投資家マインドは、なかなか掴みどころが難しい。株高は「全員賛成」のはずが、そうでもないようなのである。前週末13日の日経平均株価が、678円高と急反発し、今年3月23日(816円高)以来の上昇幅となったのに浮かぬ顔をみせる投資家が少なくない。なかでもソフトバンクグループ<9984>(東証プライム)が、6営業日ぶりに12%超も急反発し、1銘柄で日経平均株価を115円超も押し上げ寄与度ランキングのトップとなったことには当惑の表情さえみせた。
同社株は、5月12日に前2022年3月期業績を発表し、純利益が、前々期の過去最高(4兆9879億円)から1兆7080億円の赤字と過去最大の赤字に転落、ほぼ全員が、ことし4月15日につけた年初来安値4210円を更新することは必至で、最悪ケースでは「ソフトバンクグループ・ショック」に見舞われることも覚悟したに違いないのである。それが逆行高である。株式情報番組のコメンター諸氏も、お手上げ状態のように見受けられ、コメントは株価後追いの域を出なかった。
これは東京市場だけでないようである。東京市場のあとにオープンした前週末13日の米国市場も、ダウ工業株30種平均(NYダウ)は、466ドル高と7営業日ぶりに急反発し、ナスダック総合株価指数は3.8%上昇と今年最大の上昇率となっていずれも年初来安値から持ち直したが、歯切れのいい相場解説は聞こえてこない。むしろ週末の急反発にもかかわらず、NYダウは週足では7週連続の下落で、これは2001年5月~7月以来21年ぶりとのコメントが大手を振るった。消費者物価指数が年率で8%超も高騰し、FRB(米連邦準備制度理事会)が、このインフレ抑制のために政策金利を6月、7月と引き上げ、引き上げ幅が0.75%に加速するとも観測されているとなれば当然だろう。
投資セオリーは、「株価は株価に聞け」と教えている。しかしどう耳を傾けて、株価ははっきり方向感を示してくれそうもなく、週明けも、多くの投資家は前週末の急反騰に素直にフォローしていいものか気迷わざるを得ない。買い先行か売りから入るか、攻めるか守るか、「買いたい弱気」と「売りたい強気」の間の股裂き状態である。折から前週末13日にピークアウトした3月期決算会社の業績発表では、確かに新聞の証券欄には「7割の企業が最終増益」、「過去最高利益」などの大見出し(ヘッドライン)が躍ったが、よくよく精読すればいずれも、前2022年3月期決算のことで、今2023年3月期業績は、資源価格の上昇やサプライチェーンの混乱などから保守的に減益転換を見込む会社の割合が高い。さらにウクライナ情勢の地政学リスク、中国のコロナ対応のロックダウン(都市閉鎖)などと軟弱材料も目につく。
そこで今週の当特集では、攻防両用の保険付き、バッファー(緩衝材)付きの銘柄にフォーカスすることを提案することとした。保険付き・バッファー付き銘柄とは、自己株式取得を発表し推進中の割安株である。自己株式取得を発表した銘柄は、今年4月21日に3月期決算と同時に発表した日本電産<6594>(東証プライム)以来、前週末13日までで190社超にのぼる。取得総額は、NTT<9432>(東証プライム)の4000億円をトップに1億円弱まで千差万別で、取得方法も立会外買付取引も含まれるが、このうち投資採算的に割安な銘柄である。
自己株式取得は、もちろん株主への利益還元のための資本政策である。これに加えて経営者が、自社の株価が安過ぎるとするアナウンス効果もあるといわれており、仮にマーケットが波乱様相を強めることになっても、最後の買い主体となって一定の株価激変緩和効果が期待できるはずで、現に日本電産は、すでに4月30日までの5営業日で42億円超の取得を行った。さらにヤマダホールディングス<9831>(東証プライム)のように、取得総額1000億円の自己株式取得を発表し、取得株式総数が発行済み株式総数の23.9%に達するとしてストップ高したケースもあり、場合によっては株高効果も期待できることになる。取得総額4000億円から20億円の銘柄に絞ってスクリーングしても、有望銘柄が目白押しとなる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)