[ロンドン 21日 ロイター] - 英国立統計局(ONS)が21日発表した5月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比8.7%と、4月と同水準だった。イングランド銀行(英中央銀行)に対する利上げ圧力が一段と高まる結果となった。
ロイターがまとめた市場予想では8.4%に鈍化すると予想されていた。
統計発表を受け、ポンドは一時、対ドルと対ユーロで急伸したが、その後は上昇分をほとんど失った。
エネルギー・食品・アルコール・たばこを除くコアインフレ率は6.8%から7.1%に加速し、1992年以来の高水準となった。
サービス価格も7.4%上昇し92年以来の高い伸びを記録した。
ONSは「航空運賃の上昇率が1年前を上回った。航空運賃は例年の5月よりも高い」と指摘。「中古車、コンサート、コンピューターゲームも値上がりし、インフレ高止まりの原因となった」と述べた。
食品・飲料の価格上昇率は18.3%で、前月の19.0%から若干鈍化した。
パンテオン・マクロエコノミクスの英国担当チーフエコノミスト、サミュエル・トゥームズ氏は「向こう数カ月にわたって政策金利を大幅に引き上げるよう、金融政策委員会に圧力がかかる」と指摘した。
キャピタル・エコノミクスの英国チーフエコノミスト、ポール・ダレス氏は、インフレ率が予想を上回ったことで、英中銀が22日に0.5%利上げする可能性が高まったとみる。「コアインフレ率の急上昇と賃金伸び率の再加速はインフレ圧力がなお強まっていることを示している。英中銀が、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)よりもさらなる措置を取る必要があることを意味する」と述べた。
英中銀は22日に13回連続となる利上げを決めるとみられている。
市場は英中銀が22日に0.5%利上げする確率を40%と予測。これまでは0.25%の利上げが予想されていた。政策金利が年内に6%に達する確率は60%となっている。
ハント財務相は記者団に「今日の統計で政府が信念を貫く根拠が強まった。海外の事例を見れば、金利上昇が長期的にインフレ抑制につながることが分かる。この国でもそれが起きる」と述べた。
JPモルガン・アセット・マネジメントのEMEA(欧州・中東・アフリカ)チーフストラテジストでハント財務相の諮問委員会のメンバーでもあるカレン・ワード氏は、インフレ高止まりで英中銀の政策に疑問符が付いたとし、「国内に起因するインフレについて英中銀は幾分判断を誤っている」と述べた。
英中銀は先月、インフレ率が今年第4・四半期に5%強に低下し、25年初めには目標の2%を下回ると予想した。
英労働市場は、長期の病欠などでコロナ前の規模に回復していない。
この日公表された民間調査によると、英国企業の労使が3─5月に妥結した賃上げ率(基本給)は中央値で6%と、1991年の調査開始以来最高の水準に並んだ。
ただ、物価圧力が今後緩和する可能性もある。ONSが発表した5月の生産者物価(PPI)産出指数は前年比2.9%上昇と、4月の5.2%から減速し、2021年3月以来の低い伸びとなった。
INGのエコノミスト、ジェームズ・スミス氏は、ガソリン・エネルギー価格の低下でインフレ率が7月までに7%を下回ると予想し、英中銀が6%まで政策金利を引き上げるという市場の見方は行き過ぎだと指摘した。