ドル・円相場は2017年3月以来の高値水準に切り上げた後、失速しています。
南アフリカで新たに検出された新型コロナウイルス変異株による不透明感が背景にあります。
米金融政策への影響が懸念されれば、ドル高円安の基調が変わる可能性も出てきました。
11月24日の米感謝祭を前に米連邦準備理事会(FRB)のトップ人事で、バイデン政権はパウエル議長の再任とブレイナード理事の副議長昇格を決定。
今後、議会での手続きを経て正式決定する見通しです。
それにより金融政策の不透明感は払しょくされ、今後の引き締め加速への期待感からドル・円は17年3月以来4年8カ月ぶりの高値圏である115円51銭まで一時値を切り上げました。
しかし、感謝祭翌日の「ブラックフライデー」はまさに「暗黒の金曜日」になりました。
南アで新型コロナ変異株「オミクロン型」が検出され、アジア市場では世界経済への影響を懸念したリスク回避の円買いが優勢に。
この日はNY株式市場の短縮取引で連休モードとなったため、薄商いのなか主要株価指数は急落。
NYダウは今年最大級の下げ幅を記録し、原油相場や米金利も大きく下げ、市場は混乱状態に陥りました。
12月に入っても不安定な相場が続きます。
世界各国のオミクロン株の感染状況やワクチンの有効性が注目されています。
特に製薬大手の幹部が現行のワクチンに懐疑的な見方を示しており、今後の市場の動向を揺さぶる要因になりました。
アメリカでもオミクロン株の感染者が確認され、世界経済をけん引してきた米国経済の成長が腰折れとなるとの見方が金利安低下とドル安を誘発しているようです。
目下、オミクロン株の米金融政策への影響が注目されるなか、12月10日発表の消費者物価指数(CPI)は高水準ながら前月より伸びが鈍化する見通し。
14-15日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)では資産買い入れの縮小(テーパリング)の加速や来年の利上げ加速が期待されます。
が、市場はFRBがタカ派姿勢を弱める可能性を織り込み始めており、米金利の低下によるドル売りが続いています。
また、株価や原油相場の下落で資源国通貨を中心にクロス円の下落傾向が顕著になっており、ドル・円は2カ月ぶりの安値水準まで値を下げる場面もありました。
FRBによる来年2回の利上げシナリオが崩れればドル安・円買いが進むでしょう。
半面、オミクロン株の「霧」が晴れれば115円台を目指すともみられ、当面は安値圏でもみ合う展開が予想されます。
(吉池 威)
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