[ブリュッセル 14日 ロイター] - 欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長は14日、エネルギー価格高対策として、低コストの発電事業者の収入に上限を設けたり、化石燃料企業にはエネルギー価格高騰で得た利益を分配させる措置を提案すると述べた。
フォンデアライエン委員長は欧州議会で「(ウクライナ)戦争の恩恵を享受し記録的な収益を受け取るのは間違っている。このような局面では、利益を分配し最も必要としている人々に還元されなければならない」と訴えた。
一連の措置により1400億ユーロ(1400億ドル)以上の歳入増が見込まれ、加盟国は企業や家計などの支援に用いることができるとした。
EUではエネルギー価格の上限設定も議論しており、欧州天然ガス価格の指標としてオランダTTF先物に代わる「より代表的なベンチマーク」の確立に取り組んでいると説明した。
欧州委の提案では、風力発電所、太陽光発電所、原子力発電所は、1メガワット時(MWh)当たりの発電収入に180ユーロ(180ドル)の上限を設定する。これが適用されると、発電事業者の収入は現在の市場価格の半分以下に制限される。
石油、ガス、石炭、精製企業は、2022年度から課税超過利益の33%の拠出が義務付けられる。
フォンデアライエン委員長によると、欧州委はピーク時の電力使用量を5%削減することを各国に義務付ける目標を提案した。
ただ当初計画していたロシア産ガス価格の上限設定は見送った。域内では、より広範な上限価格設定が冬のエネルギー供給確保の取り組みに資するかどうか意見が分かれている。
同委員長は上限価格について欧州委で「議論している」と述べ、ノルウェーとガス価格の引き下げについて協議を開始したことを明らかにした。
欧州委のカドリ・シムソン委員(エネルギー担当)は同日、欧州委はロシア産ガス価格の上限設定を引き続き望んでいるが、この措置の影響を評価するためにはさらなる作業が必要とした。
このほか欧州委は、流動性危機に直面している企業への支援策として、エネルギー市場の担保要件を修正する計画も進めている。
フォンデアライエン委員長は、電力価格をガス価格高騰から切り離すため電力市場の一段の改革を計画していると述べた。
一部のエネルギー会社はEUが見込む歳入額について疑問を呈した。風力発電などの事業者は固定価格契約で電力を販売しているため、市場の高い電力価格から大きな利益を得ているわけではないからだ。
欧州電気事業連合のクリスティアン・ルビー事務局長は「再生可能エネルギーや低炭素電力の生産者に収入の上限を設けるという提案は、投資家の信頼を損ねる危険性がある」と述べた。