[上海/シンガポール 28日 ロイター] - 中国の一部ヘッジファンドは、ダイレクトマーケットアクセス(DMA=証券取引所への直接注文)とスワップ取引を駆使した戦略で、低調な株式市場において非常に高いリターンを稼ぎ出している。ブローカーの勘定を利用した「DMAスワップ」と呼ばれるこの取引は、ブローカー側にも収入が入る仕組みになっている一方、ヘッジファンドがレバレッジ規制をすり抜け、多額の借り入れで大きなポジションを構築できるという側面もある。
DMAスワップは、ヘッジファンドとブローカーが厳しい経済環境で何とか利益を得ようと協力して生み出した中国特有の取引。一部の関連商品のリターンは150%を超え、主力株で構成するCSI3000指数が年初来で4%のマイナスとなっている状況と対照的だ。ソーシャルメディアでは、こうしたヘッジファンドによる荒稼ぎに風当たりも強まっている。また事情に詳しい2人の関係者は先週ロイターに、規制当局がDMAを巡るデータについてブローカーを調べていると明かした。
アナリストによると、ヘッジファンドがこの手法を使えば、証拠金1ドルに対して4倍の借り入れが可能になるため、読みが外れた場合には問題が起こりかねない。こうした高倍率のレバレッジと市場での突然予想外の事態発生が組み合わされば、投資家が大やけどを負うだけでなく、ブローカーも痛手を受け、市場全体に混乱が波及するからだ。
通常、資産運用会社のレバレッジ比率は2倍が限度と定められているが、DMAスワップはブローカーの自己勘定取引とみなされてこの規制が適用されない。
専門家からは「DMAスワップは極めて高いレバレッジと結びついているので、投資家は警戒しなければならない」と注意を促す声が出ている。
中国でDMAスワップ関連商品の全体的な規模を示す公式データは存在しない。ただ主要なブローカーは近年、増収を狙ってこの事業を強化している。