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アングル:日本企業の海外M&A、円安でも再加速へ コロナ禍で抑制

発行済 2022-07-07 11:54
更新済 2022-07-07 12:00

[東京 7日 ロイター] - コロナ禍でペースが鈍っていた日本企業の海外M&A(企業の買収・合併)が再加速しそうだ。需要が細っていく国内市場を横目に海外に成長を求めるニーズは強く、水面下の案件が増加。金利上昇を受けて欧米企業の買収意欲が減ったこともあり、24年ぶりの円安も逆風とはなっていない。

<100年のトレンド>

「円安ではあるが、いいご縁に恵まれた」。サッポロホールディングスは6月、米クラフトメーカーのストーンブリューイング(カリフォルニア州)買収を発表した。これまでは自社ブランドをカナダやベトナムで製造し、米国へ輸送していたが、物流費の高騰が利益を圧迫する中、現地に工場を構え、米国展開に弾みをつける考えだ。同社の広報担当者は、米国での製造拠点の獲得が長年の課題だったという。

積水ハウスも米戸建て住宅企業チェスマー・グループ(テキサス州)傘下の事業会社4社の買収を発表した。西海岸から南部へ事業エリアを広げるため、同社独自の工法や販売手法を取り入れながら成長していくという考えに共感できる相手を探していたが、「(投資を)早期に回収できる見込みも立ち、買収を決めた」(広報担当者)という。

多くの日本企業にとって人口が減少する国内市場での成長には限界がある。JPモルガン証券の投資銀行部M&Aグループ責任者の土居浩一郎氏は、海外に成長を求めるのは「100年のトレンド」だとみる。

土居氏によると「パイプラインは、去年より積み上がっている」。国内案件に加え、日本企業による海外事業の買収(アウトバウンド)も底堅いという。

投資銀行のM&A担当者の間では、幅広いセクターでアウトバウンドの関心が高く、成長余力のある米国市場を狙う企業が多いとの声も上がる。

<コロナ禍の反動>

海外企業の買収が勢いを増している要因として、コロナ禍となった過去2年間の反動も大きい。

リフィニティブによると、アウトバウンド案件は2019年に過去最高の947件だったが、その後、2020年には693件まで落ち込んだ。2021年も731件とコロナ禍前の水準を2割以上下回る。

現地で対象企業の調査をすることができず、買収をためらう動きもあったからだが、渡航制限の緩和を受け、「今年に入ってから環境が変わった」と大和証券コーポレート・アドバイザリー第二部長の改田浩規氏は指摘する。

長島・大野・常松法律事務所でM&Aを担当する大沼真弁護士も「コロナ禍で停滞していたアウトバウンドの案件が回復基調にある」と話す。

野村証券経営役の角田慎介氏は、海外の成長を取り込もうとする場合、海外企業の買収は「マストハブ。円安が買収を止める理由になりづらい」とみる。

角田氏は、ドル高によって円建ての買収価格が上がるものの、対象事業から得る利益も同様に増えると指摘。大型M&Aを行う企業は資金調達に支障はないケースも多いと解説する。

実際、近年の海外企業をターゲットにした大型買収も円安局面で行われた。

2002年以来の1ドル=125円台まで円安が進んだ2015年には東京海上ホールディングスが米保険会社を75億3000万ドル(当時の為替で約9400億円)で買収した。アウトバウンドの買収案件は10兆円を超えた。

<海外の環境変化も後押し>

日本企業による買収案件が底堅いとみる要因の一つに海外での金利上昇を挙げる関係者もいる。大和証券の改田氏は「欧米の調達環境の悪化で現地企業の買収意欲が減った結果、日本企業に案件が持ち込まれる例も増える可能性がある」との見方を示す。

もっとも買収活動が円安以外の要因で抑えられる可能性もある。

野村証券の角田氏は「原料高、資源・エネルギー高の価格転嫁の成否、サプライチェーンの見直しで、買収対象企業の価値を見極めるのが難しくなっている」と述べている。

(浦中美穂、山崎牧子、清水律子 編集:石田仁志)

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