[北京 11日 ロイター] - 7月の中国の新規銀行融資は前月から89%減少し、2009年終盤以来の低水準となった。当局が景気支援の方針を示しているが、家計、企業向けの融資も減少した。
中国人民銀行(中央銀行)が11日発表した7月の新規人民元建て融資は3459億元(478億ドル)。6月の3兆0500億元から急減し、アナリストの予想(8000億元)も大幅に下回った。前年同月の6790億元からも大きく減少した。
マネーサプライM2の前年比伸び率は10.7%で6月の11.3%から低下。アナリストの予想(11%)も下回った。
7月末時点の人民元建て融資残高は前年比11.1%増加。6月およびアナリスト予想は11.3%増だった。
住宅ローンを中心とする家計向け融資は6月の9639億元から2007億元減少した。企業向け融資も6月の2兆2800億元から2378億元へ急減した。
上半期の融資は人民銀の需要・投資支援措置を背景に記録的な水準になった。7月は季節的に減少する傾向があるが、今週、物価や貿易の統計でも弱い数字が出ており、中国当局にはより強力な刺激措置を打つ圧力がかかる。
キャピタル・エコノミクスは顧客ノートで「7月の融資の伸びは7カ月ぶりの低水準で、広義の信用の伸び率も過去最低となった。(早ければ15日にも)政策金利が下げられ、今後数カ月の間に政府債の発行が急増すると予想するが、企業・家計の心理に広範な改善が見られなければ、信用の伸びを大きく加速させることはないだろう」と述べた。
社会融資総量残高の前年比伸び率は8.9%と、6月の9.0%から鈍化した。
社会融資総量は、通常の銀行融資に加え、新規株式公開、信託会社の融資、債券発行などを含む広義の与信・流動性を示す。
7月の社会融資総量は5282億元と、前月の4兆2200億元から大きく落ち込んだ。アナリスト予想は1兆1000億元だった。
<弱い借り入れ需要>
人民銀行(中央銀行)は20日、銀行貸出金利の指標となる最優遇貸出金利(ローンプライムレート、LPR)の1年物と5年物を0.1%ポイント引き下げた。引き下げは10カ月ぶり。多くのアナリストが年内に小幅な引き下げを予想するが、消費者や企業に借り入れする気がなければ、景気を急回復させる効果は乏しいとみる。
華金証券のエコノミストは「弱い融資データは、実体経済の借り入れ需要の弱さを反映する。企業が必要としない時に借金を強いるのは良くない」と指摘した。
新型コロナウイルス感染防止のための3年にわたる厳格な規制を経て、企業も家計も貯蓄を積み上げ、借り入れや支出を減らしており、一部エコノミストはバランスシート・リセッションのリスクを指摘する。
地方政府は、中央政府からインフラ事業の原資を調達するため債券発行を加速するよう指示されており、さらなる財政刺激策が予想される。