Kate Abnett Gloria Dickie David Stanway
[ドバイ 11日 ロイター] - アラブ首長国連邦(UAE)で開催中の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で11日に公表された合意草案で、多くの国々が求めていた化石燃料の完全な「段階的廃止」が従来案から削除された。欧米や島しょ国は削除に反発している。
議論に詳しい情報筋によると、石油輸出国機構(OPEC)の盟主サウジアラビアが化石燃料に関する言及を削除するよう議長国のUAEに圧力をかけていた。
COP28の交渉関係者やオブザーバーはロイターに対し、主にサウジやロシアなどOPECプラス構成国が石油やガスの段階的廃止への合意に反対していると指摘した。
サウジ政府は11日、コメント要請に応じなかった。
COP28で議長を務めるUAEのジャベル産業・先端技術相は「やるべきことはまだたくさんある」とし、参加200カ国に対し合意成立に向けた取り組みを加速するよう呼びかけた。
国連のグテレス事務総長は記者団に対し、COP28の成功の中心的な指標は壊滅的な気候変動を回避するのに十分な速さで石炭や石油、ガスの使用を削減する合意を生み出せるかどうかだとして「全ての国が同時に化石燃料を段階的に廃止しなければならないということを意味しているわけではない」と言及した。
草案では、各国が温室効果ガス排出量を削減するために利用「可能な」8つの選択肢の一つとして「化石燃料の消費と生産の両方を公正かつ秩序があり、公平な方法で削減し、2050年より前、またはそれまで、あるいはその頃に実質ゼロを達成する」との内容を盛り込んだ。
他の選択肢には、30年までに再生可能エネルギーの容量3倍にすること、「衰えない石炭の急速な段階的削減」、二酸化炭素回収技術などの強化などが含まれている。
一方、欧州連合(EU)のフックストラ欧州委員(気候担当)は11日、合意草案を「期待外れ」とし、EU代表団は気候変動対策に向け必要だと思われる変更を得るために必要な限り話し合うと述べた。
ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は会議で、合意草案を強化する必要があると発言。「草案の文言はあるべき内容ではない。われわれの多くは、この10年で化石燃料の使用を大幅に削減し始め、ほぼ完全な廃止を目指すことを求めてきた」と語った。
すでに海面上昇の影響を受けている太平洋の島国サモアおよびマーシャル諸島の代表らは合意草案は死刑宣告だと訴えた。
ただ、一部の国の代表やオブザーバーは合意草案に対してより前向きな見方を示した。
シンクタンク「パワー・シフト・アフリカ」のディレクター、モハメド・アドウ氏は「合意草案は変革の基盤を築くもの」と評価。ブラジルの代表は「これは全ての関係者の視点を取り入れようとする試みであり、誰かを排除するものではない」とした。
世界最大の温室効果ガス排出国である中国が合意草案を支持しているかどうかは不明だ。中国代表団は議場を後にする際に質問に答えなかった。
COP28は12日0700GMT(日本時間午後4時)に閉幕予定だが、交渉が長引けば延長される可能性がある。