まずは、先週のイベントを振り返りながら相場の動きをおさらいしましょう。
週前半には、中国GDPの発表があり、市場予想6..8%に対し、結果は6.9%でほぼ変わらず。ドル建て貴金属相場に変化はありませんでした。
週後半には、ECB理事会があり、会見でドラギ総裁が12月に向けて、金融緩和実行を示唆したことから、ユーロが一段安になり、為替はユーロ安・ドル高になりました。
通常は、ドル高ではドル建ての金は下落する傾向にあるのですが、今回はユーロ発のユーロ安で相対的にドル高になったにすぎず、ドル建て金への影響は限定的でした。
週末には、中国が金利引き下げに動くというサプライズがありました。ドル建ての金は一時上昇しましたが、結局上ヒゲをつけて陰線引けになっています。為替のドル高で弱含んだという見方がありますが、もう一つ注目すべき材料があります。
それは、投機筋の買いポジションが大きく膨らんだことです。
NY金の投機筋の買いポジションは、10月20日付で、800トンを超えて、900トンに迫っています。
一方の売りポジションは減少し300トンを割れる勢いです。
これは売り手が売りポジションを手仕舞って、新規に買いを入れたことが要因で、売り買いの差引(買い越し)は、今年1月に迫る勢いになっています。
その今年1月の相場状況ですが、1300ドル台をつけていました。下のチャートをご覧ください。
当時は新興国の通貨不安によりドル建て金が急上昇しましたが、通貨不安が落ち着くと、今度は米国の利上げ観測でドル建て金は下落のトレンドを形成してずっと下げてきました。
その反動もあり利上げ先送りで買いが積みあがってきていたのです。しかし、利上げはいつかはあるため今年1月のように投機筋の買いポジションが700トンを超えるような状況にはならないとみています。
週末の失速の原因は買いすぎにあり、その調整の動きがでてきました。先週、買いポジションが膨らんできたため、目先は調整するとお話しましたが、相場はその通りの展開になってきています。
それでは、調整はどこまであるのでしょうか。
目安は1150ドル付近にある一目均衡表の基準線で、これで止まらないと積みあがった買いポジションの調整がさらに出る恐れがあり雲の上限1130ドルまではあるでしょう。
ただし、7月からの切り上げてきたトレンドでは維持するとみています。逆にここまでの調整があったほうが、今後1200ドルを目指す上で、足元がしっかりした上昇を築けるでしょう。
白金相場の展望
金同様に、白金も投機筋のポジションを確認しておきましょう。
金と白金の違う点は、白金は買いが増加していないことから新規買いは入っておらず、フォルクスワーゲン問題で積みあがった売りの買い手仕舞い(ショートカバー)で相場が上昇したに過ぎないということです。
直近の下落はショートカバーの失速が原因で、白金は買いが積みあがっておらず、金のように積みあがった買いの手仕舞いはなく、下落は限定的です。
白金の調整ですが、一目均衡表の基準線~雲の上限(960~970ドル)が目安になります。このあたりではサポートされるのではないでしょうか。
為替相場の展望~円安が下支えに~
東京の貴金属相場は為替相場がどうなるかも重要です。
ECBドラギ総裁の発言、中国の利下げでリスクオンとなり円安が進んでいます。
ドル円の日足では、雲を上抜き、2か月ほど揉みあっていたレンジも上に抜けそうです。
さらに、2012年からの傾向に注目してきましたドル円の週足では、傾向通り雲上限に接近したところから反発する形になりました。
日銀の金融政策決定会合が週末10/30にあります。
黒田バズーカと言われたような大きなサプライズは考えていませんが、先週のECB、中国に続き、何らかの金融緩和が出る可能性があるとみています。
東京の貴金属相場は、ドル建ての調整分を円安が下支えする形になり、調整幅は50円~100円程度で済むでしょう。
当記事は、「セントラルマーケットコラム~経済金融・コモディティ~」からの転載です。またコラムでは、経済金融、貴金属のスペシャリストによるコラムも掲載しております。こちらもぜひご覧ください。