Laila Bassam Nidal al-Mughrabi Arafat Barbakh
[ベイルート/エルサレム/カイロ/ガザ 3日 ロイター] - イスラム組織ハマス幹部のサレハ・アルーリ氏が2日夜、イスラエルによる攻撃で死亡した。レバノンとパレスチナの治安関係筋が明らかにした。イスラエルはレバノンの首都ベイルート郊外のダヒエにあるイスラム教シーア派組織ヒズボラの拠点を小型無人機(ドローン)で攻撃したという。パレスチナ自治区ガザの紛争が周辺地域に拡大する可能性がある。
イスラエル軍はロイターの取材に対し、外国メディアの報道には答えないと回答。イスラエルのネタニヤフ首相の上級顧問を務めるマーク・レゲブ氏はMSNBCに対し、イスラエルはこの攻撃の責任を持っていないとした上で、「誰が攻撃したにせよ、これは国家としてのレバノンに対する攻撃ではないと明確にしなければならない」とし、「誰が実施したとしても、これはハマス指導部に対する攻撃だ」と述べた。
アルーリ氏はハマスの副政治局長で、昨年10月7日にイスラエルに対する奇襲攻撃を敢行したハマスの軍事部門「カッサム旅団」の創設者の1人だった。イスラエルが10月の奇襲攻撃を受けハマスに対する軍事作戦を開始してから殺害された初めてのハマス政治幹部となる。
最近はレバノンとカタールに滞在していたという。米国は昨年、アルーリ氏に関する情報提供に500万ドルの報酬を支払うと表明していた。
イスラエルは自国民に対する攻撃を巡りアルーリ氏を長年非難してきたが、あるハマス関係者によると、同氏はガザでの戦闘やハマスが拘束している人質の解放などを巡るカタールとエジプトによる交渉でも中心的な役割を果たしていた。
<ハマス指導者「テロ行為」と非難>
ハマスは傘下のアル・アクサ・ラジオを通して、アルーリ氏が殺害されたと確認。アル・アクサ・ラジオはまた、対話アプリ「テレグラム」への投稿で、カッサム旅団の幹部2人も同攻撃で殺害されたと明らかにした。
ハマスの指導者ハニヤ氏はテレビ放映された演説で、イスラエルによるベイルートでの攻撃でアルーリ氏が殺害されたことは「テロ行為」に当たるとし、レバノンの主権を侵害し、パレスチナ人に対するイスラエルの敵意を拡大するものだと非難。ヒズボラも、今回の攻撃は「レバノンに対する深刻な攻撃」で、「敵対勢力と『抵抗の枢軸』との戦争における危険な進展」だとテレグラムに投稿した。
レバノンの国営メディアは、ダヒエにあるハマスの関連施設が2日夜にイスラエルのドローンによる攻撃を受け、6人が死亡したと報道。レバノンのミカティ首相はこの攻撃について、レバノンを戦争に引きずり込もうとするものとし、「イスラエルの新たな犯罪」と非難した。
レバノンは、首都ベイルート南部郊外への攻撃のほか、イスラエルによる全ての「レバノンの主権侵害」に対し、国連安全保障理事会に訴えるとする声明を発表した。
ハマスやヒズボラを支援するイランの外務省報道官は「パレスチナだけでなく、この地域、そして自由を求める世界中の全ての人々の間で、シオニスト占領者と戦う動機に再び火をつけることは間違いない」と述べた。
こうした中、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のラマラでは数百人が街頭に出て報復を訴えた。
<イスラエル軍、いかなる事態にも高度に準備>
イスラエル軍のハガリ報道官は、アルーリ氏の殺害を受け発生する可能性のあるいかなる事態に対してもイスラエル軍は高度な準備態勢にあると表明。イスラエル軍はハマス打倒に集中していると述べた。
アルーリ氏殺害に先立ち、ハマスの指導者ハニヤ氏はエジプトとカタールによる停戦案に対する回答を提示したと明らかにし、ハマス側の条件はさらなる人質解放と引き換えにイスラエルが攻撃を「完全に停止」することだと述べていた。