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アングル:ターゲットは富裕層、米国で活気づく高級RV市場

発行済 2024-03-25 12:31
更新済 2024-03-25 12:37
© Reuters. 米国の路上で見られるキャンピングトレーラー(RV)は、往々にして、まるで脱線して軌道から迷い出てしまった有蓋貨車のような無骨な姿だ。写真は、工場で磨かれる高級RV「ボーラ

Timothy Aeppel

[オックスナード(米カリフォルニア州) 18日 ロイター] - 米国の路上で見られるキャンピングトレーラー(RV)は、往々にして、まるで脱線して軌道から迷い出てしまった有蓋貨車のような無骨な姿だ。大半は、どんよりと曇ったインディアナ州エルクハートの殺風景な工場で生産され、もっぱら中所得層の顧客の旅行熱を満たしている。

しかし「ボーラス」は違う。非常に高額なキャンピングトレーラーで、ポルシェなどスポーツカーでもけん引できるから、ピックアップトラックは必要ない。

ボーラスが生産されるのは、エルクハートよりも晴天日数が年間100日も多い海辺の町、カリフォルニア州オックスナードだ。尖った最後尾に向かって伸びる、曲線を多用した1930年代風のデザイン、ミニマリストな内装、最上位モデルなら標準的な1世帯向け住宅の8割近い31万ドル(約4700万円)という価格――RVの常識はほぼ打ち破られた。

ボーラスを見れば、富裕層が少なくとも支出行動に関して他の階層とまったく異なっていることがわかる。米連邦準備理事会(FRB)がインフレ抑制のために金融引き締めを続ける中、米国の富裕層は自動車や住宅、旅行に大枚をはたき、米国経済を回し続けている。

ボーラスへの需要は、他のあらゆるRVと同じく、新型コロナ禍の期間中に急増した。

業界団体であるRV産業協会によれば、昨年は医療危機の緩和に伴ってRVの出荷が40%近くも急減した。だが、RVの販売が低迷する一方で、ボーラスは作る端から売れていくほどの人気を維持した。

ボーラスは現在、普及版の提供と、ディーラー経由での販売の解禁によって業容を拡大しつつある。

<「大切なのはマインドセット」>

ミシガン大学消費者信頼感指数によれば、昨年初以来、所得分布の上位25%に属する家計の態度は、一貫して低所得層よりも先行している。直近の第4四半期では、下位層の25%が59.6だったのに対して、上位層の数値は71.3だった。

ボーラスのジュネーバ・ロング最高経営責任者(CEO)は、他の多くのメーカーが不振にあえぐ中で同社が成長を維持できた理由を聞かれ、新型コロナ禍のもとで「作りすぎもしなかった」からだと語った。RV業界が抱える問題の1つは、大半の工場がコロナ禍のもとで持続不可能なレベルまで生産を拡大してしまい、その後の需要急減により完成車の在庫を山ほど抱え込んでしまったことだ。

確かに、ボーラスの場合、生産過剰にはなりそうにない。同社の工場は、整然とした工業団地の奥にひっそりとたたずみ、主力の組み立てラインには10台分のスペースしかない。

ボーラスは財務状況については明らかにしていないが、ロングCEOは、今年のトレーラー製造予定は100台で、その後は「品質を維持しつつ毎年拡大する」と述べている。

ボーラス製トレーラーの製造は、時間も手間もかかる作業だ。35人の労働者が内装家具を手作りし、日本のハイテク繊維素材を縫製してシートを作り、アルミ板に手作業でリベットを打ち、磨き上げる。完成したトレーラーには、たとえば広々としたバスルームや室内空間を拡大するためのスライドウォールなど、他の高級RVが追い求める快適装備の多くは見当たらない。

ロングCEOによれば、顧客はボーラス製品のシンプルさと品質を評価しているという。同CEOはキャンプ文化についてもかなりの純粋主義者で、31万ドルのモデルでさえテレビは付属していない。ただし今後はすべてのトレーラーにオプション装備としてテレビも用意する予定だ。「ボーラスの顧客は自家用飛行機を購入する階層だ。大切なのはそのマインドセットだ」とロングCEOは言う。

他のメーカーも、この高級キャンピングトレーラーというニッチ市場に参入している。テクノロジー企業の元幹部らが経営する別のカリフォルニア企業が開発中のバッテリー駆動トレーラーもその1例だ。

<「コカコーラのボトル」>

ボーラスが最初に設計されたのは大恐慌時代、ロサンゼルスの航空機エンジニアによるものだ。当時の最先端である航空機製造技術を応用し、独自のアルミニウム製外殻とエアロダイナミクスに配慮した膨らみのある形状を採用した。

だが当時は、数台を製造しただけで事業は閉鎖された。時は流れて2014年、ロングCEOの親族がボーラスをよみがえらせ、オリジナル同様の個性的な形状で尖ったテールと前端のドアを備えたトレーラーの販売を開始した。

ボーラスはこの形状を商標登録している。ロングCEOに言わせれば、それは「コカコーラのボトルのように」象徴的なものだ。

ボーラスのようにモノコック(「単一の殻」を意味するフランス語)構造を採用するRVは珍しい。ボーラスは航空機と同様、底部も含めて一体となったアルミニウム製外殻を備えており、重量のあるフレームを必要とせず、非常に軽量だが剛性は高い。車長の同じ「エアストリーム」に比べ、ボーラスの重量は約半分だ。

<多彩な競合他社>

ボーラスを含む成長中のニッチ市場には、新たにバッテリー装備のトレーラーを開発中の小規模メーカーや既存メーカーの姿もある。

テネシー州ナッシュビルのエアロビルドは、屋根を覆うソーラーパネルを備えた全長約6.4メートルのトレーラーの販売を開始した。ボーラス同様、ターゲットは富裕層だ。「細部の調整や仕上げには費用を惜しまない」とブライアン・フエンテCEOは言う。「フレームに至るまで、すべてを何世代も使えるように設計した」 価格は12万9900ドルだ。

ペブルという別のスタートアップは、バッテリーを装備したトレーラーを開発中だ。このバッテリーはハイウェイ走行時の推進力を補助し、トレーラーをけん引する車の航続距離を増やす役割も担う。従来のキャンピングトレーラーは、重量増のせいでけん引役となるEVの航続距離が低下するという問題を抱えている。

ペブルで最も低価格のモデルは10万9000ドル。一方、ボーラスの全長を少し切り詰めたニューモデルは16万5000ドルだ。

© Reuters. 米国の路上で見られるキャンピングトレーラー(RV)は、往々にして、まるで脱線して軌道から迷い出てしまった有蓋貨車のような無骨な姿だ。写真は、工場で磨かれる高級RV「ボーラス」。カリフォルニア州オックスナードで2月23日撮影(2024年 ロイター/Timothy Aeppel)

全米25カ所のディーラーを運営し、そのうち5つでボーラスの提供を開始したばかりのレイジーデーズRVのジョン・ノースCEOは、「こうしたハイエンド製品の市場の実態については、まだ誰も確かなことを言えずにいる」と語る。

「複数の顧客が興味を示している」とノースCEOは言うが、ボーラスの取扱いを始めて2カ月足らず、まだ1台目の納車には至っていない。

(翻訳:エァクレーレン)

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