ドル/円
正午現在 80.80/82 1.4304/04 115.58/60
午前9時現在 80.74/78 1.4310/13 115.56/62
NY17時現在 80.91/93 1.4284/88 115.54/59
--------------------------------------------------------------------------------
[東京 28日 ロイター] 正午のドル/円は、ニューヨーク市場午後5時時点から
小幅安の80円後半で推移している。海外市場からの上昇地合いに乗って、6月半ばから
のレジスタンスである81円の上値をトライしたが、月末の実需売りに押されて攻めきれ
ずに80円後半でもみあった。ユーロ/ドルは海外市場でギリシャ支援に向けた楽観論を
背景に買われ、アジア時間早朝にかけて1.4330ドルまで上昇した。しかし、買い一
巡後は上値が重くなり、1.4300ドル付近でのもみあいに転じた。
ドル/円は海外市場で6月16日以来の80.98円まで上昇。ギリシャ支援への楽観
論が広がり米長期金利が上昇したことに加え、米国株の上昇でクロス円も買われ、ドル/
円を押し上げた。アジア時間早朝にかけて81円の上値をトライする展開が続いたが、東
京勢の参入とともにドル/円の上値は重くなった。
スポットベースの月末応答日とあって実需の売りが先行したという。また、朝方にユー
ロ/円で国内投資家の売りが出たこともドル/円を重くし、ドルはじりじりと売られて一
時80.72円まで下値を切り下げた。「81.10円付近にはストップロスもあるが、
月末ということもあり実需売りが優勢だ」(国内銀行)との声が上がっている。
81円は、6月半ばからドルの上値を押さえ込んできたレジスタンスでもある。「81
円を抜けなかったことが心理的に大きい。ドルはじわじわ下に向かう可能性がある」(邦
銀)との声が聞かれた。
ユーロ/ドルは、海外市場でギリシャ支援をめぐって楽観論が広がったことに加え、当
面のレンジの下方領域という水準感もあって買いが先行。アジア時間早朝にかけて
1.4330ドルまで上昇した。前日安値(1.4102ドル)からは230ポイント近
く切り返した。
しかし、アジア時間の上値追いは、1.4300ドルから上にあったストップロスをつ
けたためで、付け終わったあとは買いが一巡。「余計な上ひげをつけた」(国内銀行)と
の声も上がっている。
「ユーロの1.4330ドル付近では売りが厚かった」(邦銀)といい、むしろ上値の
重さが意識されて、その後は1.4300ドルをはさんだもみあいに転じた。ギリシャ問
題でまだハードルが多いため「ユーロの上値は、短期的には1.43ドル半ばが限界だ」
(国内銀行)という。
海外市場では、ユーロが当面のレンジの下方領域にあったことでギリシャ支援策に反応
したが、水準を切り上げたことで反応が鈍っており、レンジの上限を抜けるだけの材料で
はないとみられている。
<EUがギリシャ議会の緊縮案否決に備え代替策を検討>
ギリシャ支援問題は、ギリシャの緊縮財政計画の議会採決を皮切りに、ギリシャの足元
の資金繰りと来年以降の支援の枠組み作りをめぐり、7月半ばのギリシャ債の償還をにら
んでヤマ場を迎える。
海外市場で広がった楽観論の背景は、ひとつには新内閣が議会で信任を得ているため、
市場がギリシャの緊縮財政計画は可決されるとの見方に傾いていることがある。みずほ証
券グローバルエコノミスト、林秀毅氏もこの立場にたつが「与野党の議席数は僅差。否決
の可能性もある」とリスクシナリオも視野に入れている。
関係筋によると、欧州連合(EU)当局者は、ギリシャの緊縮財政計画が議会で否決さ
れ、EU・国際通貨基金(IMF)による120億ユーロの次回融資が実施されない場合
に備え、デフォルト(債務不履行)回避のための流動性を確保をねらった対応策を検討し
ている。ある関係筋は、デフォルト回避に向けた選択肢の1つとして第三者による新たな
融資提供を挙げた。
林氏は「すでにギリシャ国債を保有している銀行は、デフォルトを回避したいだろう。
ギリシャの銀行は余裕がないだろうが、比較的余裕のあるフランスやドイツの大手銀行が
つなぎ融資をする可能性はあるのではないか。EUはデフォルト回避を前提に議論してい
るはずだ」とみている。
しかし、ユーロを大きく買い上がるだけの安心感にはつながらないという。「EUが否
決の場合のデフォルト回避策を考えているとしても、ギリシャ国債が売られるなかで時間
との戦いだ。このため、ユーロの上値余地はそう大きくない。1.43ドル前半は重そう
だ。7月3日の会合までで考えても、せいぜい(上値は)1.4550ドルか」とみてい
る。
<ギリシャ支援のフランス案では、機関投資家のユーロ離れ続く>
海外市場でのギリシャ支援をめぐる楽観論のもうひとつの背景は、ギリシャ国債のロー
ルオーバーに関するフランスの銀行の計画が明らかになったこと。
サルコジ仏大統領はパリで開いた記者会見で、フランスの銀行が償還を迎える国債の自
発的な借り換えで当局と基本合意に達したことを明らかにした。フランスの複数の政府筋
によると、大筋合意に基づき、銀行は2011─14年に償還されるギリシャ国債のうち
70%の償還資金を再投資し、残り30%を清算する。再投資の50%は新たな30年債
に、20%はトリプルA格付けのゼロクーポン債に充当する。
これについて、ステート・ストリート銀行金融市場部長、富田公彦氏は「銀行は、財政
赤字の国の債券を30年という長期の債券にロールオーバーして、株主代表訴訟に耐えら
れるのか。デフォルトされるより財務的には楽かもしれないが、30年債の評価など会計
的な扱いも難しそうだ。塩漬けによる機会損失を考えれば、格付けをにらんだ自主性の確
保という面でもハードルは高い」 と指摘。
ギリシャ支援は、昨年の1100億ユーロの支援パッケージに続いて2度目の取りまと
めになる。しかし「支援が短期的な金繰りに矮小化しがちで、財政赤字削減という抜本的
な解決につながるか不透明。2度あることは3度あるということにもなりかねない。他の
周辺国への伝染リスクも払しょくできない」(富田氏)とみている。
このため、このスキームではユーロが機関投資家の信頼を取り戻すことは難しいという。
「機関投資家は、既存のロングが大きいだけにまだ売り切れていないが、短期的なスタン
スはかなり強いユーロ売りになっている。今回のスキームでは、短期的にユーロ買い戻す
可能性はあっても、再び長期的にロングを積み上げるには至らない」(富田氏)という。
(ロイターニュース 松平陽子)