■業績動向1. 2019年3月期の業績動向Jストリーム (T:4308)の2019年3月期の業績は、売上高6,781百万円(前期比11.1%増)、営業利益313百万円(同12.4%減)、経常利益319百万円(同13.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益195百万円(同32.0%減)となった。
引き続き医薬系企業の情報提供にかかるライブ配信や、一般企業の社内における動画利用など堅調な需要が見込める市場を中心に、配信能力とWeb・動画制作能力とを組み合わせた提案や、「J-Stream Equipmedia」や「J-Stream CDNext」などの配信サービスの提供に努めた。
販売面においては、医薬系業界を中心としたライブ配信の受注が、特に上期において想定を下回る結果となった。
一方、コンテンツ配信サービスサイトの運用やサイトの機能強化に伴って実施されるシステム開発など、メディア系で大口受注を獲得した。
情報共有・情報提供に関連するシステム、アプリ開発やWebサイト構築、一般企業のWebサイトリニューアルといった比較的大口の案件も獲得することができた。
売上増加の一因は技術商社であるイノコスを連結したことである。
一方、原価面においては、労務費、外注費、業務委託手数料が増加した。
労務費の増加は制作系子会社での内製化推進による採用強化、外注費と業務委託手数料の増加はメディア系で大口の運用業務やライブ配信、システム開発やサイト運用支援などの受注増が要因で、イノコスの販売機器仕入分も新たに売上原価に乗った。
このため売上総利益率が低下したが、子会社増による人件費や家賃、本社で進めている業務プロセス効率化のためのシステム化に伴う業務委託手数料が増加したものの、販管費については全般的に抑制が効いて微増に留めることができた。
なお、2019年3月期の業績がやや厳しい内容になった最大の要因は、第1四半期中心にライブ講演会の減少など医薬向けの売上高が減少したことにある。
ここ3年、高コストと言われるMRを利用した対面営業から、利便性が高く低コストのWeb講演会による情報発信などへと医薬業界での販促方法が変化してきた。
同社はこうした傾向を取り込んで成長してきたが、主要医薬メーカーをほぼカバーしつつあることに加え、第1四半期に顧客の販売戦略の遅れや組織変更、価格競争などが生じ、一時的に一巡感が生じたことが、ライブ講演会減少の背景にあると考えられる。
しかし、医薬ブランドや地方拠点といった小ぶりな単位のライブ配信に関してはこれから展開が進むと考えられ、依然大きな開拓余地が残されていることから、現場対応力などに優れる同社の受注は徐々に回復しつつあるようだ。
ちなみに、同社は医薬向けライブ配信の増加があまりに急だったことに対して以前から懸念を持っていたため、メディア系など他の分野の強化も同時に進めていた。
このため、医薬系を除く売上高が前期比13.1%増と大きく伸び、医薬系の苦戦を若干カバーすることができた。
特に放送・メディア系の売上高は同23.4%増と非常に好調だった。
セグメント別では、配信事業が売上高3,524百万円(前期比2.0%増)、セグメント利益925百万円(同15.3%減)、制作・システム開発事業が売上高2,515百万円(同9.5%増)、セグメント利益151百万円(同97.3%増)、その他の事業が741百万円(同112.5%増)、セグメント損失45百万円(前期は50百万円の損失)となった。
配信事業は、医薬業界のライブ配信の受注が想定を下回ったが、その他一般企業における情報共有や教育用途の動画、メディア系のコンテンツ配信の技術サポート、VRなど新技術を活用したライブ配信を受託した。
しかし、代理販売サービスの活用や外注費支出が増加したため利益率は低下した。
制作・システム開発事業は、メディア系のコンテンツ配信にかかる各種開発や、金融業界を中心とした情報提供・情報共有や販売促進向けの動画やWebサイトの制作で比較的大口の受注を獲得した。
さらに集客を意図したスタジオ構築、教育用動画配信関連のシステム開発などの受注も得られた。
制作系子会社における動画制作受注は、厳しい環境が続いたが、営業・管理強化策が奏効し回復基調に入りつつある。
その他の事業は、2018年3月期に子会社化したイノコスの、エンコードなど設備の販売を伴うインテグレーションサービスの売上高が新たに計上された。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)