■要約アエリア (T:3758)はITサービス事業、コンテンツ事業、アセットマネージメント事業の3事業を展開している。
ITサービス事業ではデータサービス、コンテンツ事業ではスマートフォン向けゲームの開発、アセットマネージメント事業では宿泊施設の企画・運営などを行っている。
これまでITサービス事業の安定収益を基盤にM&Aを駆使し、コンテンツ事業やアセットマネージメント事業を拡大してきた。
そうしたなか、「A3!(エースリー)」のヒットと「イケメンシリーズ」を擁する(株)サイバードの買収をきっかけに、コンテンツ事業で新たな展開が始まった。
単純な課金収益から、キャラクターを使ったグッズ販売や舞台化などIP(Intellectual Property Rights:知的財産)ビジネスが収益源として育ってきたのである。
同社はIPビジネスに経営資源を集中するため、選択と集中による事業の再編を推進している。
今まさに、IPビジネスで成長に弾みを付けようとしているところである。
同時に従来どおり、新たな技術や成長マーケットなど新規領域の取り込みにも余念がない。
コンテンツ事業では、AIやVR/AR、ブロックチェーンなど新たな技術を応用したコンテンツを開発している。
(株)データグリッドと共同開発したAIによるキャラクター顔画像自動生成では、リアルのアイドルと見紛うほど精巧なキャラクターの顔画像を創造している。
2017年に参入したアセットマネージメント事業では、成長する訪日外国人観光客向けの宿泊需要を取り込むため民泊を開始した。
自社IPとコラボレートした民泊の実験も好スタートを切っている。
2018年12月期の業績は、売上高31,471百万円(前期比98.3%増)、営業利益1,876百万円(同30.3%減)となった。
「A3!」の売上げが好調に推移したこと、サイバードなど連結子会社が増加したことなどが増収要因である。
一方、M&Aにより連結子会社の開発費が増加、コンテンツ事業における売上増に伴う回収代行手数料や広告宣伝費の拡大により販管費も増加した。
自社IPのポテンシャルが非常に高いとの思いに至ったことから、期中に広告宣伝を強化して後発メーカーを引き離しにかかったようだ。
もちろんゲーム内容の秀逸さもあって「A3!」は高い評価と持続的な人気を勝ち得、今後の同社IP戦略にとって大きなターニングポイントになったと思われる。
同社は2019年12月期業績を、売上高32,000百万円(前期比1.7%増)、営業利益2,200百万円(同17.3%増)と見込んでいる。
ITサービス事業は引き続き安定成長が見込まれる。
コンテンツ事業は、既存タイトルとIPの拡充や採算改善に注力する一方、サイバードの収益が通年寄与するため、連結業績をけん引することになりそうだ。
アセットマネージメント事業は、スタートアップから民泊サービス拡充へとステージが進むなか、業績的に一旦落ち着きを見せると考える。
各事業のアクセルを同社が踏み込み始めているように感じるが、それにもかかわらず業績予想がやや保守的に見えるのは、業績を下方修正したくないという同社の強い意志の表れだと考える。
■Key Points・「A3!」のヒット、サイバードの買収によりIPビジネスが開花・事業再編で収益改善、IPビジネスへのフォーカスで成長に弾み・AI技術や訪日外国人向け民泊需要など新規領域の取り込みも着々(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)