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焦点:生産悪化、駆け込みへの期待空振り 経済対策の議論も

発行済 2019-09-30 14:38
更新済 2019-09-30 14:41
焦点:生産悪化、駆け込みへの期待空振り 経済対策の議論も

竹本能文 中川泉

[東京 30日 ロイター] - 8月の鉱工業生産指数が大幅に悪化した。7-9月も前期比でマイナスに転じる公算が大きく、増税前の駆け込み増産どころか、外需の悪化を内需で下支えきれない姿が浮かびあがる。不透明な需要見通しから企業が設備投資に慎重姿勢を強めているほか、国内消費も増税後の実質購買力低下で先行きに不安がある。遠からず、政府の景気認識が改めて問われる場面が訪れ、経済対策の議論が活発化しそうだ。

<7─9月生産は再び減産に>

「消費増税前の駆け込み需要が期待されたが、フタを開けてみれば生産・出荷とも低迷している」(SMBC日興証券・シニアエコノミストの宮前耕也氏)。8月が予想以上の減産となったことにエコノミストの間では、ネガティブ・ショックが走った。

中身をみると、鉄鋼や液晶製造装置、自動車など主要業種の落ち込みが足を引っ張り、生産指数は今年2番目の低水準となった。9月の生産予測指数は前月比プラス1.9%と増加する見通しだが、上振れ傾向のあるこの予測が実現しても7─9月の生産水準は102.5と4-6月実績の103.0を下回る見通しだ。

8月の生産者在庫率も前月比2.8%上昇と現行の2015年基準で過去最高となり、経済産業省幹部は「在庫の高止まりが生産に与える影響を注視する」と警戒感を示す。

こうした状況のもと、同省は生産の基調判断を「このところ弱含み」に引き下げた。

<輸出の不安晴れず、設備投資には慎重姿勢>

減産色が強まっている背景には、輸出の低迷と設備投資への慎重姿勢がある。

実質輸出をみると、昨年夏以降、停滞傾向に陥り、回復感は乏しい。7─8月平均は4─6月をまだ1.8%程度上回っており、これまで悪化していた生産用機械などの資本財や半導体関連などの情報関連財は持ち直しつつあるように見える。

一方、ここへきて悪化が目立つのが自動車関連財だ。4-6月の落ち込みは7、8月にさらに拡大している。国別でみれば、米国向けの減少が大きい。日米通商協定が合意に達したとはいえ、米国向け自動車への通商拡大法232条による高関税賦課が回避されるとの明示的な文言は協定に入らなかったため、輸出不安は残ったままだ。

世界経済を左右する米中摩擦も、仮に合意に至ってもこれまでの追加関税を全面撤回する可能性は見込めず、影響は残るとの見方が大勢だ。日本の製造業にとっては、世界経済の不透明感が引き続き重くのしかかり、設備投資への慎重姿勢にもつながっている。

ロイターの9月企業調査によると、今年度の設備投資計画で様子見や先送りをしている案件があると回答した企業は56%と半数強を占めた。「先行き不透明感が増す中、業績も芳しくなく、計画見直しを迫られている」(機械)、「中長期の需要を見直す必要が出ている」(輸送用機器)といった声がある。

ニッセイ基礎研究所の斉藤太郎・ 経済調査部長は、設備投資の牽引力が徐々に弱まっているとみている。

斉藤氏は、設備投資と関連性の高い資本財(除く輸送機械)や建設財は7、8月平均が前期を下回っていると指摘。製造業の設備投資が弱くても、非製造業が駆け込み需要などで支えて伸びるとみていたが、14年の増税前の1─3月期と比べると、GDPベースの設備投資はかなり低い伸びにとどまりそうだと予想している。

<消費にリスク、経済対策の議論活発化へ>

生産が悪化したことを受けて、8月の「景気動向指数」の判断は再び「悪化」となる可能性が強まり、政府の景気認識を巡って議論が高まるとみられる。しかも、増税実施による消費の基調が景気の下押しを深くする可能性もある。

8月の商業動態統計を見る限り、エアコンや冷蔵庫などの販売増を受け、機械器具小売業の販売が前年比12.1%と大幅に増えており、「買い替え需要」(経済官庁幹部)は出ているもよう。

もっとも、政府・与党は、今回の消費増税では十分な対策を講じており、駆け込みもその反動も少ないとの公式見解を繰り返している。

農林中金総合研究所の南武志・主席研究員は「実質購買力の目減りは避けられない」と指摘。政府の手厚い消費税対策の効果で景気の「谷」は浅くなるだろうが、10月以降の消費は水準が下がり、非製造業全体に悪化が広がるリスクは意識していくべきと見ている。

与党内では消費の基調が弱まるなかでの増税を懸念する声も強く、政府の景気認識が改めて問われる中で、今後の経済対策に関する議論が徐々に活発になってきそうだ。

(編集:石田仁志)

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