■カルナバイオサイエンス (T:4572)の業績動向2. 財務状況と経営指標2018年12月期末の財務状況を見ると、総資産は前期末比420百万円減少の1,770百万円となった。
流動資産で現金及び預金が500百万円減少したことが主因となっている。
固定資産では投資その他の資産が44百万円増加した。
負債合計は前期末比70百万円増加の882百万円となった。
主に有利子負債が62百万円増加した。
また、純資産合計は前期末比490百万円減少の887百万円となった。
新株予約権の行使による株式発行等により、資本金及び資本剰余金が合わせて730百万円増加した一方で、親会社株主に帰属する当期純損失1,210百万円の計上による利益剰余金の減少が要因となっている。
経営指標を見ると、安全性を示す自己資本比率は前期の62.2%から49.7%に低下し、有利子負債依存度は28.5%から38.8%に上昇した。
研究開発費等の事業費用の増加に伴い現金及び預金が減少したことが主因となっている。
同社では今後もBTK阻害薬の臨床試験に向けた開発費用の増加を見込んでおり、そのための資金調達として第三者割当てによる新株予約権を発行している。
第16回、17回の未行使分は2019年1月末時点で59万株相当残っており、仮にすべて下限行使価額である1,022円で行使されたとすると、6億円強の調達が可能であり、2018年12月期末の現金及び預金と合わせると約20億円となる。
一方で、2019年12月期の親会社株主に帰属する当期純損失見込みが1,693百万円となっているため、今後、新たな資金調達を進めていく可能性がある点には留意する必要がある。
2019年12月期はシエラからのマイルストーン収入を見込むほか、米国での臨床試験開始に向けた体制構築を進める3. 2019年12月期業績の会社計画2019年12月期の連結業績は、売上高で前期比64.3%増の1,240百万円、営業損失で1,658百万円(前期は1,144百万円の損失)、経常損失で1,671百万円(同1,159百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純損失で1,693百万円(同1,210百万円の損失)を見込んでいる。
売上高の内訳を見ると、創薬事業はシエラからの臨床第1相試験開始に伴うマイルストーン収入で440百万円、また、創薬支援事業は海外向けの好調持続で前期比13.5%増の800百万円を見込んでいる。
シエラからのマイルストーンに関しては2019年中に入るものと予想される。
為替の前提は110円/米ドルとしている。
営業利益に関しては創薬事業で1,802百万円の損失(前期は1,261百万円の損失)を見込んでいる。
BTK阻害薬の前臨床試験及び臨床試験費用が増加することが主因だ。
一方、創薬支援事業の営業利益は増収効果で前期比22.9%増の144百万円と4期ぶりの増益に転じる見通しとなっている。
研究開発費については全社で同76.3%増の2,011百万円を計画している。
(1) 創薬事業の施策創薬事業では米国サウスサンフランシスコに臨床開発を目的としたオフィスを2019年2月に開設し、2名を常駐させて2020年以降の臨床試験開始に向けた準備を進めている。
1名は製薬企業で臨床開発部門の部長経験者を採用し、もう1名はC-LABで研究に従事していた人材を配置した。
今後は米国が臨床開発拠点の中心となって、新薬の開発を推進していく体制を構築していくことになる。
(2) 創薬支援事業の施策創薬支援事業の取り組みとしては、北米での更なる売上拡大と新規セルベースアッセイサービス(NanoBRETTM)を軌道に乗せること、また、欧州での販売拡大に向けて南欧地域で代理店を構築することを掲げており、売上高の8億円達成を目指す。
地域別の売上見通しは、国内向けが前期比32百万円増の320百万円、北米向けが同51百万円増の300百万円、欧州向けが同6百万円増の100百万円、その他地域向けが同9百万円増の80百万円となっている。
国内については小野薬品工業向けの売上減少をカバーするため、その他顧客向けで増やしていく方針となっている。
また、その他地域向けに関しては中国が前期比2倍増の勢いで伸びており、100百万円に達する可能性もある。
拡販施策として最終顧客向けにWebセミナーもスタートし、製品・サービスの詳細な内容を中国語で説明しながら受注獲得につなげている。
また、主要製品別の売上計画では、キナーゼタンパク質の販売が前期比36百万円増の351百万円、プロファイリング・スクリーニングが同21百万円増の248百万円、アッセイ開発が同5百万円増の32百万円、セルベースアッセイ関連・他が同33百万円増の169百万円とそれぞれ増収を見込んでいる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)