[ワシントン 14日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)は13─14日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げをいったん停止した。一方、同時に発表した金利見通しは、予想を上回る景気の堅調さと緩慢なインフレ鈍化ペースを踏まえ、年末までに合計0.50%ポイントの利上げを行うシナリオを示した。
決定は全会一致。これまで10会合連続で利上げをしてきたが、今回はフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を5.00─5.25%で据え置いた。
会合後に会見したパウエル議長は、米経済と労働市場は過去1年の積極的な金融引き締めにもかかわらず想定より堅調で、持ちこたえているとの認識を示した。今回の停止は、再利上げの必要性を判断する前に追加情報の点検に慎重を期すためだと説明し、利上げペースよりも適切な最終到達点を見いだすことが重要になっているとした。
FOMCは声明で、政策金利を今回据え置くことで次の行動を取る前に「追加情報とその金融政策上の重要性を評価することが可能になる」とした。
パウエル氏は7月FOMCについて、当局者らは何ら決定していないとし、今後の状況次第で常に変化する「ライブ会合」になると語った。
FRBが公表した最新の金利・経済見通しについてパウエル氏は、経済成長率の見通しをやや引き上げ、失業率予測を引き下げ、インフレ見通しを上方修正したと説明。「想定よりも抑制的である必要性」が示唆されたと言明した。
政策当局者が見込む2023年末の政策金利の予想中央値は5.50─5.75%。当局者18人のうち半数が同水準への利上げを見込んだほか、3人はこれを上回る水準への利上げを予想。そのうち1人は6%を超えるとの見方を示した。
パウエル氏は一方、「インフレ低下に必要な条件が整いつつある」とも述べ、トレンドを下回る成長率、やや軟化した労働市場、供給網の改善に触れた。ただ、これら要因が「実際にインフレに作用するには一定の時間を要する」とした。
ソシエテ・ジェネラルの米金利戦略責任者、スバドラ・ラジャッパ氏は今回の決定について、追加利上げが必要になる場合に備えて選択肢を維持しながらも、インフレ率が想定より速いペースで鈍化することも想定して確約はしなかったと分析。政策金利見通しの『ドットチャートはタカ派的だったが、パウエル氏は市場に対し、タカ派的と見なすべきではないというメッセージをうまく伝えた」と評した。
実際、金利先物市場は年内にあと1回、0.25%の利上げを行うシナリオを織り込んでいる。7月FOMCの利上げ確率は65%にやや上昇した。
<より堅調な経済見通し>
議長はインフレの上振れリスクに改めて言及したが、金利据え置き決定は労働市場への悪影響を最小限に抑えて物価上昇率を抑制する狙いがあるとした。
新たな経済予測で、23年の成長率見通し中央値は1.0%と3月時点の0.4%から上方修正された。23年末の失業率見通しは4.1%と、3月時点の4.6%から大幅に下方修正した。5月の失業率は3.7%。
また、コア個人消費支出(PCE)価格指数の見通し中央値は23年末で3.9%と現在の4.7%から低下すると想定。ただ3月時点の3.6%からは上方修正した。
FOMCの結果発表後に米国株は一時下落したが、S&P総合500種とナスダック総合は引けにかけて小幅高に転じた。ダウ工業株30種は反落して終了した。
<商業用不動産融資に広範な脅威なし>
パウエル議長は、米国の商業用不動産融資は依然として圧力を受けているが、広範な金融システムを脅かす可能性は低いとの見解を示した。また、FRBは商業用不動産のリスクを注意深く見守っており、損失が発生することを予想していると述べた。
商業用不動産融資は金融システムに広く浸透しているものの、小規模な銀行が保有していることが多いため、金融システム全体に問題が発生するリスクは低いとした。その上で、この分野の問題がしばらく続くとの見通しを示した。
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