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カドカワ Research Memo(5):2019年3月期は業績のV字回復を見込む

発行済 2018-06-06 15:14
更新済 2018-06-06 15:20
カドカワ Research Memo(5):2019年3月期は業績のV字回復を見込む
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■今後の見通し

1. 2019年3月期の業績見通し
カドカワ (T:9468)の2019年3月期の連結業績は、売上高が前期比11.7%増の231,000百万円、営業利益が同154.4%増の8,000百万円、経常利益が同144.8%増の9,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同420.1%増の5,400百万円と急回復を見込んでいる。
サービスの開始時期が遅れていた「niconico(く)」「nicocas」を2018年の夏休み前までにサービスインし、有料会員数の減少傾向に歯止めをかけるほか、新たにオリジナルゲーム、niconicoと連携したゲームとniconico配信者への「投げ銭」サービスを投入し、都度課金収益を伸ばすことでポータル事業やゲーム事業の収益拡大を見込んでいることが主因となっている。


このため、当第1四半期については業績面で低空飛行が続く見通しだが、第2四半期の後半からはポータル事業やゲーム事業の拡大によって業績回復も鮮明化してくるものと予想される。
逆に、「niconico(く)」や「nicocas」を投入しても有料会員数が下げ止まらず、また新作ゲームや「投げ銭」による都度課金収益も想定以上に伸びなければ、業績が下振れするリスクも出てくるだけに、その動向が2019年3月期の業績動向を見るうえでの最大の注目ポイントとなる。



Webサービス事業と映像・ゲーム事業で大幅増益を見込む
2. 事業セグメント別見通し
(1) Webサービス事業
Webサービス事業の売上高は前期比19.9%増の34,800百万円、営業利益は1,000百万円(前期は1,067百万円の損失)を見込んでいる。


ポータル事業では、新バージョン「niconico(く)」やスマートフォン向け新サービス「nicocas」を2018年の夏休み前にサービスインする予定となっている。
「nicocas」では世界最先端のストリーミング技術を用いて、動画・生放送・双方向・映像合成を一体化したインターフェースを自社開発によって実現、ユーザー生放送をベースに双方向性と協同性を高める豊富な新機能を搭載していることが特徴となっている。
生放送配信者と視聴者がよりアクティブにコミュニケーションを取ることで、番組を盛り上げることが可能となる。


双方向性機能を用いたniconicoならではのゲームの投入も計画しており、都度課金収益も伸ばしていく。
今回投入する新作ゲームについては、社内で開発を進めてきたもので、ニコニコ生放送と連携するなど同社オリジナルのゲーム内容となっている。
販促活動はniconicoプラットフォームを中心にデジタルプロモーションで展開していく方針のため、販促費も多くは掛からない見通し。
同ゲームがヒットすれば、同社のゲーム事業の収益も拡大することになる。


また、VTuber(バーチャルYouTuber)市場が2017年に本格的に立ち上がり、ユーザークリエイターやネット企業などが相次いで参入するなかで、同市場からの収益機会拡大も進めていく。
具体的には、VTuberの番組の充実を図り、VTuberを支援するクリエイターやファンからの収益(投げ銭)獲得やVTuberのマネジメントによる収益獲得を進めていく。


こうした取り組みにより、ポータル事業の収益モデルは従来の有料会員からの月額収入をベースとした定額制課金サービスモデルから、ゲームや投げ銭等による都度課金収入と月額課金収入で二分するハイブリッド型モデルへの転換を目指すことになり、売上高の伸びとしては前期比51%増収を見込んでいる。


なお、「ニコニコ動画」の新バージョンである「niconico(く)」は従来不十分であったスマートフォンユーザーに向けた利便性並びに機能向上を図ることで、10代を中心としたユーザー層を拡大し、「新たな遊び場の提供によるIP創出機会とマネタイズの充実」を図ることで有料会員数(プレミア会員)の再成長を目指していく考えだ。
有料会員数については「niconico(く)」投入前の2018年6月頃を底(190万人程度)として、その後は緩やかに回復し、2019年3月時点で201万人までの回復を想定している。
このため、月額課金収入に関しては2019年3月期も1割減収を見込んでいることになる。


また、niconicoではユーザー離れの一因として、システムインフラの老朽化によるサービス品質の相対的な低下にあると考えており、2015年度以降、配信システムの再構築に取り組んできた。
現状、こうしたシステム改善にめどが立ち、新バージョンのサービス開始以降は高画質のストリーミング配信を低コストで実現できる見通しだ。
具体的な施策として、高画質配信を可能とするため、動画・生放送のトランスコードをソフトウェアから専用ハードウェアに切り替えを進めており、2018年6月末にも完了する予定となっている。
専用ハードウェア化することですべての生放送番組をHD画質(720p)で配信可能となるほか、4K配信も可能となる。
また、今後の通信トラフィック量の増加に対応するため、ネットワーク帯域も従来の730Gbpsから1,400Gbpsと2倍弱に拡大する。
これら施策によってインフラコストが増加する懸念があるが、同社ではインフラの仮想化を進めることでトータルコストの削減が可能で、障害発生率も低減すると見ている。
インフラコストに関しては2018年3月期の50億円から、2019年3月期は42億円、2020年3月期は33億円まで低下する見込みとなっており、ポータル事業の収益性向上に寄与することになる。


その他、ライブ事業についてはイベント開催を積極的に進めていく予定にしており、前期よりも赤字幅は若干拡大する可能性がある。
また、モバイル事業は音楽配信サービスの会員数減少に伴い減収減益が続くが、コストコントロールにより高い収益性は維持する見通しだ。


(2) 出版事業
出版事業の売上高は前期比6.0%増の119,400百万円、営業利益は同6.7%増の6,400百万円となる見通し。
電子書籍・電子雑誌事業については、自社配信プラットフォーム「BOOK☆WALKER」によるグループ作品の先行販売や各種特典等の独自の付加価値戦略を展開し収益を伸ばしていく戦略のほか、外部サイトへのコンテンツ配信やdマガジン等の他のプラットフォームとの連携も強化していくことで2ケタ成長を継続していく。
また、2018年4月1日付でドワンゴの電子書籍事業を(株)ブックウォーカーに集約しており、プロモーションから販売まで一気通貫したサービスを構築したことにより、同事業の効率化と売上げの最大化が期待される。


書籍事業については、紙の出版市場が縮小するなかで、「カクヨム」等のネット上での原作発掘を強化するなど、強力なIPの創出に注力していくことで増収を目指していくほか、利益面でもクラウドでのコンテンツデータ管理による制作部門の効率化や、AIを活用した営業部門の効率化(重版決定の精度向上や返品率の低減)を進めることで、収益の最大化を目指していく。


なお、2020年4月からの本格稼働を予定している製造・物流一体の最新鋭システムについては、2018年4月より小ロット受注製造が可能な「Print On Demand」の製造ラインを稼働させており、文庫本(ソフトカバー)の商用生産をスタートしている。
原版はクラウド管理しており、オンラインでつながっている倉庫に在庫があれば高速で荷合わせして出荷する体制を整備している。
従来、出版業界のサプライチェーンでは書店が商品を発注してから受け取るまで7~10日かかっていたが、今回の新システムでは24~48時間と大幅な納期短縮を実現している。
受発注システムから生産、在庫管理まで全ての機能をIoTで一元化し、適時適量の生産・配送によって返品率の低下が実現可能となる。
同社では現在30%台前半の返品率が将来的に20%台前半まで低減できると見ており、同業他社へのソリューションサービス(受託製造)拡大の可能性も考えれば、2020年以降は所沢新工場の本格稼働によって、書籍事業の収益拡大が期待される。


(3) 映像・ゲーム事業
映像・ゲーム事業の売上高は前期比18.7%増の56,300百万円、営業利益は同143.6%増の7,000百万円となる見通し。
映像事業については、映画やアニメを中心にメディアミックス戦略を推進するとともに、海外市場におけるライセンス販売を強化していくことで増収を目指していく。
また、アニメ市場の拡大に対応するため、制作スタジオ(株)ENGIを子会社化しており、制作機能の強化も図っている。


ゲーム事業についてはWebサービスにおけるオリジナルゲームの投入効果に加えて、フロム・ソフトウェアから有力大型タイトルの投入が想定されていることもあり、大幅増収増益を見込んでいる。


(4) その他事業
その他事業の売上高は前期比16.2%増の24,200百万円、営業損失は2,200百万円(前期は1,356百万円の損失)を見込んでいる。
教育事業については2016年4月に開校した「N高等学校」(学校法人角川ドワンゴ学園)の生徒数が、2018年4月時点で6,512名(前年同期比2,730名増)と順調に拡大している。
同社の連結業績には、同学校に提供しているオリジナル学習システムや学習アプリ「N予備校」の利用料等が計上されることになる。
損益分岐点は生徒数で7,000~8,000人の水準とみられ、早ければ2020年3月期にも黒字化する可能性がある。


また、新規事業として取り組んでいるインバウンド事業では、KADOKAWAコンテンツを活用したイベント事業やグッズ販売等のビジネス機会の創出、情報誌やWeb等による日本情報の発信により、収益の拡大を目指している。
また、高速バス会社のWILLER(株)と提携し、インバウンド顧客を中心にエンタテインメント性の高い旅行体験サービスの商品化にも取り組んでいる。
ただ、現在は先行投資段階であり、収益化は2021年3月期以降になると見ている。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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