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焦点:ロックダウン緩和の中国、消費者の財布のひもは緩まず

発行済 2022-06-10 12:55
更新済 2022-06-10 13:01
© Reuters.  6月7日、失速しつつある中国経済の頼みの綱は、上海など大都市でロックダウンから解放されつつある消費者たちだ。写真は、営業を再開した北京のレストラン。2日撮影(2022年

Kevin Yao Sophie Yu

[北京 7日 ロイター] - 失速しつつある中国経済の頼みの綱は、上海など大都市でロックダウンから解放されつつある消費者たちだ。だがそうした期待とは裏腹に、携帯電話の買い替えを先送りしたウー・レイさん(37)のような人々もいる。

北京でサッカーコーチとして働き、2人の娘を育てるウーさんは、「4月に市当局が放課後のスポーツクラブ活動の中止を命じて以来、収入のかなりの部分を失ってしまった」と語る。中国の厳格な「ゼロコロナ」政策のもと、首都北京では5週間にわたって続いた事実上のロックダウンは、6日に緩和された。

「ふだんの月でも暮らしに余裕があるわけではないが、今はまさに経済的に困窮している感じだ」とウーさんは言う。

中国は国内最大規模の都市のいくつかで、新型コロナ対策により低迷した消費を活性化させる措置をとりつつある。だが、商品券や、自動車購入やデジタル人民元での決済への補助といった政策は細切れで、グローバル経済における他の主要国に比べて小規模だ。政策担当者が執着しているのは、企業やインフラに重点をおく、いつもながらの景気刺激策だ。

アナリストらは、そうした景気刺激策では消費支出の回復を後押しするには十分ではないという。中国経済は輸出・投資依存の偏重から脱却しつつあり、消費支出は第1四半期における経済成長の3分の2以上を担っていた。消費支出の回復が十分でなければ、グローバル経済の成長に不可欠の推進役である世界第2の経済大国が回復する勢いも削がれてしまう。

上海を拠点とする調査・マーケティング会社チャイナ・スキニーでマネージングディレクターを務めるマーク・タナー氏は、「消費者は動揺している」と指摘する。

「中国の消費者は、かつての自信を失ってしまった。感染力の強いオミクロン株をずっと封じ込められるのかという不安も1つの要因だが、他国に比べて回復の実感が弱いせいでもある」とタナー氏。

アナリストらによれば、回復を妨げているのはロックダウンによる収入減だけではない。雇用の安定と新型コロナ対策のための行動制限に対する不安が長引いていること、さらには消費者により多くの資金を迅速に環流させる政策に対して当局が及び腰であることが影響しているという。

中国の4月の小売売上高は前年同月比で11.1%減となり、2年前に武漢市で国内初の新型コロナ感染拡大が生じて以来、最大の下落幅を記録した。

2年前の急減速の後、ルイ・ヴィトンやグッチなど高級ブランド市場では堅調な回復が見られたが、消費全般としては伸び悩んだ。2020年の小売売上高は前年度比で3.9%減、これは1968年以降初めてのマイナス成長だ。

とはいえ、中国経済全体としての2020年の成長率は2.2%で、同年第1四半期の記録的な不振から回復し、世界の主要国の中で唯一プラス成長となった。

それに比べて今回は雲行きが怪しい、とアナリストらは言う。かつて活況に湧いた不動産・テクノロジー部門の足取りは不確かで、雇用状況への不安のせいで、ロックダウン緩和の後でよく見られる、買い物客が猛烈な勢いで店舗に押し寄せる「リベンジ消費」の勢いも損なわれている。

中国の都市部における失業率は4月に6.1%に上昇。これは2020年2月以来の高水準で、政府の目標上限値である5.5%を大きく上回っている。エコノミストの中には、雇用市場に加わる大学新卒者の数が過去最高になることから、雇用状況が回復する前に、さらに一段の悪化があると予想する声もある。

<ロックダウン再開の懸念>

新たなロックダウンに入るという不安も、特に上海では大きい。かつてのフランス人居留地で、並木道に彩られた高級住宅街では、先週末、新たな新型コロナ感染者が見つかったためフェンスで封鎖され、住民は隔離された。

3月にロックダウンが1週間続いた深センの住民は、地下鉄やタクシーを利用したり、ショッピングモールや公園に入るためには、72時間ごとに検査を受けなければならなかった。飲食店や美容室の従業員によれば、この制度が導入されて以来、利用者が減少したという。北京や上海でも似たようなルールが適用されている。

だが、中国当局は先進諸国のような現金給付による消費喚起には消極的だ。

財政面での制約もある。また、政府が経済格差の是正を公約に掲げる一方で、現金給付は、ロックダウンにより最も深刻な打撃を受けた最富裕地域を利する結果になるという懸念もある。さらに当局は、一般に倹約志向の強い中国の消費者に現金を給付しても、消費より貯蓄に回るのではないかとも懸念している。

結局、中国指導部が発表した政策パッケージでは、新型コロナで打撃を受けた企業を支援し、投資を奨励する一方で、消費の促進は自動車や家電製品の購入に限定された。

深センでは商品券の配布に5億元(約100億円)、家電製品の購入補助に1億元の予算を配分した。合計しても、住民1人当たり約5ドル(約670円)相当だ。

上海では、電気自動車に買い替える住民に1万元(約20万円)の補助金を支給している。2カ月に及ぶロックダウンで打撃を受けた経済の再起動に向けた同市の対策の大部分は、企業支援にフォーカスするものだ。

パンデミックによって苦境に陥った消費者に対する支援がこれだけでは、2020年初頭以降、多くの米国民が3200ドル(約43万円)の給付金を受け取っているのに比べて見劣りがする。

深センの招商証券でエコノミストとして活動するチャン・イーピン氏は、「当局は消費活性化に向けた政策を展開しているが、消費のV字回復は期待できない」と語る。

「人々の収入は減少しており、雇用にも非常に大きなプレッシャーがかかっているからだ」

消費の低迷を受けて、エコノミストや政策アドバイザーの間では、政府がもっと消費者支援に向けて直接的な刺激策をとるべきか否かという議論が生じている。

かつて世界銀行でチーフエコノミストを務めた北京大学のリン・イーフー教授は、ロックダウン対象となった地域の世帯に1000元を支給することを提言する。同じく北京大学のヤオ・ヤン教授はさらに踏み込み、政府は住民1人当たり1000元を、できればデジタル通貨で支給してはどうかと示唆している。

だが政府の内情に詳しい関係者は、中国の政策担当者が企業支援とインフラ関連プロジェクトを優先する姿勢を改める兆候はないと語る。

かつて中国財務省系のシンクタンクを率い、現在は新供給経済学研究院を運営するジア・カン氏は、ロイターに対し、「効果的な投資の促進にフォーカスすべきだ。投資が不足していれば、消費はすぐに行き詰まる」と語った。

(翻訳:エァクレーレン)

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