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ワコム Research Memo(4):2018年3月期は新製品の寄与とパーツ供給の回復で利益のV字回復を達成

発行済 2018-06-12 15:04
更新済 2018-06-12 15:20
ワコム Research Memo(4):2018年3月期は新製品の寄与とパーツ供給の回復で利益のV字回復を達成
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■業績の動向

1. 2018年3月期決算の概要
ワコム (T:6727)の2018年3月期は、売上高82,262百万円(前期比15.4%増)、営業利益3,526百万円(前期は1,171百万円の損失)、経常利益3,584百万円(同870百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益2,361百万円(同5,534百万円の損失)と、大幅増収・黒字転換となった。


同社は2017年11月1日に通期の業績見通しの修正を発表したが、最終的に、その修正予想を売上高で約2%、営業利益で約20%、それぞれ上回って着地した。


V字回復となった2018年3月期決算は、一見すると良い決算に見えるが、必ずしも100点満点とは言えない。
後述するように、同社が復活を期待していたブランド製品事業の収益が予想に対して未達となったことがその理由だ。
同社自身もこの点は2019年3月期以降の成長モメンタム回復に向けた重要課題と認識しているとみられる。


2018年3月期は上半期(第2四半期累計期間)において利益が黒字転換し、いわゆるV字回復を果たした。
下半期は上半期の横ばいの計画でスタートしたが、結果的には下半期は予想を上回って推移し、通期ベースでも計画比上振れでの着地となった。
ただし、事業別セグメントでは明暗が分かれ、ブランド事業が売上高、利益ともに下半期の計画に未達となったのを、テクノロジーソリューション事業の受注の前倒し獲得で吸収した。


ブランド製品事業は、今期は新製品が出そろった状態でスタートした。
同社はペンタブレットやデジタルペンの市場において、ブランド力や製品・技術の競争優位性を堅持している。
2017年3月期は新製品のリリースの遅れが買い控えなどを生み、業績悪化につながったが、今期はそうした動きは払拭され、セグメント売上高は前期比9.8%の増収となった。


テクノロジーソリューション事業は、タブレット・ノートPC向けが同社のデジタルペン採用モデルが増加したことで売上高が大きく伸長した。
スマートフォン向けはサムスン電子のGalaxy Note8向けの量産出荷が順調に推移したが他のNoteシリーズ向けが減少し、ネットでは減収となった。
結果的に、タブレット・PC向けの伸びがけん引する形で、セグメント売上高は前期比25.8%の増収となった。


利益面のポイントは、為替影響と販管費の2つだ。


2017年3月期において減益要因となった為替レートは、今期はドルが110.81円/ドル、ユーロが129.45円/ユーロとなり、2017年3月期に比べそれぞれ1.6%(1.78円)、8.4%(10.08円)円安となった。
前述のように対ドルでは利益面では円安デメリットであるため、円安進行で0.8億円の減益要因となったが、ユーロに対しては円安メリットによって5.5億円の増益要因となった。
アジア通貨に対しても円安メリットで3.1億円の増益要因となり、為替影響による増益要因は7.8億円となった。


販管費は28,233百万円と前期の28,736百万円から1.8%(503百万円)減少した。
人件費は増加したものの、販促・広告宣伝費、外注費、減価償却費などが減少した。
その他の増加の大半は北米の販売代理店が倒産したことに伴う貸倒損失引当金で、それを除くと微増であった。


販管費に対する為替影響額(対ドル、対ユーロで円安となったことによる増加額)は約7.6億円であった。
この為替影響額と上記の貸倒引当金を合わせると約10億円となるため、当期は実質的に、前期対比で約15億円の販管費削減を達成したことになる。


(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)

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