[ロンドン 11日 ロイター] - 英国立統計局(ONS)が11日発表した3─5月の賃金上昇率は過去最高に並んだ。ただ、労働市場には減速の兆しも見られ、ポンドが小幅に上昇する一方で、2年債利回りは急低下した。
市場はイングランド銀行(英中央銀行)の政策金利が約50%の確率で2024年初めに6.5%でピークに達すると予想している。現行の政策金利は5%。
3─5月の賃金はボーナスを除いたベースで前年比7.3%上昇し、ロイターがまとめたエコノミスト予想(7.1%上昇)を上回った。上昇率は過去最高に並んだ。2─4月は7.2%から上方修正され、過去最高の7.3%。2021年4─6月も7.3%だった。
ポンドは対ドルで15カ月ぶり高値に上昇した。
一方、失業率は3.8%から予想外に悪化し4.0%となった。求人件数も引き続き減少し、21年半ば以来の低水準。
キャピタル・エコノミクスのエコノミスト、アシュレー・ウェブ氏は「労働市場は5月に需給がやや緩和した。賃金の伸びに多少鈍化の兆しが見られる」とした上で「賃金の伸びは依然として2%のインフレ目標に合致する水準を大幅に上回っており、中銀のインフレに対する懸念が大幅に緩和することはないだろう」と述べた。
ボーナスを含む賃金は前年比6.9%上昇。上昇率は、政府の補助金で統計がゆがんだ新型コロナウイルス流行時を除くベースで過去最高だった。
中銀は賃金の伸びを注視。中銀のベイリー総裁は10日、「物価と賃金の現在の上昇率は(英中銀の)物価目標と一致していない」とし、物価上昇率を押し下げるため責務を果たしていくと改めて表明した。
パンテオン・マクロエコノミクスのサミュエル・トゥームス氏は、中銀が今回の統計に減速の兆しを見て取り、近く利上げを停止する可能性があると指摘。ただ、次回8月3日の政策発表で利上げを停止することはないだろうとの見方を示した。
同氏は「現時点で賃金は急上昇しており、金融政策委員会が継続的にこうした上昇を容認することはできない」とした上で「ただ労働市場の緩みの変化が賃金の伸びに影響を及ぼすには必ず少し時間かかる。一部の先行指標は引き続き心強い」と述べた。