John Revill
[チューリヒ 21日 ロイター] - スイス国立銀行(中央銀行)は21日、政策金利を1.75%に据え置いた。据え置きは2022年3月以来。ジョルダン総裁は「様子見」局面に入ったと述べたが、物価動向次第で利上げする姿勢も示した。
ロイター調査では0.25%ポイントの利上げが予想されていた。ただ8月のインフレ率が7月と同じく1.6%で中銀の目標レンジ(0─2%)内に収まったことから、短期金融市場では五分五分とみていた。
スイス中銀は5回連続の利上げで政策金利を250bp引き上げた。
声明は「ここ数四半期の大幅な金融引き締めが、インフレ圧力に対抗している」と表明。そのうえで「中期的な物価安定確保へ、さらなる金融引き締めが必要になる可能性は否定できない」とし、今後数カ月の物価動向を注視していくと付け加えた。
ジョルダン総裁は会見で「今回は様子を見て次回、これまで取ってきた政策措置が物価が安定と見なすレンジに持続的にとどまるのに十分か検証することが可能な状況になった」と述べた。
ただ追加利上げの選択肢も温存し「インフレ率が2%を持続的に下回るようにするために必要であれば政策引き締めをためらわない」とした。
総裁は「インフレをめぐる戦いはまだ終わっていない。インフレ圧力は残っており、インフレ圧力が再び高まるかどうかは正確には分からない」と指摘。今後2カ月は状況を注視し追加引き締めが必要かどうか12月に判断すると述べた。
ピクテ・ウェルス・マネジメントのシニアエコノミストは、「スイス中銀は総じて他の中銀より楽な立場にあるが、インフレとの戦いに勝利したとは宣言しなかった」と指摘。その上で予想外のインフレ急伸がない限り利上げ終了とし、「当面は政策金利を据え置くだろう」と述べた。
中銀は今年の経済成長率は1%程度との予想を維持したが、第2・四半期の景気停滞も考慮したとみられている。
UBSのシニアエコノミストは、「国内経済は現在、インフレと経済リスクに直面している。利上げ見送りはインフレリスクよりも景気懸念を中銀は重視していることを示す」と語った。
Jサフラ・サラシンのエコノミスト、カルステン・ユニウス氏は、欧州中央銀行(ECB)が先週利上げしたことを踏まえ、スイス中銀は独自の政策判断を下したとし、「金利据え置きは、インフレ圧力が和らぎ、スイスフランが上昇し、景気減速の兆候が出ているためだ」と指摘。追加利上げを示唆したことを挙げ「タカ派な据え置き」と述べた。
中銀は、23年と24年のインフレ率予想を2.2%に据え置いたが、25年は6月予想の2.1%から1.9%に下方修正した。
今年の経済成長率予想は1%程度に据え置いた。
前日、スイス政府は、今年の成長率予想を1.1%から1.3%へ引き上げる一方で、24年は1.5%から1.2%へ引き下げた。インフレ率予想は今年が2.2%、24年は1.9%。