦点として浮上してきた。
だが、それを達成するためには、昨日見事に上値をレジストした89日MAを突破する必要があろう。このMAの突破に成功すれば1.12台へ再上昇するとともに、オファーが観測されている1.1250レベルを視野にユーロのショートカバーが加速する展開を想定したい。
一方、下値は目先、1.10台の維持が焦点となろう。1.10以下の攻防へシフトした場合は、一目/基準線とクロスしている雲の下限(4/30時点、1.0855)を維持できるかが注目される。尚、ビッドは1.0980レベルに観測されている。
トレード戦略としては、利益確定売り(=利確)のポイントを一目/雲の上限及び89日MAと定め、ユーロ買いで攻めるのが面白い。
ただし、それ以上の上値追いは89日MAブレイク後のトレンド次第となろう。1.12台へと一気に上昇する展開となれば、利確のポイントを1.1250前後と定め再びロングで攻めたいところ。
逆に、89日MA前後で上値の重い展開ならば、ユーロ下落を想定しユーロショートで攻めたい。利確のポイントは、昨日高値からの23.60%戻し1.1031レベル、1.10レベル、ビッドが観測されている1.0980レベルそして昨日安値1.0960を想定したい。
日足チャート