[東京 21日 ロイター] - 岸田文雄首相は21日、通常国会の閉会を受けて記者会見し、今国会での成果を強調するとともに、衆議院の解散や内閣改造・自民党役員人事について、政権の基本姿勢に照らして判断すると述べた。補正予算の編成は経済・物価の状況などを見極める考えを示した。
首相は、内閣が提出した法案の60本中58本が成立するなど「過去10年の通常国会に比べても高いレベルで堅実な成果を上げられた」と強調。重要法案として位置付けた防衛力強化のための財源確保法案の成立のめどがたったことから、会期中の衆院解散を見送ったと説明した。
今後の人事の時期などについて「具体的に考えているわけではない」と述べ、まずは先送りできない政策課題への対応を進め、その進み具合をみながら結果を出すためにどのような人事が必要なのか考えていくと語った。
物価高対策などのための補正予算の編成については、経済・物価動向、国民生活や事業活動の状況をみながら必要に応じて適切に対応していくとし、国際的なエネルギー市場の変化も見極めると話した。
首相は、この上半期、経済成長と外交・安全保障の取り組み強化への思いを強くもって政権運営をしてきたと説明。高水準の賃上げや33年ぶりの株価水準など日本経済に前向きな動きがみられる中、賃上げが当たり前となる経済への道筋を着実なものにしたいと語った。
半導体、バイオ、AI(人工知能)などの戦略分野について、年末に向けて投資支援パッケージを作っていくことも表明した。
最先端の半導体に関しては、次世代のデジタル技術を支えるキーテクノロジーであり、競争力強化の観点だけでなく、経済安全保障のためにも産業基盤を国内に確保することが重要だと指摘した。
官民が連携して立ち上げた半導体新会社ラピダス(東京都千代田区)のプロジェクトは国際連携のもとで量産化まで見据えたものとなっており、「進捗を十分確認しながら政府として適切にサポートしていく」と述べた。
<マイナンバーのトラブル多発、「重く受け止め」>
このところマイナンバーをめぐるトラブルが多発していることには「重く受け止めている」とし、政府内に関係省庁横断組織を21日に立ち上げ、国民不安の払しょくのためコロナ対応並みの臨戦態勢で取り組むよう指示したと述べた。
現行の保険証を来年秋に廃止する従来方針は堅持するとしつつ、国民不安が払しょくできるまでは廃止しないとも強調した。
首相は、来月リトアニアで開催される北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に出席するとともに、ベルギーで日EU(欧州連合)首脳会談を行うと述べた。その後、中東のサウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、カタールを訪問するとした。
自身の中国訪問について「決まったものはない」としつつ、日中関係を巡ってはあらゆるレベルで緊密な意思疎通を行うと述べた。対北朝鮮でも首脳会談実現に向けてハイレベル協議の開催に意欲を示した。
憲法改正については、来年9月の自民党総裁任期までに努力するとした。
(杉山健太郎、竹本能文)